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特別な人
特別な人 第60話
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「それでも、本当にありがとうっ!」
「いや、礼を言われる事じゃないし。……それより、藤原。お前は反省しろ。学生の本分は学業だ。貞操観念が緩いのも大概にしとけ」
一部始終を見てたわけじゃないけど、どうせお前の日頃の行いのツケなんだろ?
呆れたように息を吐く瑛大は「次は放っておくからな」って慶史の頭に手を乗せた。言葉は厳しいけど、それがきっと慶史を心配してるからこそのモノだと教えてくれるのは、表情。いつもみたいな嫌悪感はなくて、まるで僕達の関係が昔に戻ったような錯覚に陥らせてくれた。
「藤原、返事」
「わ、るかったよ……、迷惑かけて……」
普段の慶史なら『触るな』とか言って瑛大の手を振り払ってただろうに、今は大人しく謝ってみせて、やっぱり慶史も本当は嫌だったんだって分かった。
分かって、僕は本当に良かったってちょっぴり泣きそうになってしまう。
「……で、何だ? 俺に何か用か?」
「ふざけんなっ! 人の楽しみの邪魔してタダで済むと思うなよ!?」
危険は去ったと思いたかったけど、そう簡単には行かないみたいだ。
瑛大の気迫に圧されていた軽音部の人たちは周囲の目を気にしてか、自分達に恥をかかせた瑛大の胸倉を掴んで凄んできた。
今にも殴りかかってきそうなその雰囲気に周りはざわめきを隠せない。そして、僕も。
でも、そんな周りを他所に全然動じてない瑛大は「親の仕事を継ぐ気があるなら義務教育位受けろよ」って見下した目をして軽音部の人たちを煽る。上が無能だとお前の代で潰れるんだぞ。って。
「てめぇには関係ねぇだろうがっ!」
「俺は事実を述べたまでだけど? ああ、でもいくら跡取りでも無能な奴には会社を任せたりしないから無用の心配か」
図星を指されて怒ってるのか?
そう鼻で笑う瑛大の言葉と態度に、軽音部の人たちが激高する。両手をわなわなと震わせる表情は鬼のようだった。
このままだと殴り合いの喧嘩になることは必至。本気で怒ってる相手とそんな喧嘩をしたら流血沙汰になることは避けられないだろうし、そうなったら学校も黙ってはいられない。最悪の場合は全員退学、良くても停学処分になるかもしれない。
僕はそこまで考えを巡らせて、顔から血の気が引くのを感じた。僕と慶史を助けてくれただけの瑛大にそんな迷惑をかけられない! って。
だから、考えるより先に身体が動いてしまった。
「み、みんな、落ち着いてっ……!」
そう言いながら僕が瑛大の胸倉を掴む軽音部の人の腕に触れた時だった、一触即発だった睨み合いが終わったのは。
次の瞬間、僕を襲うのは激しい痛み。
「葵っ!!」
慶史の声が耳に届くとほぼ同時に、僕は廊下に倒れこんでしまった。
「葵っ! 葵、大丈夫!?」
「ばっ、藤原、急に動かすな! 脳震盪起こしてるかもしれないだろうが!」
僕の身体を揺さぶる慶史と、それを止める瑛大の声。
衝撃に頭がぐらぐら揺れてて、目を開けても眩暈がして立ち上がれない。倒れたままの僕は二人に心配をかけたくなくて『大丈夫』って言葉を返そうと思ったけど、口に広がる血の味と喋ろうと筋肉を動かしただけでズキズキと痛む頬にうめき声しか返せなかった。
「! っ―――、お前ら、許さないぞっ!」
「馬鹿っ! 瑛大止めろ!! 葵を保健室に連れてくのが先だろうがっ!!」
遠くに聞こえる慶史と瑛大の言い合い。その後ろでは「俺は殴る気はなかったんだっ!」って狼狽えた声。僕が不用意に触ってしまったからびっくりして手が出ただけだ。って。
それに瑛大は「どうでもいい!」って大声で切り捨てるし、いつもの冷静さは何処に行ったんだって聞きたくなる。
慶史の「瑛大! 俺じゃお前の事止められないからマジでやめろ!」って怒鳴り声も聞こえて、早く起き上がらなくちゃって僕は焦る。
焦って、声を絞り出して無理に身体を起こす僕。そしたら、今度僕を襲うのは激しい眩暈と吐き気。
(ダメっ……、我慢できないっ……)
頑張って我慢して一瞬引っ込んでた吐き気だけど、今度は堪えきれない。僕はトイレに駆け込むこともできず、そのまま廊下に嘔吐してしまった……。
「葵っ!? 大丈夫っ?!」
「ご、めっ、……け、し……」
意思に反して滲む涙。すぐに背中を擦ってくれる慶史に僕は声を切れ切れに謝った。
「謝らなくていいから、な? 瑛大! 葵運ぶの手伝え!!」
「! わ、分かったっ!」
慶史の怒鳴り声の後、僕は誰かに抱き上げられる。頭上から聞こえる「ちょっと我慢してくれ」って言う声に、瑛大って力持ちだなって不謹慎ながらも思った。確かに僕は軽いけど、でも同じ年の男一人こんな軽々と抱き上げるれるなんて相当鍛えてないと無理だろうから。
(虎君にトレーニングの方法とかも教えてもらってるのかな……?)
吐くだけ吐いてちょっとすっきりしたし、気持ちも落ち着いた僕は瑛大に保健室へと運ばれながらもぼんやりと考える。このことは虎君達には秘密にした方がいいよね? って。
「いや、礼を言われる事じゃないし。……それより、藤原。お前は反省しろ。学生の本分は学業だ。貞操観念が緩いのも大概にしとけ」
一部始終を見てたわけじゃないけど、どうせお前の日頃の行いのツケなんだろ?
呆れたように息を吐く瑛大は「次は放っておくからな」って慶史の頭に手を乗せた。言葉は厳しいけど、それがきっと慶史を心配してるからこそのモノだと教えてくれるのは、表情。いつもみたいな嫌悪感はなくて、まるで僕達の関係が昔に戻ったような錯覚に陥らせてくれた。
「藤原、返事」
「わ、るかったよ……、迷惑かけて……」
普段の慶史なら『触るな』とか言って瑛大の手を振り払ってただろうに、今は大人しく謝ってみせて、やっぱり慶史も本当は嫌だったんだって分かった。
分かって、僕は本当に良かったってちょっぴり泣きそうになってしまう。
「……で、何だ? 俺に何か用か?」
「ふざけんなっ! 人の楽しみの邪魔してタダで済むと思うなよ!?」
危険は去ったと思いたかったけど、そう簡単には行かないみたいだ。
瑛大の気迫に圧されていた軽音部の人たちは周囲の目を気にしてか、自分達に恥をかかせた瑛大の胸倉を掴んで凄んできた。
今にも殴りかかってきそうなその雰囲気に周りはざわめきを隠せない。そして、僕も。
でも、そんな周りを他所に全然動じてない瑛大は「親の仕事を継ぐ気があるなら義務教育位受けろよ」って見下した目をして軽音部の人たちを煽る。上が無能だとお前の代で潰れるんだぞ。って。
「てめぇには関係ねぇだろうがっ!」
「俺は事実を述べたまでだけど? ああ、でもいくら跡取りでも無能な奴には会社を任せたりしないから無用の心配か」
図星を指されて怒ってるのか?
そう鼻で笑う瑛大の言葉と態度に、軽音部の人たちが激高する。両手をわなわなと震わせる表情は鬼のようだった。
このままだと殴り合いの喧嘩になることは必至。本気で怒ってる相手とそんな喧嘩をしたら流血沙汰になることは避けられないだろうし、そうなったら学校も黙ってはいられない。最悪の場合は全員退学、良くても停学処分になるかもしれない。
僕はそこまで考えを巡らせて、顔から血の気が引くのを感じた。僕と慶史を助けてくれただけの瑛大にそんな迷惑をかけられない! って。
だから、考えるより先に身体が動いてしまった。
「み、みんな、落ち着いてっ……!」
そう言いながら僕が瑛大の胸倉を掴む軽音部の人の腕に触れた時だった、一触即発だった睨み合いが終わったのは。
次の瞬間、僕を襲うのは激しい痛み。
「葵っ!!」
慶史の声が耳に届くとほぼ同時に、僕は廊下に倒れこんでしまった。
「葵っ! 葵、大丈夫!?」
「ばっ、藤原、急に動かすな! 脳震盪起こしてるかもしれないだろうが!」
僕の身体を揺さぶる慶史と、それを止める瑛大の声。
衝撃に頭がぐらぐら揺れてて、目を開けても眩暈がして立ち上がれない。倒れたままの僕は二人に心配をかけたくなくて『大丈夫』って言葉を返そうと思ったけど、口に広がる血の味と喋ろうと筋肉を動かしただけでズキズキと痛む頬にうめき声しか返せなかった。
「! っ―――、お前ら、許さないぞっ!」
「馬鹿っ! 瑛大止めろ!! 葵を保健室に連れてくのが先だろうがっ!!」
遠くに聞こえる慶史と瑛大の言い合い。その後ろでは「俺は殴る気はなかったんだっ!」って狼狽えた声。僕が不用意に触ってしまったからびっくりして手が出ただけだ。って。
それに瑛大は「どうでもいい!」って大声で切り捨てるし、いつもの冷静さは何処に行ったんだって聞きたくなる。
慶史の「瑛大! 俺じゃお前の事止められないからマジでやめろ!」って怒鳴り声も聞こえて、早く起き上がらなくちゃって僕は焦る。
焦って、声を絞り出して無理に身体を起こす僕。そしたら、今度僕を襲うのは激しい眩暈と吐き気。
(ダメっ……、我慢できないっ……)
頑張って我慢して一瞬引っ込んでた吐き気だけど、今度は堪えきれない。僕はトイレに駆け込むこともできず、そのまま廊下に嘔吐してしまった……。
「葵っ!? 大丈夫っ?!」
「ご、めっ、……け、し……」
意思に反して滲む涙。すぐに背中を擦ってくれる慶史に僕は声を切れ切れに謝った。
「謝らなくていいから、な? 瑛大! 葵運ぶの手伝え!!」
「! わ、分かったっ!」
慶史の怒鳴り声の後、僕は誰かに抱き上げられる。頭上から聞こえる「ちょっと我慢してくれ」って言う声に、瑛大って力持ちだなって不謹慎ながらも思った。確かに僕は軽いけど、でも同じ年の男一人こんな軽々と抱き上げるれるなんて相当鍛えてないと無理だろうから。
(虎君にトレーニングの方法とかも教えてもらってるのかな……?)
吐くだけ吐いてちょっとすっきりしたし、気持ちも落ち着いた僕は瑛大に保健室へと運ばれながらもぼんやりと考える。このことは虎君達には秘密にした方がいいよね? って。
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