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恋しい人
恋しい人 第111話
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「虎にも姉貴にもそういう気が無いって分かっててもやっぱ面白くねぇーよな? 俺も凪が葵と楽しそうに喋ってると正直イラつくし」
すっかりいつも通りの茂斗は僕の肩を肘置きにして僕の心を見透かしてくる。やっぱ双子だな。と。
「嘘。僕に嫉妬してるの?」
「当たり前だろうが」
「なんで? 僕が好きなのは虎君だって茂斗知ってるでしょ?」
「んなこと葵が自覚する前から知ってる」
目を瞬かす僕に、初等部に上がる前からお前は虎に惚れてたと思うぞって言い切る茂斗は悪戯に笑ってる。そのからかいを含む笑い方にムッとしてしまうのは仕方ない。
(確かに自覚する前から虎君のこと好きだったと思うけど、流石に初等部入学前からとか言い過ぎだと思う)
あの頃の僕は『好き』って感情に違いがあるなんて知らなかったんだから。
「葵と凪がどうこうなるなんて絶対ありえないって頭では理解してるんだけど、それでも腹は立つんだよ。お前もだろ?」
「それは、そうだけど……」
だから姉貴と虎を見て不機嫌になってるんだろ? って、暴露しないでよ。心が狭いとか嫉妬深いとか呆れられちゃうでしょ。
茂斗ってば、明日凪ちゃんに逢えるからって浮かれすぎだ。
呆れる僕に「分かる分かる」って乱暴に頭を撫でまわしてくる茂斗の絡み方は本当に鬱陶しい。
「ちょ、止め―――」
「! ちょ、いてぇ! いてぇって! 腕折れる!」
本当に鬱陶しい! って僕が怒ろうとしたその時、突然右に感じていた茂斗の重みも髪を乱す手の動きも消えて無くなった。
驚く僕の目の前には顔は笑顔だけど物凄く威圧感を感じる虎君の姿が。そして虎君の手は茂斗の手を捻りあげていて、茂斗は「手加減! 手加減忘れてるっ!」と虎君の腕を自由がきく手で叩いていた。
「俺も伝えたよな? お前に嫉妬するって。いい加減その距離感、直してくれないか?」
「ちょっとからかっただけだろっ! んなマジになんなよ!」
痛いと叫ぶ茂斗の腕をなおも締め上げる虎君の目は全く笑っていなかった。
僕が呆然としていたらいつの間にか後ろ立っていた姉さんは僕を背中から抱きしめると、「あの目、人殺しの目だと思わない?」なんて言葉を投げかけてくる。
「桔梗、お前も同じ目に遭いたいのか?」
「忘れてた。虎には背中にも目があったわね」
虎君は背を向けたまま姉さんにその手を放せと圧をかける。絶対僕達の姿なんて見えていないだろうに。
僕を抱きしめていた姉さんは虎君の威嚇に僕から身を放すと、茂斗を解放するように訴える。葵の大事な兄弟を苛めないでくれる? と。
「別に苛めてない」
「はいはい。……まったく。パパも笑ってないでちょっとは注意してよ。虎の独占欲、放っておくと葵が苦労するんだから」
「そうだな。愛してる人を独占したい気持ちは分かるが、相手の同意なく独占欲を振りかざすのは暴力と同じだから注意しないとな」
父さんは僕を見て、少しでも息苦しさを感じるのならちゃんと相談するよう言ってくる。
すると虎君は少し慌てたように気を付けますと項垂れてしまった。
「葵が嫌がることは絶対にしません。だから……」
「分かってるよ。虎は葵のためなら自分の感情なんて後回しにするもんな」
楽し気に笑ってる父さんは、想いが届いてよかったなって虎君に優しい言葉をかけてくれる。けどその後すぐに「でも」っと笑顔のまま言葉を続けた。
「葵を泣かせたら容赦しないからな?」
「! 分かってます」
「分かってるならそれでいい。……葵も、あまり虎を困らせないようにな?」
「う、うん。気を付ける……」
虎は葵が望めばどんな我儘でも叶えようとするから、それを理解して行動しなさい。
そう諭す父さんに僕は頷き、虎君のもとに歩み寄るとその手を握って寄り添った。
姉さんに怒られるかもしれないとか、茂斗がいちゃつくなってムッとするかもしれないとか、色々思ったけど、虎君の傍にいたい想いが止められなかった……。
「俺の独占欲に息苦しさを感じたらすぐに言って欲しい……」
「息苦しさなんて、感じたことない」
「葵……。それでも、もし感じたら、な?」
「分かった……」
優しい虎君。僕を想い、髪にキスしてくれる大好きな虎君。
僕は堪らず抱き着いてしまう。
「お前らは本当、親兄弟の前でも遠慮なくいちゃつくよな」
「本当。普通は気まずいとか恥ずかしいとか思うものなのに」
茂斗と姉さんの前だろうと、父さんの前だろうと、大好きな人から離れたくない。
そんな僕達に茂斗も姉さんも呆れた声をかけてくるんだけど、でもその声は『愛し合っているからしかたない』と言っているようにも聞こえた。
すっかりいつも通りの茂斗は僕の肩を肘置きにして僕の心を見透かしてくる。やっぱ双子だな。と。
「嘘。僕に嫉妬してるの?」
「当たり前だろうが」
「なんで? 僕が好きなのは虎君だって茂斗知ってるでしょ?」
「んなこと葵が自覚する前から知ってる」
目を瞬かす僕に、初等部に上がる前からお前は虎に惚れてたと思うぞって言い切る茂斗は悪戯に笑ってる。そのからかいを含む笑い方にムッとしてしまうのは仕方ない。
(確かに自覚する前から虎君のこと好きだったと思うけど、流石に初等部入学前からとか言い過ぎだと思う)
あの頃の僕は『好き』って感情に違いがあるなんて知らなかったんだから。
「葵と凪がどうこうなるなんて絶対ありえないって頭では理解してるんだけど、それでも腹は立つんだよ。お前もだろ?」
「それは、そうだけど……」
だから姉貴と虎を見て不機嫌になってるんだろ? って、暴露しないでよ。心が狭いとか嫉妬深いとか呆れられちゃうでしょ。
茂斗ってば、明日凪ちゃんに逢えるからって浮かれすぎだ。
呆れる僕に「分かる分かる」って乱暴に頭を撫でまわしてくる茂斗の絡み方は本当に鬱陶しい。
「ちょ、止め―――」
「! ちょ、いてぇ! いてぇって! 腕折れる!」
本当に鬱陶しい! って僕が怒ろうとしたその時、突然右に感じていた茂斗の重みも髪を乱す手の動きも消えて無くなった。
驚く僕の目の前には顔は笑顔だけど物凄く威圧感を感じる虎君の姿が。そして虎君の手は茂斗の手を捻りあげていて、茂斗は「手加減! 手加減忘れてるっ!」と虎君の腕を自由がきく手で叩いていた。
「俺も伝えたよな? お前に嫉妬するって。いい加減その距離感、直してくれないか?」
「ちょっとからかっただけだろっ! んなマジになんなよ!」
痛いと叫ぶ茂斗の腕をなおも締め上げる虎君の目は全く笑っていなかった。
僕が呆然としていたらいつの間にか後ろ立っていた姉さんは僕を背中から抱きしめると、「あの目、人殺しの目だと思わない?」なんて言葉を投げかけてくる。
「桔梗、お前も同じ目に遭いたいのか?」
「忘れてた。虎には背中にも目があったわね」
虎君は背を向けたまま姉さんにその手を放せと圧をかける。絶対僕達の姿なんて見えていないだろうに。
僕を抱きしめていた姉さんは虎君の威嚇に僕から身を放すと、茂斗を解放するように訴える。葵の大事な兄弟を苛めないでくれる? と。
「別に苛めてない」
「はいはい。……まったく。パパも笑ってないでちょっとは注意してよ。虎の独占欲、放っておくと葵が苦労するんだから」
「そうだな。愛してる人を独占したい気持ちは分かるが、相手の同意なく独占欲を振りかざすのは暴力と同じだから注意しないとな」
父さんは僕を見て、少しでも息苦しさを感じるのならちゃんと相談するよう言ってくる。
すると虎君は少し慌てたように気を付けますと項垂れてしまった。
「葵が嫌がることは絶対にしません。だから……」
「分かってるよ。虎は葵のためなら自分の感情なんて後回しにするもんな」
楽し気に笑ってる父さんは、想いが届いてよかったなって虎君に優しい言葉をかけてくれる。けどその後すぐに「でも」っと笑顔のまま言葉を続けた。
「葵を泣かせたら容赦しないからな?」
「! 分かってます」
「分かってるならそれでいい。……葵も、あまり虎を困らせないようにな?」
「う、うん。気を付ける……」
虎は葵が望めばどんな我儘でも叶えようとするから、それを理解して行動しなさい。
そう諭す父さんに僕は頷き、虎君のもとに歩み寄るとその手を握って寄り添った。
姉さんに怒られるかもしれないとか、茂斗がいちゃつくなってムッとするかもしれないとか、色々思ったけど、虎君の傍にいたい想いが止められなかった……。
「俺の独占欲に息苦しさを感じたらすぐに言って欲しい……」
「息苦しさなんて、感じたことない」
「葵……。それでも、もし感じたら、な?」
「分かった……」
優しい虎君。僕を想い、髪にキスしてくれる大好きな虎君。
僕は堪らず抱き着いてしまう。
「お前らは本当、親兄弟の前でも遠慮なくいちゃつくよな」
「本当。普通は気まずいとか恥ずかしいとか思うものなのに」
茂斗と姉さんの前だろうと、父さんの前だろうと、大好きな人から離れたくない。
そんな僕達に茂斗も姉さんも呆れた声をかけてくるんだけど、でもその声は『愛し合っているからしかたない』と言っているようにも聞こえた。
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