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恋しい人
恋しい人 第110話
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僕は虎君と姉さんに「知ってた?」と、凪ちゃんのことを尋ねてみた。すると二人は全然知らなかったと呆然としていた。
「? 虎君? 姉さん?」
「ねぇ虎。海音君、知らなかったと思う? 今の話」
「そんなわけないだろうが。……あいつ、だから明日は茂斗に用事があるからここに顔出すって言ってたのか……」
「まさか海音君にこんな隠し事できるとは驚きね……」
頭を抱える虎君に、海音君の隠し事をされて辛いのかな? なんて思った僕だけど、遠い目をした姉さんの言葉に「不覚にもほどがある」って言葉を零した虎君を見て、隠し事をされてショックだったわけではないと理解する。
「あいつ、どの面下げて俺に茂斗のこと聞いてきたんだよ」
「私も今日大学で会ったけど明日のことなんて一言もなかったわ」
ため息交じりの虎君と姉さんは海音君のことを甘く見ていたと何やら反省しているようだ。
海音君にだって秘密の一つや二つあると思う僕だけど、ふと自分に置き換えて考えてみる。もしも隠し事をしたくてもできない悠栖が澄まし顔で僕に隠し事をしていたらどう思うだろう? と。
(あ……。確かに微妙な気持ちになりそうかも……)
ショックはショックなんだけど、隠し事をされたっていうショックというよりも、それ以上に悠栖の隠し事に気づかなかったことにショックを受けそうだ。
(普段隠し事してない友達が隠し事するとは思わないしなぁ)
海音君は僕が見ても開けっ広げな性格をしていると思う。僕よりも海音君を知っている虎君と姉さんからすれば、海音君の隠し事などないものに等しかったはずだ。
姉さんは明日じっくり話を聞かないとと怖い笑顔を浮かべていて、虎君に至っては逆に暫く無視すると顔を顰めている。
「流石に無視は可哀想じゃない? 海音君だって凪ちゃんの頼みだから頑張って黙ってたんだろうし」
「それに俺は関係ないだろうが」
凪ちゃんの約束は自分には無関係だと言い切る虎君。その時、何故か僕は凪ちゃんが虎君を怖がっている理由が分かった気がした。
(虎君はすごく優しいけど、本当、すごく優しいけど―――)
「また出た。あんたって本当、葵が関係しないと知り合いにもとことん冷たい人間よね」
呆れ顔の姉さんは、凪ちゃんは親友の妹で未来の妹になるかもしれないのよ? ってため息交じりの言葉を続ける。
すると虎君は心外だと言わんばかりに顔を顰め、何が冷たいんだと姉さんに突っかかる。
「本当に分からないの? それとも分からないフリをしてるの?」
「何でわざわざ分からないフリをしなくちゃならないんだ」
「なら、人を変えて考えてみなさいよ。いい? 葵があんたへのサプライズを計画していて私はそれに一役買ってる。で、私が海音君に何も言わず虎の欲しいものをリサーチして、それを後から知った海音君が『葵との約束は俺には無関係だろうが』って私に怒ってきたら、虎はなんて言う?」
「そ、それは……」
「海音君に同意できる?」
詰め寄る姉さんと目を逸らす虎君。
虎君がこんなに圧されているところなんて滅多に見れないからちょっぴり驚いてしまう僕。でも、驚きながらも二人の距離にヤキモチを覚えて思わずムッとしてしまった。
(二人が兄妹だってことは分かったけど、それでもこんなに近い距離はやっぱりヤキモチは妬いちゃうよ)
「あんたは絶対、葵の計画を隠すなって言った海音君にブチ切れるでしょ。『葵が望んでいるから』って一方的な理由で」
「……そうだな」
「つまり、今回の海音君も可愛い妹の頼みだから誰にも喋らなかったってことよ」
分かった? って念を押す姉さんに虎君は悔しそうに分かったと頷く。
そんなに海音君の心情を理解しているならどうしてさっき海音君の隠し事に怒っていたのだろうと姉さんの言動に矛盾を覚えながら、僕は虎君と姉さんを引き離すように姉さんの腕を引いて疑問をぶつけてみた。
「そこまで分かってるなら、なんで海音君に怒ってるの?」
「別に私は海音君が隠し事をしたから怒ってるわけじゃないわよ?」
「え? でもさっき―――」
「ああ、あれ? あれはただの八つ当たりね。私を謀るとはいい度胸ね! 的な」
照れ笑いを浮かべる姉さんは可愛い。でも、言葉は全然可愛くない。
「姉さんってば……」
陰で『女帝』と呼ばれている理由が分かったと苦笑が漏れるのは仕方ない。
「まぁそういうことだから、海音君を無視しないこと。いい?」
「分かったよ……」
(虎君、凄く悔しそうな顔をしてる……)
どう頑張っても僕と二人きりの時には見せてくれないその表情にまたヤキモチ妬きな僕が顔を出す。
「おい、姉貴。それ以上は葵に嫌われるぞ」
「え?! なんで!?」
「虎も、姉貴と遊んでないで葵のご機嫌ちゃんととってやれよ」
僕達が聞いていない間に父さんに何を言われたのか、茂斗はさっきまでの憔悴しきった姿とはまるで別人のように活き活きとしてヤキモチを妬いている僕のフォローに颯爽と登場した。
「? 虎君? 姉さん?」
「ねぇ虎。海音君、知らなかったと思う? 今の話」
「そんなわけないだろうが。……あいつ、だから明日は茂斗に用事があるからここに顔出すって言ってたのか……」
「まさか海音君にこんな隠し事できるとは驚きね……」
頭を抱える虎君に、海音君の隠し事をされて辛いのかな? なんて思った僕だけど、遠い目をした姉さんの言葉に「不覚にもほどがある」って言葉を零した虎君を見て、隠し事をされてショックだったわけではないと理解する。
「あいつ、どの面下げて俺に茂斗のこと聞いてきたんだよ」
「私も今日大学で会ったけど明日のことなんて一言もなかったわ」
ため息交じりの虎君と姉さんは海音君のことを甘く見ていたと何やら反省しているようだ。
海音君にだって秘密の一つや二つあると思う僕だけど、ふと自分に置き換えて考えてみる。もしも隠し事をしたくてもできない悠栖が澄まし顔で僕に隠し事をしていたらどう思うだろう? と。
(あ……。確かに微妙な気持ちになりそうかも……)
ショックはショックなんだけど、隠し事をされたっていうショックというよりも、それ以上に悠栖の隠し事に気づかなかったことにショックを受けそうだ。
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海音君は僕が見ても開けっ広げな性格をしていると思う。僕よりも海音君を知っている虎君と姉さんからすれば、海音君の隠し事などないものに等しかったはずだ。
姉さんは明日じっくり話を聞かないとと怖い笑顔を浮かべていて、虎君に至っては逆に暫く無視すると顔を顰めている。
「流石に無視は可哀想じゃない? 海音君だって凪ちゃんの頼みだから頑張って黙ってたんだろうし」
「それに俺は関係ないだろうが」
凪ちゃんの約束は自分には無関係だと言い切る虎君。その時、何故か僕は凪ちゃんが虎君を怖がっている理由が分かった気がした。
(虎君はすごく優しいけど、本当、すごく優しいけど―――)
「また出た。あんたって本当、葵が関係しないと知り合いにもとことん冷たい人間よね」
呆れ顔の姉さんは、凪ちゃんは親友の妹で未来の妹になるかもしれないのよ? ってため息交じりの言葉を続ける。
すると虎君は心外だと言わんばかりに顔を顰め、何が冷たいんだと姉さんに突っかかる。
「本当に分からないの? それとも分からないフリをしてるの?」
「何でわざわざ分からないフリをしなくちゃならないんだ」
「なら、人を変えて考えてみなさいよ。いい? 葵があんたへのサプライズを計画していて私はそれに一役買ってる。で、私が海音君に何も言わず虎の欲しいものをリサーチして、それを後から知った海音君が『葵との約束は俺には無関係だろうが』って私に怒ってきたら、虎はなんて言う?」
「そ、それは……」
「海音君に同意できる?」
詰め寄る姉さんと目を逸らす虎君。
虎君がこんなに圧されているところなんて滅多に見れないからちょっぴり驚いてしまう僕。でも、驚きながらも二人の距離にヤキモチを覚えて思わずムッとしてしまった。
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「あんたは絶対、葵の計画を隠すなって言った海音君にブチ切れるでしょ。『葵が望んでいるから』って一方的な理由で」
「……そうだな」
「つまり、今回の海音君も可愛い妹の頼みだから誰にも喋らなかったってことよ」
分かった? って念を押す姉さんに虎君は悔しそうに分かったと頷く。
そんなに海音君の心情を理解しているならどうしてさっき海音君の隠し事に怒っていたのだろうと姉さんの言動に矛盾を覚えながら、僕は虎君と姉さんを引き離すように姉さんの腕を引いて疑問をぶつけてみた。
「そこまで分かってるなら、なんで海音君に怒ってるの?」
「別に私は海音君が隠し事をしたから怒ってるわけじゃないわよ?」
「え? でもさっき―――」
「ああ、あれ? あれはただの八つ当たりね。私を謀るとはいい度胸ね! 的な」
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「まぁそういうことだから、海音君を無視しないこと。いい?」
「分かったよ……」
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「え?! なんで!?」
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