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恋しい人
恋しい人 第126話
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家に帰れば可愛い妹の6歳の誕生日パーティーが早くも始まっていて、お祝いに駆けつけてくれた凪ちゃんにめのうはもうべったりだった。
そしてそんなめのう以上に凪ちゃんにべったりだったのは言うまでもなく茂斗で、10歳も年の離れた妹相手に凪ちゃんを巡って同レベルで争っていて、それには僕も姉さんも呆れ果てて凪ちゃんに同情したものだ。
結局、めのうは凪ちゃんの膝の上、茂斗は凪ちゃんの隣でと兄妹喧嘩は落ち着いたものの、凪ちゃんは物凄く窮屈だったに違いない。
それでもめのうを抱っこしながら茂斗の隣で笑う凪ちゃんの姿に、僕は凪ちゃんの気持ちはこんなにも分かり易いのに何を怖気づいているのかとらしくないヘタレっぷりを発揮している双子の片割れを眺めていた。
「そんな顔して見ないの。茂斗にバレたら苛められるわよ?」
「いつもの茂斗ならとっくに気づいてるよ。でも見て? もう周りのことなんて全然見えてないよ」
ご馳走にケーキにもうおなか一杯。
僕は空のお皿が並んだテーブルで頬杖をついてソファで何やら楽し気におしゃべりしている茂斗達を眺めていたんだけど、その視線に『早く好きだと言えばいいのに』と呆れる気持ちが滲んでいると察した姉さんが向かい合うように座り、笑う。
今日は兄弟喧嘩しないでよ? って心配する姉さんだけど、茂斗に僕を構う余裕があるとは思えない。あの茂斗が指さしても全然こっちに気づいてないんだから相当だ。
すると姉さんはおめでたい日に不貞腐れないのと苦笑い。妹の誕生日に不機嫌になるなんて悪いお兄ちゃんね。と。
「別に不機嫌じゃないし」
「素直じゃないわね。お姉ちゃん相手に今更隠さなくていいでしょ?」
「別に何も隠してないよ」
「拗ねた顔して何言ってるのよ。……そんなに嫌なら呼べばいいでしょ? 葵が呼んだら飛んでくるわよ?」
身を乗り出した姉さんは爪の先まで綺麗な指で僕の眉間をぐりぐり押してきて、顰め面を窘めてくる。
苦笑を漏らす姉さんは、私が呼ぼうか? と振り返らずに後ろを指出した。姉さんが指さした先にはロックグラスを片手に楽しそうにおしゃべりしている虎君と海音君の姿が。
何の話をしているのか分からないけど、二人きりの時には絶対に見ることができない笑い顔を見せる虎君に抑えていたモヤモヤが蓋を押し上げ顔を出す。
僕はさっきよりもずっと不機嫌な顔をしていると分かりながらも視線を逸らし、「呼ばなくていいし」と姉さんの申し出を拒否した。
「随分深刻そうね。喧嘩でもしたの? アイツ何したの?」
「喧嘩なんてしてないよ」
そもそもどうして虎君が原因だと思うのか。
そう突っかかれば姉さんはキョトンとした顔で当然のことのように言い放った。それ以外に喧嘩なんてしないでしょ? と。
「虎が葵に怒るとか想像できないもの」
「そんなことないよ。今日も怒られたし……」
「嘘。葵ってば何したの? まさか、浮気?」
虎君はほとんど僕を怒らない。でも全く怒らないわけじゃない。今日怒らせたばかりだと呟いたら姉さんは物凄く驚いた顔をして見せる。一体何をしたから怒ったのか。と。
浮気じゃないけど、ある意味浮気を疑われたようなものかと思いながらも、僕自身にそんな気は全く無かったから浮気じゃないと首を振る。
「なら何したの? あいつが葵のこと怒るなんて本当、よっぽどのことよ?」
「別に特別なことをしたわけじゃないよ。ちーちゃんの腹筋触らせてもらっただけだし」
「なるほど。それはアウトね」
姉さんは納得できたと頷くと向かいの席から隣へと移動してきて、「よく聞きなさい」と真面目な面持ちで口を開いた。
「虎は実の姉である私にすら嫉妬する心の狭い男よ。ちーが相手なら高確率で手が出るわよ」
「虎君はそんな暴力的じゃないよ。いくらヤキモチ妬いても絶対殴られたりしないから」
「当たり前でしょ。葵に手を上げようもんなら社会的にも物理的にも抹殺してやるから」
にっこり微笑む姉さんだけど、目が全然笑ってない。これはどんな手を使ってでも実行に移す気だ。
物騒な姉さんに僕は「言ってることが滅茶苦茶だよ」と苦笑いを漏らす。
「虎が殴るのはちーよ。……まぁ、ちーは虎に殴られたら喜んで応戦しそうだけど……」
嫉妬に狂った虎と格闘馬鹿のちーの喧嘩なんて周りに迷惑をかけるだけだから本当に止めてもらってよね。
そう僕に注意してくる姉さん。確かに虎君から勝負を仕掛けたらちーちゃんは理由なんて考えず喜んで勝負に乗りそうだ。
「分かったらあんまり虎の嫉妬心を刺激しないようにね」
「分かった。……でも、偶にはヤキモチ妬いて欲しいとは思うかな……」
「それなら私や茂斗相手に妬かせなさい。他の子達は巻き込まれると本当に可哀想よ」
「ならそうするね」
遠い目をする姉さんの言葉は説得力がある。僕の知らないところでも虎君のヤキモチを受け続けてきたせいだろうか?
僕は姉さんにありがとうと笑う。昨日までの僕なら、絶対に姉さんにヤキモチ妬いていただろうなと思いながら。
「いいのよ。……それで、葵がご機嫌斜めだった理由は何?」
「……恥ずかしいから言わない」
悩みがあるならお姉ちゃんに話してみなさい。
そう言ってくれる姉さんの気持ちは嬉しい。でも、僕は一瞬考えるもすぐに姉さんには相談できないと首を振った。
姉さんは自分が頼りにならないからかと悲しそうな顔をする。それに思わず「そうじゃなくて……」と頼りにならないから相談しないわけじゃないと言ってしまって、姉さんに食い下がる隙を与えてしまった。
そしてそんなめのう以上に凪ちゃんにべったりだったのは言うまでもなく茂斗で、10歳も年の離れた妹相手に凪ちゃんを巡って同レベルで争っていて、それには僕も姉さんも呆れ果てて凪ちゃんに同情したものだ。
結局、めのうは凪ちゃんの膝の上、茂斗は凪ちゃんの隣でと兄妹喧嘩は落ち着いたものの、凪ちゃんは物凄く窮屈だったに違いない。
それでもめのうを抱っこしながら茂斗の隣で笑う凪ちゃんの姿に、僕は凪ちゃんの気持ちはこんなにも分かり易いのに何を怖気づいているのかとらしくないヘタレっぷりを発揮している双子の片割れを眺めていた。
「そんな顔して見ないの。茂斗にバレたら苛められるわよ?」
「いつもの茂斗ならとっくに気づいてるよ。でも見て? もう周りのことなんて全然見えてないよ」
ご馳走にケーキにもうおなか一杯。
僕は空のお皿が並んだテーブルで頬杖をついてソファで何やら楽し気におしゃべりしている茂斗達を眺めていたんだけど、その視線に『早く好きだと言えばいいのに』と呆れる気持ちが滲んでいると察した姉さんが向かい合うように座り、笑う。
今日は兄弟喧嘩しないでよ? って心配する姉さんだけど、茂斗に僕を構う余裕があるとは思えない。あの茂斗が指さしても全然こっちに気づいてないんだから相当だ。
すると姉さんはおめでたい日に不貞腐れないのと苦笑い。妹の誕生日に不機嫌になるなんて悪いお兄ちゃんね。と。
「別に不機嫌じゃないし」
「素直じゃないわね。お姉ちゃん相手に今更隠さなくていいでしょ?」
「別に何も隠してないよ」
「拗ねた顔して何言ってるのよ。……そんなに嫌なら呼べばいいでしょ? 葵が呼んだら飛んでくるわよ?」
身を乗り出した姉さんは爪の先まで綺麗な指で僕の眉間をぐりぐり押してきて、顰め面を窘めてくる。
苦笑を漏らす姉さんは、私が呼ぼうか? と振り返らずに後ろを指出した。姉さんが指さした先にはロックグラスを片手に楽しそうにおしゃべりしている虎君と海音君の姿が。
何の話をしているのか分からないけど、二人きりの時には絶対に見ることができない笑い顔を見せる虎君に抑えていたモヤモヤが蓋を押し上げ顔を出す。
僕はさっきよりもずっと不機嫌な顔をしていると分かりながらも視線を逸らし、「呼ばなくていいし」と姉さんの申し出を拒否した。
「随分深刻そうね。喧嘩でもしたの? アイツ何したの?」
「喧嘩なんてしてないよ」
そもそもどうして虎君が原因だと思うのか。
そう突っかかれば姉さんはキョトンとした顔で当然のことのように言い放った。それ以外に喧嘩なんてしないでしょ? と。
「虎が葵に怒るとか想像できないもの」
「そんなことないよ。今日も怒られたし……」
「嘘。葵ってば何したの? まさか、浮気?」
虎君はほとんど僕を怒らない。でも全く怒らないわけじゃない。今日怒らせたばかりだと呟いたら姉さんは物凄く驚いた顔をして見せる。一体何をしたから怒ったのか。と。
浮気じゃないけど、ある意味浮気を疑われたようなものかと思いながらも、僕自身にそんな気は全く無かったから浮気じゃないと首を振る。
「なら何したの? あいつが葵のこと怒るなんて本当、よっぽどのことよ?」
「別に特別なことをしたわけじゃないよ。ちーちゃんの腹筋触らせてもらっただけだし」
「なるほど。それはアウトね」
姉さんは納得できたと頷くと向かいの席から隣へと移動してきて、「よく聞きなさい」と真面目な面持ちで口を開いた。
「虎は実の姉である私にすら嫉妬する心の狭い男よ。ちーが相手なら高確率で手が出るわよ」
「虎君はそんな暴力的じゃないよ。いくらヤキモチ妬いても絶対殴られたりしないから」
「当たり前でしょ。葵に手を上げようもんなら社会的にも物理的にも抹殺してやるから」
にっこり微笑む姉さんだけど、目が全然笑ってない。これはどんな手を使ってでも実行に移す気だ。
物騒な姉さんに僕は「言ってることが滅茶苦茶だよ」と苦笑いを漏らす。
「虎が殴るのはちーよ。……まぁ、ちーは虎に殴られたら喜んで応戦しそうだけど……」
嫉妬に狂った虎と格闘馬鹿のちーの喧嘩なんて周りに迷惑をかけるだけだから本当に止めてもらってよね。
そう僕に注意してくる姉さん。確かに虎君から勝負を仕掛けたらちーちゃんは理由なんて考えず喜んで勝負に乗りそうだ。
「分かったらあんまり虎の嫉妬心を刺激しないようにね」
「分かった。……でも、偶にはヤキモチ妬いて欲しいとは思うかな……」
「それなら私や茂斗相手に妬かせなさい。他の子達は巻き込まれると本当に可哀想よ」
「ならそうするね」
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僕は姉さんにありがとうと笑う。昨日までの僕なら、絶対に姉さんにヤキモチ妬いていただろうなと思いながら。
「いいのよ。……それで、葵がご機嫌斜めだった理由は何?」
「……恥ずかしいから言わない」
悩みがあるならお姉ちゃんに話してみなさい。
そう言ってくれる姉さんの気持ちは嬉しい。でも、僕は一瞬考えるもすぐに姉さんには相談できないと首を振った。
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