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初めての人
初めての人 第16話
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「しかし、葵が悠栖をねぇ……。でも確かに今のあいつは地に足がついてないぐらい浮かれてるけど、休み前は結構へこんでたよな? 俺と唯哉のこと誤解して空回ってたから」
「そうだね。本当、あの時は『悠栖どうしちゃったんだろう?』って思ってた」
「ならどうしてあいつの今の状態、分かったんだ?」
葵は昨日まで空回りしてへこんでる悠栖しか知らないはずだよな?
そんな疑問を投げかけてくる那鳥君に、僕はしどろもどろになってしまう。どうやって説明しよう? と。
(『慶史から電話で何回も悠栖と比較されてからかわれてた』って言ったら、なんでからかわれたかって話になるよね?)
からかわれていた原因を喋ったらズルズルと全部話すことになりそうだから困ってしまう。
うーん……。となんと説明しようかと頭を悩ませていたら、那鳥君が「あ」と声を上げた。
「そういえばあいつ、グループメッセージに報告してたな……。『彼氏が出来ました』って浮かれた内容」
「そ、そう! それ!」
よかった。これでなんとか誤魔化せそうだ。
(本当は慶史のからかいのせいなんだけど、『付き合ったばかりの悠栖に先を越されたから』なんて言えないもんね)
だって正直に伝えれば『エッチしてくれないから欲求不満です』って言ってるようなもの。それは流石に恥ずかしすぎるし、どうしてまだなんだと要らぬ興味を持たれたら凄く困る。
(付き合って半年以上経っててもエッチしてない人は沢山いるとは思うけど、でも、まだエッチできてない理由が理由だし、やっぱり言えないよ)
虎君を嫌いだと豪語してる慶史に相談するのすらモヤモヤしちゃうのに、苦手なだけで悪い印象を持っていないだろう朋喜や那鳥君になんて話せるわけがない。まして、慕っているだろう悠栖になんて絶対無理だ!
「でも、やっぱり分かんねぇーな。確かに悠栖の浮かれっぷりは呆れるぐらいだけど、葵だって幸せなんだろ? 愛が重くても平気なんだったら悠栖を羨む必要なんかないだろ?」
「その『愛が重い』って言い方、止めてよ。僕は虎君の愛を『重い』だなんて思ったことなんてないんだから」
「! 悪い悪い。ちー先輩がそう言ってたから、つい」
ムッとする僕に那鳥君は苦笑いを浮かべて弁解してくる。僕は出てきた名前が予想外過ぎて思わず「え?」っと足を止めてしまった。
那鳥君は立ち止まる僕に不思議そうな顔をして見せる。どうした? と。
「ご、ごめん。『ちー先輩』って、もしかしてちーちゃんのこと?」
「? そうだけど?」
キョトンして頷く那鳥君は、始業式が始まるぞと僕を促す。
動揺しながらも再び歩き出す僕は愛称で呼ぶほどちーちゃんと仲良くなったのかと那鳥君に尋ねた。
確かにちーちゃんは那鳥君と手合わせしたいと言っていたぐらい興味津々だったけど、僕がそれを頑張って阻止していたから二人に面識は殆どないはず。それなのに、いつの間に愛称で呼ぶほど親しくなっているのか。
「あ、それは、その、部活の先輩がちー先輩の知り合いで、さ」
「那鳥君?」
ちーちゃんが無茶をしていないか気が気じゃなかったけど、さっきまでとは打って変わってしどろもどろになっている那鳥君の返答に別の疑問が頭に浮かんで首を傾げてしまった。
(どうしてそんなに動揺してるの? 僕、変なこと聞いてないよね?)
「―――っ、し、始業式!」
「え?」
「ほら、もう体育館だ! 俺らが最後だし、急ぐぞ!」
「ちょ、那鳥君!?」
那鳥君は不自然なまでに朗らかな声をあげ、駆け足で僕から逃げる。置いてけぼりにされた僕は「待ってよ!」と慌ててその姿を追いかけた。
確かに体育館は目の前だったから急ごうって言われるのはまぁ理解できる。でも、その直前の那鳥君の様子が不可解過ぎだ。
ちーちゃんと仲良くなったことを知られたくなかったのだろうか? でも、それは何故?
(もしかして僕がちーちゃんと会わせないようにしてたから? でもそれは那鳥君に迷惑が掛かるからで、那鳥君が迷惑じゃないって言うなら僕は別に二人が仲良くなるのは嬉しいんだけど……)
納得できる理由を頑張って考えるも、全然しっくりこない。僕はジッと那鳥君を見つめ、視線で『どうして?』と訴え続けた。
那鳥君は不自然なまでにこっちを見ず、追いついた悠栖と朋喜と言葉を交わして僕を無視する。らしくないその振る舞いに、僕のモヤモヤは募るばかりだ。
「そんな熱視線注いで、浮気心が再燃した?」
「! ……ねぇ、慶史。那鳥君とちーちゃんがいつの間にか仲良くなってるんだけど、何か知ってる?」
振り返り意地悪な笑顔を見せるのは慶史だ。僕は慶史の意地悪を無視してこのモヤモヤを晴らすために僕の知らない間にちーちゃんが那鳥君に変なことをしていないか尋ねた。
すると慶史は苦笑を漏らし、信頼ないなとちーちゃんを憐れんだ。
「だって、ちーちゃんだよ?」
「千景君は人よりちょっと格闘バカなだけで常識はちゃんとあるよ」
「従兄弟の友達に殴りかかるのは『常識がある』とは言いません」
「殴りかかってはいないでしょ。葵が止めたし」
「僕が止めてなかったら間違いなく『手合わせ』って言って殴りかかってたよ」
ちーちゃんがどんな性格だったか忘れたのかと尋ねれば、慶史は楽しげに笑う。知ってる知ってる。と言いながら。
「まぁ、夏休みの間に色々あったんだよ。悠栖に男の恋人ができたり、千景君が入寮してきたり、那鳥が先輩と良い雰囲気になったり」
「! え? えぇ?」
「葵が先輩と初エッチのためにイチャイチャしてる間にも世界は日々変化してるってことだね」
衝撃的な内容の数々に驚きのあまり言葉を失ってしまう僕。
慶史はそんな僕に声をあげて笑うと、この話の続きは始業式の後でと言って呆然とする僕の手を引き体育館に足を踏み入れた。
「そうだね。本当、あの時は『悠栖どうしちゃったんだろう?』って思ってた」
「ならどうしてあいつの今の状態、分かったんだ?」
葵は昨日まで空回りしてへこんでる悠栖しか知らないはずだよな?
そんな疑問を投げかけてくる那鳥君に、僕はしどろもどろになってしまう。どうやって説明しよう? と。
(『慶史から電話で何回も悠栖と比較されてからかわれてた』って言ったら、なんでからかわれたかって話になるよね?)
からかわれていた原因を喋ったらズルズルと全部話すことになりそうだから困ってしまう。
うーん……。となんと説明しようかと頭を悩ませていたら、那鳥君が「あ」と声を上げた。
「そういえばあいつ、グループメッセージに報告してたな……。『彼氏が出来ました』って浮かれた内容」
「そ、そう! それ!」
よかった。これでなんとか誤魔化せそうだ。
(本当は慶史のからかいのせいなんだけど、『付き合ったばかりの悠栖に先を越されたから』なんて言えないもんね)
だって正直に伝えれば『エッチしてくれないから欲求不満です』って言ってるようなもの。それは流石に恥ずかしすぎるし、どうしてまだなんだと要らぬ興味を持たれたら凄く困る。
(付き合って半年以上経っててもエッチしてない人は沢山いるとは思うけど、でも、まだエッチできてない理由が理由だし、やっぱり言えないよ)
虎君を嫌いだと豪語してる慶史に相談するのすらモヤモヤしちゃうのに、苦手なだけで悪い印象を持っていないだろう朋喜や那鳥君になんて話せるわけがない。まして、慕っているだろう悠栖になんて絶対無理だ!
「でも、やっぱり分かんねぇーな。確かに悠栖の浮かれっぷりは呆れるぐらいだけど、葵だって幸せなんだろ? 愛が重くても平気なんだったら悠栖を羨む必要なんかないだろ?」
「その『愛が重い』って言い方、止めてよ。僕は虎君の愛を『重い』だなんて思ったことなんてないんだから」
「! 悪い悪い。ちー先輩がそう言ってたから、つい」
ムッとする僕に那鳥君は苦笑いを浮かべて弁解してくる。僕は出てきた名前が予想外過ぎて思わず「え?」っと足を止めてしまった。
那鳥君は立ち止まる僕に不思議そうな顔をして見せる。どうした? と。
「ご、ごめん。『ちー先輩』って、もしかしてちーちゃんのこと?」
「? そうだけど?」
キョトンして頷く那鳥君は、始業式が始まるぞと僕を促す。
動揺しながらも再び歩き出す僕は愛称で呼ぶほどちーちゃんと仲良くなったのかと那鳥君に尋ねた。
確かにちーちゃんは那鳥君と手合わせしたいと言っていたぐらい興味津々だったけど、僕がそれを頑張って阻止していたから二人に面識は殆どないはず。それなのに、いつの間に愛称で呼ぶほど親しくなっているのか。
「あ、それは、その、部活の先輩がちー先輩の知り合いで、さ」
「那鳥君?」
ちーちゃんが無茶をしていないか気が気じゃなかったけど、さっきまでとは打って変わってしどろもどろになっている那鳥君の返答に別の疑問が頭に浮かんで首を傾げてしまった。
(どうしてそんなに動揺してるの? 僕、変なこと聞いてないよね?)
「―――っ、し、始業式!」
「え?」
「ほら、もう体育館だ! 俺らが最後だし、急ぐぞ!」
「ちょ、那鳥君!?」
那鳥君は不自然なまでに朗らかな声をあげ、駆け足で僕から逃げる。置いてけぼりにされた僕は「待ってよ!」と慌ててその姿を追いかけた。
確かに体育館は目の前だったから急ごうって言われるのはまぁ理解できる。でも、その直前の那鳥君の様子が不可解過ぎだ。
ちーちゃんと仲良くなったことを知られたくなかったのだろうか? でも、それは何故?
(もしかして僕がちーちゃんと会わせないようにしてたから? でもそれは那鳥君に迷惑が掛かるからで、那鳥君が迷惑じゃないって言うなら僕は別に二人が仲良くなるのは嬉しいんだけど……)
納得できる理由を頑張って考えるも、全然しっくりこない。僕はジッと那鳥君を見つめ、視線で『どうして?』と訴え続けた。
那鳥君は不自然なまでにこっちを見ず、追いついた悠栖と朋喜と言葉を交わして僕を無視する。らしくないその振る舞いに、僕のモヤモヤは募るばかりだ。
「そんな熱視線注いで、浮気心が再燃した?」
「! ……ねぇ、慶史。那鳥君とちーちゃんがいつの間にか仲良くなってるんだけど、何か知ってる?」
振り返り意地悪な笑顔を見せるのは慶史だ。僕は慶史の意地悪を無視してこのモヤモヤを晴らすために僕の知らない間にちーちゃんが那鳥君に変なことをしていないか尋ねた。
すると慶史は苦笑を漏らし、信頼ないなとちーちゃんを憐れんだ。
「だって、ちーちゃんだよ?」
「千景君は人よりちょっと格闘バカなだけで常識はちゃんとあるよ」
「従兄弟の友達に殴りかかるのは『常識がある』とは言いません」
「殴りかかってはいないでしょ。葵が止めたし」
「僕が止めてなかったら間違いなく『手合わせ』って言って殴りかかってたよ」
ちーちゃんがどんな性格だったか忘れたのかと尋ねれば、慶史は楽しげに笑う。知ってる知ってる。と言いながら。
「まぁ、夏休みの間に色々あったんだよ。悠栖に男の恋人ができたり、千景君が入寮してきたり、那鳥が先輩と良い雰囲気になったり」
「! え? えぇ?」
「葵が先輩と初エッチのためにイチャイチャしてる間にも世界は日々変化してるってことだね」
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