運命を知らないアルファ

riiko

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本編

27、告白のあとは

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 告白なんて人生で初めてだった。

 正樹は俺との関係が体だけだと思ったみたいで、ヒート中に散々好きだと言ったが、やはりそれは覚えていなかった。

 もう友人なんて言葉で正樹を離したくない、どんなに拒絶されようが俺と正樹は恋人として周りにも公表しなければ、また第二の櫻井みたいなやつが現れては困る。

 正樹はオメガとしての自分に自信がないようだが、そんなことはない。

 オメガらしからぬ容姿は、むしろプラスでしかないことを正樹は知らない。現に俺というアルファも櫻井というアルファも虜にしているんだ。世の中のアルファのすべてが明らかにオメガという容姿を好きとは限らない。

 普通の男子と変わらない体格に身長。それこそ健康的で壊れなさそうな体であり、性欲を一層そそる。アルファに付き合える体力がいかにもあるという容姿はたまらないし、儚く病弱なオメガよりよっぽどいい。

 それにフェロモンはかすかに感じるが、甘くなくてそれも最高だった。本来甘すぎる匂いが嫌いなやつには、オメガのむせるようなフェロモンは好みがわかれる。正樹はちょうどいい香りだ、たくましいさわやかなハーブ。

 香りまでもが俺の好みだったなんて、たまらない。

 平凡と正樹は自分のことをそう言うが、オメガの中では平凡ではない。とにかく最高だった。

 初めて出会った日のことを話した、俺はあのフェロモンに耐えたんだ。それを評価してほしい、俺はフェロモンすなわちオメガ性ではなく、その後の正樹自身を好きになったんだ。

 説得はしたけど納得はしていないようだった。今までの彼女はこんなに難しくくどく必要がなかったのに、本気の相手は難しいことを実感した日だった。とにかく正樹を落とすのに必死だった。


 ある日、放課後に用事があるから今日は送りはいらないと言われた。

 俺はいても立ってもいられなくて、放課後正樹を探したのは言うまでもない。そうしたら、なんとあの入江響也いりえきょうやと一緒にいるだと!? 彼は有名作家で、うちのホテルを使う常連だが、あのアルファがなぜこんな高校に来ているのだ?

 入江はあろうことか、俺の正樹の頬に触ろうとしていた。俺は間一髪で正樹に触れる手を払い、正樹を後ろから抱きしめた。

「へっ!?」
「俺の誘いを断って、この男と何をしているっ」
「つ、つかさっ!?」

 正樹も入江も、それから何故かそこにいる小柄のオメガの女も驚いた顔をしていた。この現場はいったい?

「簡単にアルファに触れさせるな」
「えっ、なんのこと?」

 クスクスと笑う入江。

「ごめんね、まさ君の頬にまつげがついていたから取ろうとしたんだ」
「あっ、入江さんありがとうございます。なんだかすいません」

 まさ君だと!?

「いや、彼氏のいるオメガに触ろうとしてしまって悪かった。ナイトが来たし、じゃあ僕たちは行こうかな、まさ君、沙也加さやかのことこれからもよろしくね。また一緒にゆっくりと会おうね」

 彼氏?

 俺、彼氏!?

 俺、正樹のカレシだ! 抱きしめている正樹もそこは否定せず、み、み、認めているんじゃないか!? そうだよな、告白して、他人からも彼氏認定をされたなら、これはもう恋人!?

 俺は、正樹の彼氏だぁぁぁぁ!

 隣にいるオメガの女の腰を抱いて、正樹に挨拶をしているのは、なんだ? 

「はい! 俺もまた入江さんとお話ししたいです、今日はありがとうございました。司っ! いい加減離れろ!」

 正樹は言葉ではそう言っても、引き離そうとしないところを見ると、嫌がっているようには見えなかった。後ろから抱きしめた時、正樹のうなじからは仄かにハーブの香りがした、俺と触れ合って歓喜しているようにも見えた。俺はそんな可愛い正樹を、終始抱え込んでいた。

 正樹も俺を他人に彼氏と言われて、照れている? 喜んでいる?

「あんた、作家の入江響也か? 正樹とまた会えるなんて思うな」
「それは、まさ君が決めることだよ? 西条のお坊ちゃん」
「気安く、まさ君なんて言うな」

 俺のカレシを、お前みたいなアルファに今後会わせるはずがないだろう。

 俺の彼氏、俺が彼氏、俺たちは恋人! 

 次は結婚? 俺たちは順調にステップアップしているぞ。
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