27 / 67
本編
27、告白のあとは
しおりを挟む告白なんて人生で初めてだった。
正樹は俺との関係が体だけだと思ったみたいで、ヒート中に散々好きだと言ったが、やはりそれは覚えていなかった。
もう友人なんて言葉で正樹を離したくない、どんなに拒絶されようが俺と正樹は恋人として周りにも公表しなければ、また第二の櫻井みたいなやつが現れては困る。
正樹はオメガとしての自分に自信がないようだが、そんなことはない。
オメガらしからぬ容姿は、むしろプラスでしかないことを正樹は知らない。現に俺というアルファも櫻井というアルファも虜にしているんだ。世の中のアルファのすべてが明らかにオメガという容姿を好きとは限らない。
普通の男子と変わらない体格に身長。それこそ健康的で壊れなさそうな体であり、性欲を一層そそる。アルファに付き合える体力がいかにもあるという容姿はたまらないし、儚く病弱なオメガよりよっぽどいい。
それにフェロモンはかすかに感じるが、甘くなくてそれも最高だった。本来甘すぎる匂いが嫌いなやつには、オメガのむせるようなフェロモンは好みがわかれる。正樹はちょうどいい香りだ、たくましいさわやかなハーブ。
香りまでもが俺の好みだったなんて、たまらない。
平凡と正樹は自分のことをそう言うが、オメガの中では平凡ではない。とにかく最高だった。
初めて出会った日のことを話した、俺はあのフェロモンに耐えたんだ。それを評価してほしい、俺はフェロモンすなわちオメガ性ではなく、その後の正樹自身を好きになったんだ。
説得はしたけど納得はしていないようだった。今までの彼女はこんなに難しくくどく必要がなかったのに、本気の相手は難しいことを実感した日だった。とにかく正樹を落とすのに必死だった。
ある日、放課後に用事があるから今日は送りはいらないと言われた。
俺はいても立ってもいられなくて、放課後正樹を探したのは言うまでもない。そうしたら、なんとあの入江響也と一緒にいるだと!? 彼は有名作家で、うちのホテルを使う常連だが、あのアルファがなぜこんな高校に来ているのだ?
入江はあろうことか、俺の正樹の頬に触ろうとしていた。俺は間一髪で正樹に触れる手を払い、正樹を後ろから抱きしめた。
「へっ!?」
「俺の誘いを断って、この男と何をしているっ」
「つ、つかさっ!?」
正樹も入江も、それから何故かそこにいる小柄のオメガの女も驚いた顔をしていた。この現場はいったい?
「簡単にアルファに触れさせるな」
「えっ、なんのこと?」
クスクスと笑う入江。
「ごめんね、正君の頬にまつげがついていたから取ろうとしたんだ」
「あっ、入江さんありがとうございます。なんだかすいません」
正君だと!?
「いや、彼氏のいるオメガに触ろうとしてしまって悪かった。ナイトが来たし、じゃあ僕たちは行こうかな、正君、沙也加のことこれからもよろしくね。また一緒にゆっくりと会おうね」
彼氏?
俺、彼氏!?
俺、正樹のカレシだ! 抱きしめている正樹もそこは否定せず、み、み、認めているんじゃないか!? そうだよな、告白して、他人からも彼氏認定をされたなら、これはもう恋人!?
俺は、正樹の彼氏だぁぁぁぁ!
隣にいるオメガの女の腰を抱いて、正樹に挨拶をしているのは、なんだ?
「はい! 俺もまた入江さんとお話ししたいです、今日はありがとうございました。司っ! いい加減離れろ!」
正樹は言葉ではそう言っても、引き離そうとしないところを見ると、嫌がっているようには見えなかった。後ろから抱きしめた時、正樹のうなじからは仄かにハーブの香りがした、俺と触れ合って歓喜しているようにも見えた。俺はそんな可愛い正樹を、終始抱え込んでいた。
正樹も俺を他人に彼氏と言われて、照れている? 喜んでいる?
「あんた、作家の入江響也か? 正樹とまた会えるなんて思うな」
「それは、正君が決めることだよ? 西条のお坊ちゃん」
「気安く、正君なんて言うな」
俺のカレシを、お前みたいなアルファに今後会わせるはずがないだろう。
俺の彼氏、俺が彼氏、俺たちは恋人!
次は結婚? 俺たちは順調にステップアップしているぞ。
117
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【本編完結済】巣作り出来ないΩくん
こうらい ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。
悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。
心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…
うそつきΩのとりかえ話譚
沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。
舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。
【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜
みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。
自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。
残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。
この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる――
そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。
亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、
それでも生きてしまうΩの物語。
痛くて、残酷なラブストーリー。
36.8℃
月波結
BL
高校2年生、音寧は繊細なΩ。幼馴染の秀一郎は文武両道のα。
ふたりは「番候補」として婚約を控えながら、音寧のフェロモンの影響で距離を保たなければならない。
近づけば香りが溢れ、ふたりの感情が揺れる。音寧のフェロモンは、バニラビーンズの甘い香りに例えられ、『運命の番』と言われる秀一郎の身体はそれに強く反応してしまう。
制度、家族、将来——すべてがふたりを結びつけようとする一方で、薬で抑えた想いは、触れられない手の間をすり抜けていく。
転校生の肇くんとの友情、婚約者候補としての葛藤、そして「待ってる」の一言が、ふたりの未来を静かに照らす。
36.8℃の微熱が続く日々の中で、ふたりは“運命”を選び取ることができるのか。
香りと距離、運命、そして選択の物語。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる