運命を知らないアルファ

riiko

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本編

51、運命を知らないアルファと運命を知っているオメガ

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「これで正樹の憂いは取れた?」
「う、ん……」
「ん? まだ何かある?」

 正樹が真剣な顔で、俺を見て、俺の顔に手を当てた。

「司……」
「ん」

 正樹の手が俺の頬をくすぐる、とても気持ちいい。愛すべき人の手が俺に触れるだけで細胞が歓喜するのがわかる。

「好きだよ、ずっと好きだった」

 えっ、素面で言ってくれた。俺はその言葉に、自然に涙が出てきた。正樹がヒートを明けてからというもの、正樹の誤解を解くのに必死で、俺も消耗が激しかった。やっと気持ちが落ち着いて、安心しきったところに、愛の告白。嬉しくてたまらない。

「正樹っ!!」
「えっ、なに? 泣いてんの? ちょっと、んんっっ」

 泣きながらキスをした。アルファが情けないって思われたかな、でも俺だって純粋に恋をしただけの高校生だよ、俺だって、大好きな人に好きと言われたら涙が出るくらいうれしくなる。アルファなんて所詮こんなもの、いくら見繕ってもつがいの前じゃ、愛する人の前じゃただのバカなんだ。

「嬉しいっ、正樹、もう離さないっ、愛してる」
「ふふ、俺だって愛しているよ」

 そうして正樹からキスをしてくれた。

「正樹、抱いていい?」
「うん、お手柔らかにな! もう噛むなよっ」

 発情期の際は、俺も何度もとんでしまって、正樹の皮膚は俺がつけたキスマークと噛み後で酷いことになっていた。それがまた卑猥でいやらしいのだけど、これ以上は流石につけられないよな。

「善処する。これ以上煽らせないためにパジャマ着せたのに、意味無かった」
「これ、そういう意味だったの?」
「ああ。さすがに色んな所を噛みすぎたし、つがいになった正樹の裸の前では理性が保てない」

 俺の行動が意外だったのかな? 正樹がくったくなくクスクスと笑った。

「ふふっお前、必死な? ラット怖かったもん!」
「正樹相手だとどうも抑えが効かないみたいだ、でも今は大丈夫、もう気持ちも同じとこ向いているから。大事にするよ、愛している」
「うん、俺も」

 俺たちのこれからは、今やっと始まったばかりだ。

 俺は優しく正樹にキスをした。このキスで正樹は俺を心から受け入れてくれているとわかる。不思議だけど自信をもってそう言える。

 運命を知らなかった俺は、運命を知った。

 でもそれはほんの些細な事、たとえ運命じゃなくても俺は正樹だけしか見なかったって心からそう思える。フェロモンが大丈夫だというのも重要だとは思うけれど、そんなのはほんのきっかけであって、俺は正樹と出会ってから、人を好きになるのはそれだけではないと知ることができた。

 この先どんなことが起ころうとも、愛おしい正樹に対して愛が溢れていく未来しか想像できない。これは、正樹と俺の出会いから結ばれるまでの物語だ。

 ハッピーエンド、めでたしめでたしだぜぃ!!

 ―― fin ――
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