36 / 67
本編
36、発情?
しおりを挟む昼休みになってスマホを見たら、授業中に百合子さんからメールが入っていた。
『これから一週間、正樹をお願いね。ついに司君の想いが通じて良かったね! でも心配だから何処で発情期を過ごすのかだけ連絡ください! あなたの未来のママより』
えっ、なんだって。どういうことだ!?
急いで正樹の教室に行くと、正樹のクラスメイトが体調不良で授業中に保健室に行ったと聞かされた。
「先生!!」
「うわっ、びっくりした。西条くんどうかした? あれ、まだ帰ってなかったの?」
保健室に駆け込むと、保健医は変なことを聞いてきた。帰ってなかったとは、どういうことだ?
「えっ、正樹はどうしました!? 保健室に来たって聞いたんですけど」
「真山君はヒートが起こりそうだって、少しスマホいじってから帰宅したよ。あれ? 一緒に過ごす人いるって言っていたから、スマホでやり取りしていたの西条君かと思って、まだ香り的に大丈夫そうだったからそのまま帰しちゃったんだけど、どういうこと?」
むしろ俺こそどういうこと? と聞きたい。それを聞いて急いで保健室をあとにした。一人で家に帰ったのか? だったらなぜ百合子さんは俺に? 正樹に電話をするも出ない、慌てて百合子さんに電話をした。
「あら、司くん。大変な時にわざわざ電話ありがとう」
「百合子さん!! 正樹からは、なんて連絡がきたんですか!?」
「えっ、今正樹と一緒じゃないの? 好きな人と発情期を過ごすから一週間家に帰らないけど、心配しないでって。好きな人って司君だと思っていたんだけど、違うの?」
「俺です!! 俺のはずなのに、正樹は一人で帰ったって、保健医がっ!!」
「司君、まずは落ち着いて」
俺はいつになく動揺していた。
「司君、実は正樹ふさぎ込んでいることがあったけど、あなたとの事を真剣に考えているだけだと思ったの。でもあなたと一緒にならないって、もしかしたらそういう結論に至ったのかもしれない。私も司君とのことを応援しすぎて、それで発情期になってあなたと当たり前に過ごすと思っていた母親のもとには帰れなかったのかも……っ」
「あっ、俺、俺のせいですっ、俺はお互い求めあっていると思っていて……」
電話の先で百合子さんが泣いていた、オメガの息子を持つ母親だ、俺以上に今一番つらくて心配に違いない。
「今はそれはいいわ。でも発情期に番のいないオメガが一人でいるなんて、事件に巻き込まれたらと思うと怖いの!! すぐに警察に連絡するね。でも司君なら何か対策しているんじゃないの? 例えば正樹の持ち物にGPSを仕込んでいるとか……今回だけは目を瞑るから、それならすぐに行動に起こして!!」
そうだった、俺は正樹の首につけた俺という鎖に相当な多機能をつけていた。
「百合子さん!! ありがとうございます、付けていました。今すぐ西条の警備と共に正樹を探し出します。うちの警備もそちらに向かわせますので、正樹の保護まで一緒に見守ってください!!」
「そうね、司君ならやっているわね。想像以上よ! あなたは合格だわ!! 見つけたら番にしちゃいなさい。正樹はフラフラしているけど、多分今回のこともいろいろ考えすぎてのことよ、あなたを好きなのは確かだから。正樹の許可がでたら番にしていいって私もパパも話していたのよ。頑張って!」
そうして学校を出てすぐに警備を呼び、待機していたバンに乗り込み、最新機器で揃えられた車の中で正樹の捜索に当たった。すぐに場所がわかった、そこは都内にある高級ホテルだったが、残念ながらうちのホテルではなかった。同業で親交もあったので、親のコネを借りてそこのホテルの支配人にすぐに繋いでもらった。
こんなホテルに行くなんて、一人ではないはず。いったい誰と……。
すぐに支配人から連絡がきて、本来なら絶対してはいけないことだけど、これは犯罪行為かもしれないと判断されて、教えてもらった。監視カメラに映る正樹が行った部屋は……そこの部屋を借りている男の名前を聞いて驚愕した。
その男は正樹の元クラスメイト、正樹をレイプしようとした櫻井だった。
131
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【本編完結済】巣作り出来ないΩくん
こうらい ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。
悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。
心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…
うそつきΩのとりかえ話譚
沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。
舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。
【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜
みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。
自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。
残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。
この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる――
そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。
亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、
それでも生きてしまうΩの物語。
痛くて、残酷なラブストーリー。
36.8℃
月波結
BL
高校2年生、音寧は繊細なΩ。幼馴染の秀一郎は文武両道のα。
ふたりは「番候補」として婚約を控えながら、音寧のフェロモンの影響で距離を保たなければならない。
近づけば香りが溢れ、ふたりの感情が揺れる。音寧のフェロモンは、バニラビーンズの甘い香りに例えられ、『運命の番』と言われる秀一郎の身体はそれに強く反応してしまう。
制度、家族、将来——すべてがふたりを結びつけようとする一方で、薬で抑えた想いは、触れられない手の間をすり抜けていく。
転校生の肇くんとの友情、婚約者候補としての葛藤、そして「待ってる」の一言が、ふたりの未来を静かに照らす。
36.8℃の微熱が続く日々の中で、ふたりは“運命”を選び取ることができるのか。
香りと距離、運命、そして選択の物語。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる