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外伝 儚く散った公爵令息
13 はめられた王太子
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今はいったいどれだけの時間が過ぎたのだろうか。
心は空虚なまま、目の前のオメガを貪るしかない自分の体が怖い。
いったい、どうして、こんなにもこのオメガを抱いているのだろう。そうしなければ体が壊れるとでも言っているように、心が伴わないまま自分の分身だけが昂り続ける。
「あ、殿下ぁ、好きぃ」
「うっ、黙れっ、クソっ、くそ」
徐々に意識が覚醒していく。
それなのに体の疼きだけが治まらず、定期的に腰を振るしかない。
アシュリーごとき、止められると思っていた自分が悔しい。急激なラットを起こしたところで、オメガ一人捉えられると思っていた。――自分の意志とは関係なく、体が自由を奪われるとは思ってもいなかった。
騎士がこのオメガを捕らえに来ると思ったこと、それこそ甘えだった。私たちが部屋から出られないように、アシュリーが手配した騎士に固められていたのだから。
だがその苦痛の時間がやっと終わりを告げた。朦朧とする中、王妃の私兵がこの場を収めにやって来た。
「フランディル、フランディル……」
「は、母上?」
「ああ、救出がこんなに遅れてすまなかった」
「あ、あ、シ、シリルは」
「シリルは保護した。だから今はまだ休みなさい。体力が落ちている。お前の閨係は薬の摂取量をはるかに超えたみたいで、まるで廃人のようだ。これまでのことを聞きたいから生かす処置をしている」
母が来てくれてくれたのなら安心だと思った。
母に、私に起きたすべてのことを知る限りで教えてもらう。
まずアシュリーは後宮の秘薬を使った。後宮に聞き取るとそういった代物があることの証言が取れた。それは政略結婚などで、愛の無い相手と閨を共にする時に使うものだという。
なぜかそれがシリルの手元に行き、リーグ経由でアシュリーに渡ったということだった。そしてシリルも自分に使用し、私を待っていた。
アシュリーの使用した瓶を調べたところ、用量を超えて飲用し副作用が働いたというのが医師の見解だった。意識を保つことはできないほどの威力となり、ネックガードなしでは番契約は仕方がないことだと言われる。
そして次に聞いた言葉に衝撃を受けた。
シリルは薬でヒートを起こしているところにリアムが遭遇し、二人は発情期を過ごした。王宮騎士がリアムを確保したが、その時二人は番契約を交わした後だった。リアムを騎士団長に預け、そしてシリルは王宮に隔離された。
忠実なリアムが禁を破るほど、それほどの薬を後宮が管理していたことを母でさえ知らなかったらしい。
薬を使用されたとはいえ、シリル以外の番を得てしまった。そしてシリルを永遠に失った。喪失感の中、なぜこのようなことが起きたのか調査を開始した。
リアムがシリルを襲った時、シリル付きの侍女がすぐ母に報告をした。母は後宮から事情を聞き、リアムとシリルの事故は薬が起こしたものだと判明する。そしてそんな混乱が起きている中、私がいないことが騒ぎになった。私は、アシュリーに加担した後宮官僚とその仲間である騎士により、部屋にアシュリーと閉じ込められていた。
母が私の捜索を始めると、後宮内で問題が起きていたことが判明する。一部の官僚と騎士が協力して王太子のラットを引き起こしたとわかり、そこで私の救出に乗り出したとのことだった。
そこから罪が暴かれていくが、その間も裏でまだ事件は進行中だった。すべての悪を把握するのが遅すぎた。そのせいで、シリルは……
最も許しがたく最悪なことが起きていたことを事後に知った。
王宮内の不正を密かに処理していた騎士団長から報告が上がってきた時に驚愕した。まさか王宮内が、一人の官僚によりここまで侵食されていたとは思いもしなかった。
この事件の黒幕とされた後宮官僚は、王太子ラット事件の協力者であった騎士たちにすべての罪を着せるため、隔離されていたシリルを彼らに秘密裏に引き渡し、シリルを凌辱するように煽った。処刑されるほどの罪をつくる道へと誘導したのだった。
それこそがシリル凌辱の原因だった。
その後の調査で、アシュリーの父親と後宮官僚の不正が見つかる。そもそも本来の閨担当はアシュリーではなかった。傀儡を私の側室として召し上げる計画を立てていた後宮官僚により、アシュリーが選出されただけ。本来の閨担当が、彼らの手により消されていたことが明るみに出た。
すべての調査が終わると、ミラー男爵とアシュリーの弟を処刑した。王族に逆らうということは一家全員処刑対象だ、それを知らない貴族はいない。
シリルを強姦した騎士のほとんどが助けに入ったリアムにその場で斬られていたが、騎士団長に捕縛された騎士全員斬首刑に処した。そして、最も凶悪な犯罪者である後宮官僚は拷問の末の斬首刑。
すべてが片付いた時シリルを取り戻す。その思いだけで前を見てきた。
アシュリーの処遇はある男に任せた。簡単には逝かせない。シリルが味わったことをその身で感じてもらわなければならない。
そして騎士を連れ、私は王宮を出た。
心は空虚なまま、目の前のオメガを貪るしかない自分の体が怖い。
いったい、どうして、こんなにもこのオメガを抱いているのだろう。そうしなければ体が壊れるとでも言っているように、心が伴わないまま自分の分身だけが昂り続ける。
「あ、殿下ぁ、好きぃ」
「うっ、黙れっ、クソっ、くそ」
徐々に意識が覚醒していく。
それなのに体の疼きだけが治まらず、定期的に腰を振るしかない。
アシュリーごとき、止められると思っていた自分が悔しい。急激なラットを起こしたところで、オメガ一人捉えられると思っていた。――自分の意志とは関係なく、体が自由を奪われるとは思ってもいなかった。
騎士がこのオメガを捕らえに来ると思ったこと、それこそ甘えだった。私たちが部屋から出られないように、アシュリーが手配した騎士に固められていたのだから。
だがその苦痛の時間がやっと終わりを告げた。朦朧とする中、王妃の私兵がこの場を収めにやって来た。
「フランディル、フランディル……」
「は、母上?」
「ああ、救出がこんなに遅れてすまなかった」
「あ、あ、シ、シリルは」
「シリルは保護した。だから今はまだ休みなさい。体力が落ちている。お前の閨係は薬の摂取量をはるかに超えたみたいで、まるで廃人のようだ。これまでのことを聞きたいから生かす処置をしている」
母が来てくれてくれたのなら安心だと思った。
母に、私に起きたすべてのことを知る限りで教えてもらう。
まずアシュリーは後宮の秘薬を使った。後宮に聞き取るとそういった代物があることの証言が取れた。それは政略結婚などで、愛の無い相手と閨を共にする時に使うものだという。
なぜかそれがシリルの手元に行き、リーグ経由でアシュリーに渡ったということだった。そしてシリルも自分に使用し、私を待っていた。
アシュリーの使用した瓶を調べたところ、用量を超えて飲用し副作用が働いたというのが医師の見解だった。意識を保つことはできないほどの威力となり、ネックガードなしでは番契約は仕方がないことだと言われる。
そして次に聞いた言葉に衝撃を受けた。
シリルは薬でヒートを起こしているところにリアムが遭遇し、二人は発情期を過ごした。王宮騎士がリアムを確保したが、その時二人は番契約を交わした後だった。リアムを騎士団長に預け、そしてシリルは王宮に隔離された。
忠実なリアムが禁を破るほど、それほどの薬を後宮が管理していたことを母でさえ知らなかったらしい。
薬を使用されたとはいえ、シリル以外の番を得てしまった。そしてシリルを永遠に失った。喪失感の中、なぜこのようなことが起きたのか調査を開始した。
リアムがシリルを襲った時、シリル付きの侍女がすぐ母に報告をした。母は後宮から事情を聞き、リアムとシリルの事故は薬が起こしたものだと判明する。そしてそんな混乱が起きている中、私がいないことが騒ぎになった。私は、アシュリーに加担した後宮官僚とその仲間である騎士により、部屋にアシュリーと閉じ込められていた。
母が私の捜索を始めると、後宮内で問題が起きていたことが判明する。一部の官僚と騎士が協力して王太子のラットを引き起こしたとわかり、そこで私の救出に乗り出したとのことだった。
そこから罪が暴かれていくが、その間も裏でまだ事件は進行中だった。すべての悪を把握するのが遅すぎた。そのせいで、シリルは……
最も許しがたく最悪なことが起きていたことを事後に知った。
王宮内の不正を密かに処理していた騎士団長から報告が上がってきた時に驚愕した。まさか王宮内が、一人の官僚によりここまで侵食されていたとは思いもしなかった。
この事件の黒幕とされた後宮官僚は、王太子ラット事件の協力者であった騎士たちにすべての罪を着せるため、隔離されていたシリルを彼らに秘密裏に引き渡し、シリルを凌辱するように煽った。処刑されるほどの罪をつくる道へと誘導したのだった。
それこそがシリル凌辱の原因だった。
その後の調査で、アシュリーの父親と後宮官僚の不正が見つかる。そもそも本来の閨担当はアシュリーではなかった。傀儡を私の側室として召し上げる計画を立てていた後宮官僚により、アシュリーが選出されただけ。本来の閨担当が、彼らの手により消されていたことが明るみに出た。
すべての調査が終わると、ミラー男爵とアシュリーの弟を処刑した。王族に逆らうということは一家全員処刑対象だ、それを知らない貴族はいない。
シリルを強姦した騎士のほとんどが助けに入ったリアムにその場で斬られていたが、騎士団長に捕縛された騎士全員斬首刑に処した。そして、最も凶悪な犯罪者である後宮官僚は拷問の末の斬首刑。
すべてが片付いた時シリルを取り戻す。その思いだけで前を見てきた。
アシュリーの処遇はある男に任せた。簡単には逝かせない。シリルが味わったことをその身で感じてもらわなければならない。
そして騎士を連れ、私は王宮を出た。
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