運命の番は姉の婚約者

最終章 本当の幸せ

62 つがい ※

　車に乗せられて、すぐに隆二のマンションに運ばれた。
「爽、爽、ごめんっ」
「謝るなら、抱いて。意識を失うくらい激しく抱いて」
「ああ、ああ、そうする」
　ここのところ忙しかった隆二、そして妊娠したと思い込んでいた爽。二人の違った思いから性交をしてこなかった。しかし、もういいと爽は笑った。胎に気を遣う必要はない。
　――俺は今から愛している男に抱かれる。
　そして、愛してくれない男は爽を抱く。それでいい。ただ、抱いてもらえるなら、隆二が何を考えているかなんて爽にはもはやどうでもよかった。
　運命の男によって起こされたヒートで、愛してくれない男に抱かれる。
「りゅ、りゅうじっ、あん、あ、もう、挿いれて」
「すごい、濡れてるな」
「あん！」
　隆二の指が後孔に挿入はいってきた。いつもの指、この指しか後ろには侵入したことがない。あの男からはキスしか受けていない。まだ汚されていない。そう思い込みたかった。
　自分が隆二に差し出せるのは、この体だけ。せめて体だけは隆二しか知らない清い状態で差し出したかった。
「きもちいい、りゅうじの指、が、すきっ」
「加賀美に後ろ触られた？」
「キスしかしてな、んんんん!!‼」
　言葉の途中で、隆二に勢いよく唇を塞がれた。
「あ、んん、んちゅっ、ふっ、ん、りゅじ」
「爽、爽、爽！　あいつとのキス、気持ちよかったか？」
「りゅうじがいい、俺はりゅーじだけ」
「可愛いこと言ってくれるね」
「はっ、あ、あ、あ、ああああああ！」
　いきなり隆二のいきり勃たったものが挿入はいってきた。待ち望んでいた、車の中でもずっと欲しくて耐えていたモノ。
　隆二そのものが、柔らかく受け入れ体制の整った場所に一直線に最後まで突き刺さる。
「くっ、う、う、すごいっ」
「あ、あ、あ気持ちいい。隆二がきてるっ、あああ、あん！」
「動くぞ！」
「きて、つんつんして！　ああ大きいっ、擦れる」
　隆二が一度手前に引いてから、またガツンと入れ込んできた。目の前がちかちかするのに、奥はきゅんきゅんする。気持ちいい、これしかいらない、これだけが欲しい。
　――俺は、俺は、隆二という男しか欲しくないんだ！
　運命なんて、フェロモンだけの男なんて、欲しくない。爽は、心からいや、細胞全てで隆二だけを求めている。爽は隆二に溺れていたその時――
「爽、爽、愛してる」
　隆二の愛の言葉に、爽は違うとわかっていても嬉しかった。
「うそ、でも、うれしいっ、あん」
「嘘じゃない、本当に愛しているんだ、くっ、う」
　爽の中で隆二は達した。爽は、何度も何度も前も後ろも濡らして、息があがっていた。だけど、これだけは言いたい。
「はっ、はっ、はっ、じゃ、噛んで」
「今じゃない、次のヒートで噛むから」
「ううん。愛しているって言うなら、今噛んで。運命の男でヒートを起こしたオメガを、噛めるなら」
　爽はわざと挑発した。
　勢いでいいから、番つがいにしてほしかった。愛さなくてもいいから、冷静じゃない今、騙されて番つがいにしてほしい。
　どちらにしても、今後別れるにしても、爽はもう隆二以外の人は嫌だった。運命とキスをした。体は発情したけれど、どうしても隆二の熱い舌がいい。彼の心地いいキスしかもう経験したくなかった。
　――細胞ごと、俺を壊して……
　隆二以外を、求めないオメガにしてほしい。隆二だけを思って、生きていきたい。隆二への想いが、嘘から始まった関係が……いつの間にか真実に、本物になっていた。
　彼こそが爽の真実、爽のすべて、唯一のアルファ。
「噛めるよ、どんな状況でヒートになったかなんて関係ない。僕が今後噛むうなじは爽のうなじしかない。それはいつとかじゃなくて、爽がそうしたい時だ」
「あ、あんん、あああ、いま、いますぐっ！」
　隆二に揺さぶられて会話がままならないが、大好きなキスをしながら隆二に注いでほしかった。今番つがいにならなければだめだった。
　――うなじが好きでもない人に奪われる未来なんて、もういらない！
　好きだと自覚した今、たとえただの利害関係で爽を番つがいにしようとした男でも、もうどうでもいい。爽が愛しているのだから。番つがいにしたとたん捨てられてもいい、それでもこのうなじは隆二だけに捧げたい。
　その想いの強さが隆二に伝わったのかは爽にはわからなかったが、隆二は覚悟を決めたのか、無言で爽をうつぶせにした。中にはまだ挿入はいったまま。
「ああっ」
　隆二がうなじをペロっと舐めた。
「ふっ、ふあっ、んんん」
　何をされても爽はずっと彼を感じていた。
「爽、爽、イクよ」
「う、ん。りゅーじ、りゅじ、愛してる」
「爽、僕も、爽を、爽だけを一生かけて守っていく。愛してる」
　がぶっと、うなじを噛まれた瞬間、爽の体中を何かを巡った。
「あ、あああああああ！」
　変わる、自分が、全てが、鳥肌が立つ感覚。
　最奥に注がれる隆二の子種、うなじを舐める隆二の温度、隆二の吐息。
　全てが、鮮明に、耳に鼻に目の奥に、そして体の奥深くまで、彼の何もかもが爽に入り込む。
「隆二……」
　うなじを噛んだ瞬間は、一生に一度の幸せの絶頂と言われる。その通りで幸福感に包まれた爽の意識は、最大の幸せを掴んで途絶えた。