貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油

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第4章 学園編2

4.7 図書館通い①

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 エルレドルア領に戻った後、シルクヴィスクレア様とかあさまと話し合いランスターエルリックであることはこのまま封じることになった。
 クルスヴィスト領に戻り、秋が始まったころに学園に移動することになった。図書館で調べ物を始めるためだ。学生がいない時期の方が良いだろうと、この時期に調査をすることになった。
 冬の学園シーズンが始まる1週間前に一度領地に戻り、最後のお別れをした後で、再度王都に出発する。その後の住まいは王城となる。王都の部屋は傍系としてヴィルヘルム王子達と同じく離宮に入るのかと思っていたら、離宮は新婚のヴィルヘルム王子とキャサリンエリザ王女に為に部屋が一部改築され僕が入るスペースは無いそうだ。そして今後の事も考え王女達と同じく城に部屋が用意されている。1年ほど前から家具をそろえたり調度品が用意されていたそうだ。学園にいる間は今まで通り学園の寮に入るので王城の部屋を使うのは春になってからだ。
 その前に、領主会議の最初にヴィルヘルム王子とキャサリンエリザ王女、エイレーネアテナ様とお相手の領主候補の人との結婚式も行われる。

 家族と軽い別れをしてから王都へ移動した。もちろん学園の転移装置を使っている。強引な領地間の転移は、礎の魔術で検知ができるらしく、強制転移後にぞわっとした変な感触がするらしい。誰が転移してきたのかわからないので、緊急時以外の転移は継続となった。
 秋の間は学園の寮に入り、毎日図書館へと通う。ヴィルヘルム王子やキャサリンエリザ王女、偶にジェーンレオノール王女も来ることになっている。
 初日は、ヴィルヘルム王子、キャサリンエリザ王女、ジェーンレオノール王女がそろって図書館の領主候補生しか入れない部屋へと移動した。
 魔力量の制限なのか、メダルの登録なのか上級貴族は入ることが出来なかった。
 一度中に入った王子が出てきて中の様子を伝えてくれた。
「少し魔力を奪われるようだ。危険は無い。写せる紙は一人1枚らしい。皆で入ろう」
 続いて僕らも中に入った。魔力が吸われる感覚はわからなかったが、ステータスを確認すると少しだけ魔力が減っていた。
 中に入ると金色ウサギが立っていた。2本足で立ち、黒い服を着ていた。
「ここの本は持ち出せない。書き留めた紙は1人1枚しか持ち出せない。どの紙を持ち出すか最初に見せろ」
 ヴィルヘルム王子がアイテムボックスから紙を4枚取り出した。ウサギさんが確認した後で王子が僕らに渡してくれた。
 どうやって紙を認識していたのだろうか。こんな閉鎖空間にいるのだから生物ではなく魔道具なのだろう。
「このウサギさんは魔道具でしょうか?」
「そうでしょうね。ちょっと驚きましたが似たような魔道具はかつて王城で動いていたそうなのでかなり古い魔道具でしょうね」
「かわいいですね」
キャサリンエリザ様と、ジェーンレオノール様が2人でつぶやいている。
 魔道具が見極めているなら魔力で感知しているのだろうか。もしかしたらステラリア領で作られた植物紙は昔なかった新しい紙だからもしかしたらこれなら持ち出せるかも知れない。
「これもだめですか?」
 ダメもとでウサギさんに見せてみた。
「魔力無い。それが何かわからない」
 つまり、平民が作った魔力をほとんど含まない紙は持ち出し可能と言う事か。
「ヴィルヘルム王子、羊皮紙に含まれる魔力で紙を判断しているようです。魔力を含まないステラリア領の新しい紙とクルスヴィスト領で作ったインクで書けば1枚に含まれないのかもしれません。後で試してみます」
「ああ、扉をくぐるたびに魔力を奪われるようだから1枚ずつしか書き写せないと困るな。数枚書ければその方が良い」
「どんな本を読みたい、言えば出す」
 おお、このウサギさんは検索機能を持っているのか。何気にすごいなこのウサギさん。
「では、魂の不足を埋める資料を読みたい。後は神の書を手に入れるための手順を書いた資料を頼む」
「手順はここ。細かい説明はここ。魂の不足はここ」
 おお、あるんだ。
「では皆で分担して読もうか」
 本と言うか、石板、鉄板と言うべきなのか、B5サイズで厚さ2mm程度。日本語が刻まれてインクが埋め込まれている。他にも羊皮紙で書かれてた資料があり、羊皮紙は今の言葉に近い言葉だ。少し記述が古くて言い回しが異なるが読めなくはない。
「石板は無理だな。僕らは羊皮紙を優先して写本しよう」
 僕は魂を増やす方法を読んでみる。石板には転生前の記憶と現在のこちらで思い出を作る事、恋をするのが一番と書かれていた。おいおい、前世の記憶もないし、恋もしたことないぞ。それに、転生者以外はだめじゃないか。
 つづいて羊皮紙を読む。魔力枯渇した経験のある者が魂の不足を補ったことがあると書かれていた。他にも恋をすること、生活を楽しむ、剣に没頭する、魔法を突き詰めるなどことなどが効果的と書かれ、それに対する効果の数値が書かれていた。あれ、もしかして魂の量を測る魔道具があって、この資料はそれを元に書いているのか。
「ウサギさん、魂の量を測る魔道具の作り方があるかな」
「ゴールドと呼ばれている。魔道具はこのあたり、どれかわからない」
 うわ、魔道具の作り方は巻物になっているらしい。一つの巻物が直系50㎝ほどの塊じゃないか。これ写せるのか?
 一つを手に取って読んでみる。絵付きで解説されているとても詳しい資料だ。この巻物は魔力量を測る魔道具のようだ。
 とりあえず、棚一つから1冊づつ石板を取り出し日本語を読んで何の系統が書かれているか確認した。神の書を取る方法だけではなく、神具の作り方や神事について、その舞台の作り方や魔法陣の解説など今の王族に失われた技術の大半は日本語で書かれていた。
 初日で大方の量を把握できた。神の書を取る方法は羊皮紙に書かれた資料が多く、言い回しは古いが読めなくはない。それらは普通の写本すれば済む。それはヴィルヘルム王子達が写本してくれ、僕は石板を中心に写本する。残念ながら魔道具の巻物や古い神事について書かれた内容は石板ばかりで翻訳を頑張るしかない。巻物の絵は第5王女のジェーンレオノール様が手伝ってくれるそうだ。
「第6王女のアデリートメアリー様は手伝えないのですか?」
 僕が居るのだから、年齢的には問題ないと思うのだが。
「あの子は、アダマンジャルン領の領主候補生と婚約して降嫁する事が決まりました。今の王族とのつながりの無い大領地アダマンジャルン領との関係改善を優先したのです。私がここにいるのは、私の後ろ盾になっているシルヴィスト領が貴方の後見になることを決めたからです。今度の領主会議で私が貴方の婚約者に、アデリートメアリー様はアダマンジャルン領の領主候補生との婚約が発表される予定です」
「え、そうなんですか。何も聞いてないけど」
 いつの間に僕の婚約者が決定したのだろうか。そうおもってジェーンレオノール様を振り返った。
「予定の期限になっても貴方から特に希望が無かったと聞いています。ですから上位領主と陛下がお決めになったのですよ」
 答えてくれたのは姉のキャサリンエリザ様だった。
「そうですか、教えて下ってありがとうございます。キャサリンエリザ様」
 その後もキャサリンエリザ様が教えてくれた。
「元々、今の王の子が全て女子でしたから王子を迎え入れることになる事はわかっていました。新しい王は今の王の子と結ばれる必要がありますので、今の政権を支える大領地全てと婚姻と言う形で繋がる事はできない事はわかっていました。クライスバーク領は、私がヴィルヘルム王子に嫁ぐことで次代でもつながりを確保したつもりだったようですが、急に王太子候補が変わりましたからあわてていました。特に貴方の領地に第2夫人の子であるクリスティーナレオノール様が降嫁しさらに第2夫人の子であるジェーンレオノール様が嫁となることでシルヴィスト領との関係が強まる事を警戒しました。ですが一通りの調整が終わったようです。シルヴィスト領とクライスバーク領の領主候補生の相互婚姻も予定されましたのでクライスバーク領もクレストリア様の後見となる事がきまりました。第2位のアダマンジャルン領にも王女を降嫁させることで王家とのつながりもできました、エルレドルア領、ステラリア領も貴方の後見となる意志を表明したので今年の領主会議ですべてが発表されるはずです」
「そうですか、ありがとうございます。ヴィルヘルム王子」
「最後に、第7王女のカトリーヌメアリー様を貴方の第2夫人ですから忘れないようにしてください」
 先ほど自分が婚約者だと言った口で妹も第2夫人だと言われたので驚いた。第5王女のちょっとつんつんする表現は相変わらずだった。
「本当は陛下から話をするのが本来だが、準備に忙しいらしくてね。ここに私達しかいないので調べ物をする間にあらかじめ話しておいて欲しいと陛下に頼まれてね。おそらくし夜会に呼ばれた時に陛下から直接言葉があるはずだ。確認したいと事があればその時に聞いておくと良い」
「はい」
 最後はヴィルヘルム王子が締めてくれた。

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