社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし

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第2章

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「……離してくれ……」

その言葉に、レイの表情が大きく揺れる。険しさの中に、苦しみと迷いが入り混じった。

「カイル……」

レイが俺の名を呼ぶ声は、どこか迷子のようだった。
それが、逆に胸を締め付ける。

「俺がいるのは、結界のためだろ……?」

自分で口にしたその言葉に、自分でも驚いた。思ってもいなかった言葉だったのかもしれない。でも、一度口から出てしまえば、押し込めることなんてできなかった。

「結界を守るために俺が必要だから、好きだって言ったんじゃないのか?俺がいないとダメだって、あれも全部……」

レイの手が一瞬だけ緩む。その瞬間に俺の中の絶望が押し寄せた。

「……俺は、結界を保つための道具だった……?」

言葉に震えが混じる。
聞いたそばから後悔が押し寄せる。これで肯定されたらどうするんだろうな、俺。
けれどレイは、俺の声に頭を振った。

「違う……!」

声は低く、けれど確かに震えていた。レイの瞳が俺を見つめる。
その中には怒りや困惑、そして何より深い悲しみがあった。

「違うんだ、カイル。お前が必要なのは、結界のためだけじゃない……!」

俺を抱く手が、少しだけ強くなる。その熱が布を通しても伝わってくる。

「結界なんて、ただの理由だ。俺が、お前を……お前だけを……」

レイの言葉が詰まる。そこに込められた感情の重さに、息を呑んだ。

「お前がいないと、俺は……!」

その言葉に、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
けれど、まだ信じきることができない。

「……でも、結界があるから俺を必要としてるんだろ?」

自分でも意地を張っていると分かっていた。
それでも、不安や恐怖が消えるわけじゃなかった。

「お前が言う“俺”ってのは……結界の“鍵”のことだろ……?」

レイの表情が痛みに歪む。それでも、彼は視線を逸らさず、俺を見つめ続ける。

「違う……!俺が欲しいのは、カイル、お前だ」

その言葉が胸に刺さる。けれど、それを信じる勇気が俺にはなかった。

「……信じられない……何も……」

声が震え、視界が滲む。俺はレイの手を振り払おうとしたが、彼の力がそれを許さない。

「なら、俺の言葉じゃなく、俺の全部で証明する」

レイが低く呟くように言った。その声が、俺の胸に響く。俺を見つめる瞳には、迷いも偽りもなかった。けれど、それを信じたい気持ちと信じるのが怖い気持ちが胸の中でせめぎ合う。

「証明って……どうやって……」

俺が呟くように尋ねると、レイは少しだけ目を細め、俺の頬に手を伸ばした。その手が触れると同時に、ほんの僅かに震えているのが伝わる。

「お前が信じるまで、俺は何度でも証明する」

低く、けれど熱を帯びたその声に、胸がきゅっと締め付けられた。

「お前がここを離れたいと思ったのは、俺が全部間違ってたからだ。でも、俺にはお前が必要だ……。だから、お前が俺を拒絶しても、俺は諦めない」

レイの言葉は真っ直ぐで、その分だけ重かった。それでも、俺の中の不安や恐怖が一気に消えるわけじゃない。

「……お前が必要って、それだって嘘かもしれない……。レイは俺を好きだって言いながら……いっつも遠くにいる……!」

レイの眉間に一瞬だけ深い皺が刻まれる。だけど、すぐにそれを押し隠して、俺を静かに見つめる。

「遠くにいたのは……お前を守るためだ」
「守るため……?」

俺が問い返すと、レイは深く息を吐いた。

「……アランがどこまで企んでいるか、泳がせる必要があった。でも、お前には言えなかった。お前は嘘が苦手だ。動揺すればアランに見透かされる危険があった」

領主としての判断はきっとそれで正しいのだろう。
俺はその伴侶だ。それを受け入れないといけないのはわかる。
俺に考えが足りなかったのだろうとも、今になれば理解ができた。
でも、俺はずっと孤独だった……どうしても記憶から拭えないあの時間。

「じゃあ……俺がこうなるまで、お前はずっと黙ってるつもりだったのか?」
「……俺が愚かだった。違う方法を考えるべきだった」

レイが苦しげに答える。
その言葉に、胸の中で少しずつ氷が溶けるような感覚が広がる。

「でも、今こうしてお前を抱きしめているのは、結界や計画のためじゃない」

レイが俺を抱く腕に力を入れる。
俺は抵抗しようとしたけれど、彼の力は思った以上に強くて、抗えなかった。

「お前がいないと、俺は……俺は壊れるんだ」

その言葉が、俺の胸に落ちてくる。涙がまた溢れてくる。

「……壊れるって……俺がいないだけで?」
「そうだ。お前が必要なんだ、カイル。お前の笑顔も、怒りも、悲しみも……全部」

その言葉に、俺の中で絡み合っていた感情が一気にほどけるような感覚がした。

「……本当に?」
「本当にだ」

レイが強く頷く。その真剣な瞳を見つめるうちに、俺の胸の奥が少しずつ温かくなっていく。

「俺、信じていいのか……?」

小さな声で問うと、レイは優しく俺の頬を撫でた。

「信じろ。お前を裏切るようなことは、もう二度としない」

その言葉に、俺は静かに頷いた。
そして、震える手でそっとレイの手を覆う――確かに、その手は温かかった。
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