社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし

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第2章

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王宮の庭園から拝借(?)した秘薬のおかげで、俺の体調は幾分か回復した。
以前ほどの倦怠感やふらつきはなくなり、普通に歩ける程度にはなった。
……とはいえ、完全に万全というわけではない。
レイや伯母上、そして母上が交互に監視してくるせいで、以前よりもさらに行動が制限されている。

「少しは休み休み動くことだな」

レイに言われるたびに、俺は「わかってる」と頷く。
正直なところ、まだ体が思うように動かないのはもどかしい。
けれど、無理をすればレイたちがどれほど心配するかもわかっている。

——だからこそ、焦らずに動かなければならない。

今、王都の裏では何が起こっているのか。
王宮の裁定が下されて数日が経つが、隣国の動きが活発になってきているのは間違いない。
そして、俺たちがまだ狙われている可能性も高い。

「……カイル、大丈夫か?」

レイが俺の様子を窺うように声をかける。

「うん。だいぶ楽になったよ」

俺がそう答えると、レイは微かに眉をひそめた。

「ならいいが……」
「でも、さすがにまだ動き回るのはやめなさいよ?」

伯母上が俺の隣で腕を組みながら睨む。
その表情はいつものように厳しいが、その奥に深い心配が透けて見える。

「わかってるってば」

そう言うと、伯母上は「本当にわかっているのかしらね」とため息をつく。

「まあ、体調が回復しているのなら、いずれ王宮でまた呼ばれるでしょうね」
「え、また……?」
「もう何度も王宮に行ってる気がするんだけど……」
「当たり前でしょう?カイル、あなたはフランベルク領主の伴侶”なのよ?」

伯母上が当然のように言う。

「それに、今回の一件で王都の貴族たちの間でもあなたの名前がさらに広まったわ。隣国に狙われ、王宮でも重要人物として認識されている以上、これからはさらに気をつけなきゃいけないわね」

「……ふぅ」

俺は小さく息を吐く。

「そうだな……」

王宮の動きが活発化しているのは間違いない。
俺たちが滞在している間も、騎士団の警備が増し、要人たちが頻繁に会合を開いていると聞く。
そして、それと同時に——王都のどこかで、隣国の間者たちが潜んでいることも事実。
俺たちは、王宮から目をつけられると同時に、敵からも見られているのかもしれない——。



翌日、俺たちは王都の中心街へ向かった。
目的は、市井の情報を集めるため。
貴族の間だけではなく、一般市民の間でも何か噂が流れている可能性がある。
レイと共に、目立たぬように簡単な外套を羽織り、街へ出ることにした。

「カイル、無理をするなよ」

レイが俺の腰を軽く支えながら、警戒するように周囲を見渡す。
騎士団の巡回が増えているせいか、街の空気もどこか張り詰めていた。

「……少し物々しいな」
「王宮の動きが厳しくなっている証拠だな」

市場では商人たちがいつも通り商売をしているものの、どこか落ち着かない様子の者も多い。
ちらほらと、「最近騎士団の取り締まりが厳しくなった」「王宮の貴族たちの動きが慌ただしい」などの噂が聞こえてくる。

「やっぱり……何かあるんだな」
「そうだな」

レイと共に歩きながら、さらに情報を探る。
だが、その時——

「……っ」

ふと、視線を感じた。
市場の雑踏の中。
俺たちのいる場所から少し離れた路地。
誰かが、こちらを見ている。

「レイ……」

俺が小声で囁くと、レイもすぐに気づいたようだった。

「……気づいたか」

レイの表情が鋭くなる。
俺たちのすぐ近くで、男がじっとこちらを伺っていた。
身なりは普通の市民のように見えるが、その動きには違和感がある。

「間者か?」
「可能性は高いな」

そう言い合った瞬間、男が動いた。
すっと背を向け、市場の人混みに紛れ込む。

「逃げる気だ」
「……追う?」

レイは一瞬迷うような表情をしたが、すぐに決断した。

「追うぞ。しかし、無理はするなよ……!」
「わかった!」

俺たちは急いでその後を追った。
男は王都の路地裏へと逃げ込んでいく。
だが、俺たちは王都の地理を知っている。

「こっちから回り込む!」

レイが別の路地へ入り、俺はそのまま男を追いかける。

「待て!」

だが、男は逃げ足が速かった。
それだけではなく、俺たちが追ってくることを予想していたかのような動きを見せる。

(……待てよ?)

俺の胸に、一抹の不安がよぎる。

——これは、罠かもしれない。

「レイ……!気をつけろ……!」
「っ!」

俺の声に反応するように、レイがすぐに剣を構える。

——次の瞬間。

路地の奥から、別の影が動いた。

「ちっ、やっぱりか……!」

俺たちは囲まれていた。
三人の男たちが俺とレイの前に現れる。
明らかに一般市民ではない。
身軽な装束に、隠し持った短剣。
——間違いない。隣国の間者だ。

「……どうする?」

俺が小声で問うと、レイは低く答える。

「やるしかないな」

間者たちは、静かに俺たちを囲んでいく。

「お前たちがカイル・エルステッドか」

その中の一人が、抑えた声で言った。

「……さて、どうかな」

俺が挑発するように笑うと、男はニヤリと口元を歪めた。

「……まあ、どちらでもいい。お前には“静かに”してもらうことになるがな」

間者たちが、一斉に武器を構えた——。
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