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32、交じり合う熱
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竜の背に揺られながら、エリオットはシグルドの胸にそっと顔を預けていた。
熱を持った身体はまだ火照っている。けれど、不思議と不安はなかった。
脈打つ心臓の音が、ぬくもりごと自分を包み込んでくれている。
しばらくして、竜がひとつ嘶く。
その翼が地を滑るように着地し、ふたりを運んだのは王都から離れた森の奥。
人目に触れることのない、石造りの離れの館だった。
シグルドはエリオットをそっと降ろし、扉を開ける。
誰もいない静かな空間。暖炉には既に火が灯されていて、空気を優しく温めていた。
「……ここは?」
「私の秘密の離れだ。……誰にも邪魔はされない」
その言葉に、エリオットは小さく笑った。
「本当に、攫っていきますね」
「……違う」
シグルドは、そっと振り返り、彼の手を取った。
「君が“選んだ”から、ここにいる。そうだろう?攫うならさっさとアルヴィオンから連れてきている」
その言葉に、エリオットの喉が小さく震えた。
逃げ場所でも、鎖でもない。
今ここにいるのは、意志による選択の結果だということ。
それが、何より嬉しかった。
静かな寝室に案内される。
カーテン越しの月明かりが、床に長く伸びていた。
部屋に入るなり、シグルドがそっとエリオットの肩に触れる。
手のひらは熱く、ゆっくりと彼の髪を撫でた。
「……熱はどうだ?」
「……少し。多分、このまま……」
発情期が始まる気がする。けれど、それは言わなかった。
恐らくシグルドも気付いているからこそ、ここに連れてきたのだろう。
「無理はするな……私はまだ、待てる」
「……したいんです。今だけは、あなたに“触れて”いたい」
「……エリオット」
名前を呼ぶ声が低く沈み、室内の空気がわずかに震えた。
シグルドの手が、エリオットの頬をそっと包み込む。
視線が絡み合う。
そこにあるのは、欲望ではなく、焦がれるような願い。
そして、ゆっくりと唇が重なった。
最初はそっと。
確かめるような、やさしい口づけだった。
けれど、重ねるたびに熱を帯びていく。
呼吸が混ざり、舌先が触れ合うと、エリオットの肩が小さく震えた。
「……もっと、深く……触れて」
彼の声は、月に溶けるようにかすれていた。
シグルドの指が、衣の襟元にかかる。
ゆっくりと、慎重に、ボタンが外されていく。
そのたびに、白い肌が露になる。
「……君は、ずっと、こんなにも……」
胸元、肩先、喉元。
唇と指先が、慎重に、何度も確かめるように触れていく。
エリオットは目を閉じ、全身で受け止めた。
服のすれ音、肌の擦れる音が、やけに耳に残る。
「……陛下、もう……」
薄らと目を開けると、シグルドの目が自分の全てを見ていた。
その視線が気恥ずかしく、エリオットが首を振る。
「……今の君を、全部、見ていたい。それに……名前で呼んでくれ」
エリオットは熱くなった息を緩く吐き出すと、片手を上げてシグルドの頬を指先で撫でた。
「シグルド……」
その一言が、堰を切った。
また唇がふさがれる。
シグルドのキスは、次第に激しさを帯びていく。
頭の芯がぼうっとなるような感覚を味わいながら、エリオットは必死で呼吸を繰り返した。
背中に回された腕が、エリオットの身体を深く引き寄せる。
唇が離れれば、今度は首筋に触れる。
舌が、肌をなぞるたびに、エリオットの声が喉の奥で震えた。
「……っあ……」
熱が、じくじくと下腹に降りてくるのがわかる。
シーツの上に押し倒され、腰にかかる手の重みがゆっくりと動いた。
指先が腿を撫で、内ももを這い、奥へと進む。
すると、エリオットの脚が小さく跳ねた。
息が、熱く、甘く洩れる。
「……シグ、ルド……だめ、あんまり……」
「我慢するな。……感じていい。……ここに、君は“いていい”んだ」
その言葉は、すべてを赦す呪文だった。
やがて、下腹部に触れた指が慎重に形をなぞり、奥へと熱を広げていく。
準備のためにと慎重に進められる前戯。
けれど、その指はどこまでも執着に満ちていた。
逃さないように、でも壊さないように。
「っ……あっ……ぁ……」
エリオットの細い声が、何度も上がる。
身体はもう、どこも熱に溶けていた。
羞恥も、言葉も、すべてが曖昧になっていく。
「……もう、いい……シグルド……あなたの、ものに……」
懇願の声が、シグルドの胸を深く打った。
彼はゆっくりと、彼の中へと踏み込んでいく。
交わる感触。肉と肉が繋がると、その熱さで魂まで繋がるようだった。
二人の熱が絡み合い、完全に“ひとつ”になった。
「……っ、は、ぁ……」
「……大丈夫だ。……痛くないようにするから」
腰が、ゆっくりと動き出す。
深く、慎重に、けれど確かに、求め合うように。
シーツが軋み、エリオットの腕がシグルドの逞しい首に回される。
「……シグルド、好き……ずっと、あなたが……」
「……私も、君を、何があっても……」
言葉が途切れる。
ただ、互いの名を何度も呼び合いながら、繋がりを深めていく。
幾度も交わされたキスと、触れ合い。
こんな甘い時間をどれだけ切望しただろうか。
蕩け合って、交じり合う。
やがて、絶頂がふたりを包む。
シグルドが最後まで満たし、ゆっくりと体を預けたとき、
エリオットはその胸の中で、そっと囁いた。
「これでようやく……“今”のあなたと……」
「……そうだ。君が選んだ私を。漸く、君に触れられた……」
言葉が終わっても、抱き合ったまま、離れようとはしなかった。
互いの鼓動が静まっていく中で、エリオットはシグルドの腕の中に身を預けていた。
肌に残る熱、耳元で囁かれるような静かな呼吸。
自身に残るのは心地よい疲労感。
すべてが、もう一度生まれなおしたような、優しい安堵に満ちていた。
「……このまま、眠ってしまいそうです……」
「まだだ。ひとつ、忘れていることがある」
シグルドの声が、低く落ちた。
エリオットがゆっくりと顔を上げる。
その目は、微かに潤んでいた。
「……なに、を……」
「君が、私を“番として選んだ”なら——」
シグルドはそっと、エリオットの首筋へと手を添える。
「——その証を、君に刻ませてほしい」
言葉は柔らかい。けれど、揺るぎのない願いだった。
エリオットは小さく息を呑んだ。
首元にかけられた銀のペンダントが、微かに揺れる。
(……僕は、もう……)
逃げる理由も、拒む理由もなかった。
そこにあるのはただ、選んだ“愛”の証を受け止める覚悟だけだった。
エリオットは目を閉じ首を傾けて、そっとうなじを差し出す。
シーツの中で、白い首筋が月明かりに照らされる。
「……あなたに刻まれるなら……僕は、もう……迷いません」
その一言に、シグルドの喉が小さく鳴った。
「……エリオット」
低く、押し殺すような声とともに、
シグルドはそっと首筋に唇を寄せ——
そのまま、静かに、確かに——歯を食い込ませた。
痛みは、ほとんどなかった。
熱く、けれど優しい牙の痕が、肌に刻まれていく。
まるで祝福のように、そこからじんわりと温もりが広がる。
ふたりの香りが重なり、混じり合い、もう分けられなくなっていく。
「これで、漸く……もう、どこにも行くな、エリオット」
「……ええ。もう、離れません」
夜はまだ深く、窓の外では静かに風が吹いていた。
けれど、その静寂の中で、たしかに一つの絆が結ばれた。
——ようやく、ふたりは本当の意味で“番”になったのだった。
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✨今後の更新予定✨
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熱を持った身体はまだ火照っている。けれど、不思議と不安はなかった。
脈打つ心臓の音が、ぬくもりごと自分を包み込んでくれている。
しばらくして、竜がひとつ嘶く。
その翼が地を滑るように着地し、ふたりを運んだのは王都から離れた森の奥。
人目に触れることのない、石造りの離れの館だった。
シグルドはエリオットをそっと降ろし、扉を開ける。
誰もいない静かな空間。暖炉には既に火が灯されていて、空気を優しく温めていた。
「……ここは?」
「私の秘密の離れだ。……誰にも邪魔はされない」
その言葉に、エリオットは小さく笑った。
「本当に、攫っていきますね」
「……違う」
シグルドは、そっと振り返り、彼の手を取った。
「君が“選んだ”から、ここにいる。そうだろう?攫うならさっさとアルヴィオンから連れてきている」
その言葉に、エリオットの喉が小さく震えた。
逃げ場所でも、鎖でもない。
今ここにいるのは、意志による選択の結果だということ。
それが、何より嬉しかった。
静かな寝室に案内される。
カーテン越しの月明かりが、床に長く伸びていた。
部屋に入るなり、シグルドがそっとエリオットの肩に触れる。
手のひらは熱く、ゆっくりと彼の髪を撫でた。
「……熱はどうだ?」
「……少し。多分、このまま……」
発情期が始まる気がする。けれど、それは言わなかった。
恐らくシグルドも気付いているからこそ、ここに連れてきたのだろう。
「無理はするな……私はまだ、待てる」
「……したいんです。今だけは、あなたに“触れて”いたい」
「……エリオット」
名前を呼ぶ声が低く沈み、室内の空気がわずかに震えた。
シグルドの手が、エリオットの頬をそっと包み込む。
視線が絡み合う。
そこにあるのは、欲望ではなく、焦がれるような願い。
そして、ゆっくりと唇が重なった。
最初はそっと。
確かめるような、やさしい口づけだった。
けれど、重ねるたびに熱を帯びていく。
呼吸が混ざり、舌先が触れ合うと、エリオットの肩が小さく震えた。
「……もっと、深く……触れて」
彼の声は、月に溶けるようにかすれていた。
シグルドの指が、衣の襟元にかかる。
ゆっくりと、慎重に、ボタンが外されていく。
そのたびに、白い肌が露になる。
「……君は、ずっと、こんなにも……」
胸元、肩先、喉元。
唇と指先が、慎重に、何度も確かめるように触れていく。
エリオットは目を閉じ、全身で受け止めた。
服のすれ音、肌の擦れる音が、やけに耳に残る。
「……陛下、もう……」
薄らと目を開けると、シグルドの目が自分の全てを見ていた。
その視線が気恥ずかしく、エリオットが首を振る。
「……今の君を、全部、見ていたい。それに……名前で呼んでくれ」
エリオットは熱くなった息を緩く吐き出すと、片手を上げてシグルドの頬を指先で撫でた。
「シグルド……」
その一言が、堰を切った。
また唇がふさがれる。
シグルドのキスは、次第に激しさを帯びていく。
頭の芯がぼうっとなるような感覚を味わいながら、エリオットは必死で呼吸を繰り返した。
背中に回された腕が、エリオットの身体を深く引き寄せる。
唇が離れれば、今度は首筋に触れる。
舌が、肌をなぞるたびに、エリオットの声が喉の奥で震えた。
「……っあ……」
熱が、じくじくと下腹に降りてくるのがわかる。
シーツの上に押し倒され、腰にかかる手の重みがゆっくりと動いた。
指先が腿を撫で、内ももを這い、奥へと進む。
すると、エリオットの脚が小さく跳ねた。
息が、熱く、甘く洩れる。
「……シグ、ルド……だめ、あんまり……」
「我慢するな。……感じていい。……ここに、君は“いていい”んだ」
その言葉は、すべてを赦す呪文だった。
やがて、下腹部に触れた指が慎重に形をなぞり、奥へと熱を広げていく。
準備のためにと慎重に進められる前戯。
けれど、その指はどこまでも執着に満ちていた。
逃さないように、でも壊さないように。
「っ……あっ……ぁ……」
エリオットの細い声が、何度も上がる。
身体はもう、どこも熱に溶けていた。
羞恥も、言葉も、すべてが曖昧になっていく。
「……もう、いい……シグルド……あなたの、ものに……」
懇願の声が、シグルドの胸を深く打った。
彼はゆっくりと、彼の中へと踏み込んでいく。
交わる感触。肉と肉が繋がると、その熱さで魂まで繋がるようだった。
二人の熱が絡み合い、完全に“ひとつ”になった。
「……っ、は、ぁ……」
「……大丈夫だ。……痛くないようにするから」
腰が、ゆっくりと動き出す。
深く、慎重に、けれど確かに、求め合うように。
シーツが軋み、エリオットの腕がシグルドの逞しい首に回される。
「……シグルド、好き……ずっと、あなたが……」
「……私も、君を、何があっても……」
言葉が途切れる。
ただ、互いの名を何度も呼び合いながら、繋がりを深めていく。
幾度も交わされたキスと、触れ合い。
こんな甘い時間をどれだけ切望しただろうか。
蕩け合って、交じり合う。
やがて、絶頂がふたりを包む。
シグルドが最後まで満たし、ゆっくりと体を預けたとき、
エリオットはその胸の中で、そっと囁いた。
「これでようやく……“今”のあなたと……」
「……そうだ。君が選んだ私を。漸く、君に触れられた……」
言葉が終わっても、抱き合ったまま、離れようとはしなかった。
互いの鼓動が静まっていく中で、エリオットはシグルドの腕の中に身を預けていた。
肌に残る熱、耳元で囁かれるような静かな呼吸。
自身に残るのは心地よい疲労感。
すべてが、もう一度生まれなおしたような、優しい安堵に満ちていた。
「……このまま、眠ってしまいそうです……」
「まだだ。ひとつ、忘れていることがある」
シグルドの声が、低く落ちた。
エリオットがゆっくりと顔を上げる。
その目は、微かに潤んでいた。
「……なに、を……」
「君が、私を“番として選んだ”なら——」
シグルドはそっと、エリオットの首筋へと手を添える。
「——その証を、君に刻ませてほしい」
言葉は柔らかい。けれど、揺るぎのない願いだった。
エリオットは小さく息を呑んだ。
首元にかけられた銀のペンダントが、微かに揺れる。
(……僕は、もう……)
逃げる理由も、拒む理由もなかった。
そこにあるのはただ、選んだ“愛”の証を受け止める覚悟だけだった。
エリオットは目を閉じ首を傾けて、そっとうなじを差し出す。
シーツの中で、白い首筋が月明かりに照らされる。
「……あなたに刻まれるなら……僕は、もう……迷いません」
その一言に、シグルドの喉が小さく鳴った。
「……エリオット」
低く、押し殺すような声とともに、
シグルドはそっと首筋に唇を寄せ——
そのまま、静かに、確かに——歯を食い込ませた。
痛みは、ほとんどなかった。
熱く、けれど優しい牙の痕が、肌に刻まれていく。
まるで祝福のように、そこからじんわりと温もりが広がる。
ふたりの香りが重なり、混じり合い、もう分けられなくなっていく。
「これで、漸く……もう、どこにも行くな、エリオット」
「……ええ。もう、離れません」
夜はまだ深く、窓の外では静かに風が吹いていた。
けれど、その静寂の中で、たしかに一つの絆が結ばれた。
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