アルファの双子王子に溺愛されて、蕩けるオメガの僕

そしていつもの朝が始まる

朝の光が、薄いカーテンを透かして差し込む。
風が肌を撫でるたび、誰かの指がそこにいるような気がした。

目を開けると、見慣れた天蓋の模様。
王宮で僕に与えられた部屋だ。
ぼんやりと眺めながら、頭の奥がじんわりと痛む。

夢を見ていた気がする。
長い夢を──誰かに呼ばれ、誰かに触れられ、名前を何度も囁かれたような。そんな夢。

起き上がろうとした瞬間、
腰の奥に鈍い熱が残っていることに気づく。

「……ぁ」

指先で触れると、そこには薄く残る痕。
紅い印がいくつも、まるで花のあとみたいに散っていた。

(アルセイン殿下？それともシリオン……？)

誰のものかなんて、もうわからなかった。

ベッド脇には、見慣れた白衣と瓶。
そのラベルには、淡い筆致で「安定剤」とだけ記されている。
けれど、瓶の中の液体はいつもの色ではなく、淡い藤色をしていた。

胸の奥が、少しだけざわつく。

――でも、考えたところで、答えは出ない。

(そう……どちらかでしかないなら、気にしてもきっと仕方ない……)

僕は、いつものように肩までかかった髪をまとめた。
鏡の中の自分は、どこも変わっていない。
銀の髪に青い瞳。
けれど、どこかが確かに違っている。

「……行かなくちゃ」

小さくそう呟いて、
扉を開く。

外の光が眩しかった。
いつもと同じ王宮の朝。
けれど、背後の寝台に残る影だけが、ほんのわずかに、形を歪めていた。