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第2話『死後は突然に』
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「すっげぇ寝るじゃん、この子……魂が疲弊しすぎでしょ……おーい、おーい、そろそろ時間がまずいよー」
誰かの声が聞こえる。
女の人っぽいような……。
「おーい、大丈夫?」
再度声が聞こえて、僕は目を開けた。
そこは、真っ白な世界で――見覚えのない景色。どうやら寝ていたようだ。
「……どこ……?」
「あ。起きた。ねぇ大丈夫?」
視界の中に、ひょこっとその人は入ってきた。
花冠をかぶり、服は景色と一緒で白い。金の髪が波打っていて、僕を覗きこむ瞳は翠色だ。
随分と美しい人だな、と思った。
こんな格好……どこかで見たような……ああ、思い出した。
美術の教科書に出てきた、あれだ。神殿にいる人っぽいやつ。古代ローマ的なやつ。
「え、大丈夫だよね?」
もう一度その人は聞いた。
僕は瞬きを何回かして、起き上がる。
「えっと……?」
辺りを見回すが、やはり真っ白だ。
なんだここ。よくわから――
あ! 店!!
「あの!すみません! 僕、店に行かないと‼」
立ち上がろうとしたそのとき、その女性がスッと手を出し、制するように押さえた。
「いや、えーとね。君、死んじゃったから大丈夫」
――は?
なんとも気まずそうな笑顔で、信じられないことをサラッと言い放つ。
死ん……?
いや、僕は生きているような?
足元を見ると、体は透けていない。
服も、死に装束ではなくて、店を出たときと同じ――ワイシャツに灰色のスラックス。
「えーと……店は大丈夫ということでしょうか……」
「あー、まあ、そうだね。うん、大丈夫。それでね、話を進めるけど、いい?」
わけがわからないが、何かしら説明してくれるらしいので、僕はとりあえず頷いた。
「聞き分けが良くていいね、君。えーとね、まず私は女神ガイア。君たちが住む世界とは別次元というのかなー……まあ、そんなところで女神やってます」
……女神。
ガイアと名乗るその人は、軽く頭を下げてきた。
新手のコスプレじゃなさそうだが、頭を下げられると条件反射で下げ返してしまう悲しき性。
「半信半疑って感じとは思うけど……。でね、非常に、誠に、非常に遺憾な話なんですが……こちらの世界のあれこれを弄ってたら、ちょっと操作をミスってですね……君の世界に干渉してしまったみたいで……君を間違って殺してしまいました」
「え」
殺し……?
シリアルキラーって単語が一瞬浮かんで、思わず後ずさる。
ガイアさんは困ったように眉を下げ、片手で頭をかいた。
「いや、ええと……怖がらなくて大丈夫……と言っても、いきなりだと頭おかしい人だよねぇ……あーでも、ごめんね。ゆっくりと説明したいけど、時間がなくて。ちょっとこのまま説明するね」
「はぁ……」
「同じ世界で生き返らせるのはちょっと無理だったので、そっちの神様には話をつけて、君を魂ごとこちらに引き取ったんだよね。で、今からこっちの世界に君を下ろします」
「……下ろす?」
「ほんとはね、1から創造してあげたいんだけど、なんかいろいろと足りなくてさ。だから君を今までのまま下ろすんだけど、世界観が違うから、ちょっと酷かなーって」
つらつらと続く話は理解はできるけど、納得ができない。
自分に起きてることとは思えないような、どこか浮いた感じ。
でも、彼女は明らかに“時間がない”ようで、どんどん話を進めていく。
「2つ。君に能力を私からのギフトで授けます。何がいい?」
「へ?」
「ごめん、時間がなくて。なるべく早く決めてほしいのだけど……何がいい?」
いきなりそんなこと言われても……。
「ええと、とりあえず僕は今まで生きた場所とは違うとこにいくという感じで合ってます?」
「そうそう! 理解早くて助かる~!」
「そこは、言葉は通じますか……」
言葉。これは死活問題だ。
日本語すら伝わらない相手に苦労した経験があるからこそ、これは最優先だと判断した。
「え? いや、言語がまず違うからねぇ……」
「じゃあ、その世界のすべての言語を読み書きできるようにしてください。その世界が始まってから現在に至るまでの言葉を……!」
もし全部把握できれば、職にも困らないだろう。
ていうか、もうコンビニはしたくない……!
ガイアさんは「へぇ」と感心したように頷いた。
「着眼点が面白いね、君。1から創造出来たらもっと面白かったかもなぁ……いいよ、言語能力ね。あと1つは何がいい?」
「その世界ってどういう世界ですか? 僕が生きた世界と似ていますか?」
「んー……全く違うね。君たちの世界からすれば、ファンタジーっていうのかな? 魔法とかある感じ」
「魔法⁈ あれですかね……化け物とか出ます……?」
「出る出る。めっちゃ出る。局地的だけどね」
あ~、RPGだコレ。学生時代にやったヤツっぽい。
僕は運動神経がいい方ではないし、動くのは苦手。
……となれば、選択肢は「回復」一択か。
「では、回復力が欲しいです。他者と自分を回復できればいいんですけど……できます?」
「僧侶とか、そういう感じかな……癒しの魔法的なやつ?」
「魔法よりも早い方がいいですね。詠唱とかあったらややこしいので」
「変なところにこだわるね⁈ 即効性の回復力ねぇ……」
早口も苦手だし、詠唱してる間に敵にやられたら元も子もない。
自分も他人も、ささっと治せればいい。あとは、ちょっと稼げる能力なら……。
「あ、じゃあ舐めて治そう!こう、君の体液に癒し効果をつけ――」
ピピピピッ!
「――あ、時間だ!」
唐突に電子音が鳴り、ガイアさんが焦り始める。
ちょ、待って。
今、なんて言った? 舐めて治す……??
「え、舐めるんですか? え⁈」
「うんうん!そんな感じでいいと思う! とにかく、体液!体液!じゃあ、良い人生を!! ごめんねーーーー!あ!世界がオメガバースなんだよ!わっすれてた!」
……いやいやいや⁈
なんか変態っぽいスキルになってない⁈
「ちょっと待て体液ってどういうこと……!あと、オメ……なんて⁈」
「オメガバース! オメガバースの世界なんだよ!なんか、まあオメガにしとくね! 大事にされるし!」
女神のその一言と同時に、僕の意識は急速に遠のいていった。
暗転。
そして、場面は――冒頭に戻る。
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投稿は毎日8時・21時の2回です。
リアクションやコメントいただけると嬉しいです♪
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誰かの声が聞こえる。
女の人っぽいような……。
「おーい、大丈夫?」
再度声が聞こえて、僕は目を開けた。
そこは、真っ白な世界で――見覚えのない景色。どうやら寝ていたようだ。
「……どこ……?」
「あ。起きた。ねぇ大丈夫?」
視界の中に、ひょこっとその人は入ってきた。
花冠をかぶり、服は景色と一緒で白い。金の髪が波打っていて、僕を覗きこむ瞳は翠色だ。
随分と美しい人だな、と思った。
こんな格好……どこかで見たような……ああ、思い出した。
美術の教科書に出てきた、あれだ。神殿にいる人っぽいやつ。古代ローマ的なやつ。
「え、大丈夫だよね?」
もう一度その人は聞いた。
僕は瞬きを何回かして、起き上がる。
「えっと……?」
辺りを見回すが、やはり真っ白だ。
なんだここ。よくわから――
あ! 店!!
「あの!すみません! 僕、店に行かないと‼」
立ち上がろうとしたそのとき、その女性がスッと手を出し、制するように押さえた。
「いや、えーとね。君、死んじゃったから大丈夫」
――は?
なんとも気まずそうな笑顔で、信じられないことをサラッと言い放つ。
死ん……?
いや、僕は生きているような?
足元を見ると、体は透けていない。
服も、死に装束ではなくて、店を出たときと同じ――ワイシャツに灰色のスラックス。
「えーと……店は大丈夫ということでしょうか……」
「あー、まあ、そうだね。うん、大丈夫。それでね、話を進めるけど、いい?」
わけがわからないが、何かしら説明してくれるらしいので、僕はとりあえず頷いた。
「聞き分けが良くていいね、君。えーとね、まず私は女神ガイア。君たちが住む世界とは別次元というのかなー……まあ、そんなところで女神やってます」
……女神。
ガイアと名乗るその人は、軽く頭を下げてきた。
新手のコスプレじゃなさそうだが、頭を下げられると条件反射で下げ返してしまう悲しき性。
「半信半疑って感じとは思うけど……。でね、非常に、誠に、非常に遺憾な話なんですが……こちらの世界のあれこれを弄ってたら、ちょっと操作をミスってですね……君の世界に干渉してしまったみたいで……君を間違って殺してしまいました」
「え」
殺し……?
シリアルキラーって単語が一瞬浮かんで、思わず後ずさる。
ガイアさんは困ったように眉を下げ、片手で頭をかいた。
「いや、ええと……怖がらなくて大丈夫……と言っても、いきなりだと頭おかしい人だよねぇ……あーでも、ごめんね。ゆっくりと説明したいけど、時間がなくて。ちょっとこのまま説明するね」
「はぁ……」
「同じ世界で生き返らせるのはちょっと無理だったので、そっちの神様には話をつけて、君を魂ごとこちらに引き取ったんだよね。で、今からこっちの世界に君を下ろします」
「……下ろす?」
「ほんとはね、1から創造してあげたいんだけど、なんかいろいろと足りなくてさ。だから君を今までのまま下ろすんだけど、世界観が違うから、ちょっと酷かなーって」
つらつらと続く話は理解はできるけど、納得ができない。
自分に起きてることとは思えないような、どこか浮いた感じ。
でも、彼女は明らかに“時間がない”ようで、どんどん話を進めていく。
「2つ。君に能力を私からのギフトで授けます。何がいい?」
「へ?」
「ごめん、時間がなくて。なるべく早く決めてほしいのだけど……何がいい?」
いきなりそんなこと言われても……。
「ええと、とりあえず僕は今まで生きた場所とは違うとこにいくという感じで合ってます?」
「そうそう! 理解早くて助かる~!」
「そこは、言葉は通じますか……」
言葉。これは死活問題だ。
日本語すら伝わらない相手に苦労した経験があるからこそ、これは最優先だと判断した。
「え? いや、言語がまず違うからねぇ……」
「じゃあ、その世界のすべての言語を読み書きできるようにしてください。その世界が始まってから現在に至るまでの言葉を……!」
もし全部把握できれば、職にも困らないだろう。
ていうか、もうコンビニはしたくない……!
ガイアさんは「へぇ」と感心したように頷いた。
「着眼点が面白いね、君。1から創造出来たらもっと面白かったかもなぁ……いいよ、言語能力ね。あと1つは何がいい?」
「その世界ってどういう世界ですか? 僕が生きた世界と似ていますか?」
「んー……全く違うね。君たちの世界からすれば、ファンタジーっていうのかな? 魔法とかある感じ」
「魔法⁈ あれですかね……化け物とか出ます……?」
「出る出る。めっちゃ出る。局地的だけどね」
あ~、RPGだコレ。学生時代にやったヤツっぽい。
僕は運動神経がいい方ではないし、動くのは苦手。
……となれば、選択肢は「回復」一択か。
「では、回復力が欲しいです。他者と自分を回復できればいいんですけど……できます?」
「僧侶とか、そういう感じかな……癒しの魔法的なやつ?」
「魔法よりも早い方がいいですね。詠唱とかあったらややこしいので」
「変なところにこだわるね⁈ 即効性の回復力ねぇ……」
早口も苦手だし、詠唱してる間に敵にやられたら元も子もない。
自分も他人も、ささっと治せればいい。あとは、ちょっと稼げる能力なら……。
「あ、じゃあ舐めて治そう!こう、君の体液に癒し効果をつけ――」
ピピピピッ!
「――あ、時間だ!」
唐突に電子音が鳴り、ガイアさんが焦り始める。
ちょ、待って。
今、なんて言った? 舐めて治す……??
「え、舐めるんですか? え⁈」
「うんうん!そんな感じでいいと思う! とにかく、体液!体液!じゃあ、良い人生を!! ごめんねーーーー!あ!世界がオメガバースなんだよ!わっすれてた!」
……いやいやいや⁈
なんか変態っぽいスキルになってない⁈
「ちょっと待て体液ってどういうこと……!あと、オメ……なんて⁈」
「オメガバース! オメガバースの世界なんだよ!なんか、まあオメガにしとくね! 大事にされるし!」
女神のその一言と同時に、僕の意識は急速に遠のいていった。
暗転。
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