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第11話『優しさと熱の間』
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部屋の空気が、ひどく重たかった。
肌にまとわりつくような熱。
喉が焼けるように乾いて、呼吸が追いつかない。
何かに急き立てられるように、心臓の音ばかりがやたらとうるさく響いていた。
──熱い、いや、痛い。
蓮はベッドの上で、己の体が自分のものではないような感覚に翻弄されていた。
「……ぅ、あ……」
喉の奥からこぼれる声も、もはや自分のものとは思えなかった。
それでも誰かの気配を感じて、意識の奥が微かに反応した。
枕元に、誰かがいる。
静かに、呼吸を整える気配。
「……ロ、ナルド……さん……?」
荒れた呼吸の合間に、小さく名を呼んだ。
金色の瞳が、うっすらと目を開けた蓮を見つめていた。
その顔には、焦りも、苛立ちもない。
ただ、淡々と、静かに、真摯な眼差しだけがあった。
「……喋るな。これを、飲め」
ロナルドは手のひらに小瓶をのせ、慎重に口元へと運んだ。
蓮が拒む余裕もないまま、苦い液体が喉に流し込まれる。
息が詰まり、むせ返りそうになるが、それすら上手くできない。
(……なに……が……)
理解できない。
体の奥が疼き、何かを求めるような感覚が全身を駆け巡る。
熱が滲む額にロナルドが手を添えた。
その瞬間、蓮の身体がびくりと跳ねる。
まるで反射のように、彼の方へ身を寄せてしまった。
無意識の行動だった。
「あ、っ……あつ、くて……ぅ……」
震える手が、ロナルドの胸元を探る。
その姿を見て、ロナルドの瞳が鋭く揺れた。
「……くそっ」
唇から、低く苦い呟きが漏れた。
そのままロナルドは、蓮の身体をそっとベッドへ押し戻す。
暴れるのを抑えるように、片腕で蓮の肩を固定し、もう片方の手を──蓮の下腹部へ。
「……これで、少しは……」
言葉の続きはなかった。
ただ、淡々とした仕草のまま、ロナルドの手が熱の核へと触れる。
蓮は声にならない声を上げ、身体を震わせた。
意識は熱に溶けかけている。
自分が何をされているのか、なぜ涙が出るのか、もう分からなかった。
けれど──
どこかで、自分を傷つけるものではない優しさに包まれていることだけは、確かに感じ取っていた。
それが何より、嬉しかった。
やがて、体の奥の疼きが一度だけ、頂点を越える。
何かを吐き出すような感覚のあと、蓮の身体から力が抜けた。
熱は完全に収まってはいなかったが、意識はそのまま深く、深く沈んでいった。
ロナルドは、蓮の額に手を置いたまま、静かに息をつく。
「……今は、眠れ……」
誰にも聞こえないような声で、そう呟いた。
※
翌朝。
廊下の隅に寄りかかり、口を大きく開けて欠伸していたルースが、ロナルドの姿を見て目を細めた。
「おはよ。……一晩中、あの子のそばにいたんだろ?」
ロナルドは無言で頷く。
「すげぇな。アルファのくせに、よくやるよ。俺には……たぶん無理だわ。どこまでいっても、“理性”って、限界あるしな」
ロナルドは言葉を返さなかった。
ただ静かに、いつも通りの無表情で歩き去っていく。
その背中を見ながら、ルースは皮肉げに笑った。
「……ああいうのが、“本物の騎士”ってやつなんだろうな。やってらんねぇわ」
風がひとつ、静かに吹き抜けた。
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投稿は毎日8時・21時の2回です。
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肌にまとわりつくような熱。
喉が焼けるように乾いて、呼吸が追いつかない。
何かに急き立てられるように、心臓の音ばかりがやたらとうるさく響いていた。
──熱い、いや、痛い。
蓮はベッドの上で、己の体が自分のものではないような感覚に翻弄されていた。
「……ぅ、あ……」
喉の奥からこぼれる声も、もはや自分のものとは思えなかった。
それでも誰かの気配を感じて、意識の奥が微かに反応した。
枕元に、誰かがいる。
静かに、呼吸を整える気配。
「……ロ、ナルド……さん……?」
荒れた呼吸の合間に、小さく名を呼んだ。
金色の瞳が、うっすらと目を開けた蓮を見つめていた。
その顔には、焦りも、苛立ちもない。
ただ、淡々と、静かに、真摯な眼差しだけがあった。
「……喋るな。これを、飲め」
ロナルドは手のひらに小瓶をのせ、慎重に口元へと運んだ。
蓮が拒む余裕もないまま、苦い液体が喉に流し込まれる。
息が詰まり、むせ返りそうになるが、それすら上手くできない。
(……なに……が……)
理解できない。
体の奥が疼き、何かを求めるような感覚が全身を駆け巡る。
熱が滲む額にロナルドが手を添えた。
その瞬間、蓮の身体がびくりと跳ねる。
まるで反射のように、彼の方へ身を寄せてしまった。
無意識の行動だった。
「あ、っ……あつ、くて……ぅ……」
震える手が、ロナルドの胸元を探る。
その姿を見て、ロナルドの瞳が鋭く揺れた。
「……くそっ」
唇から、低く苦い呟きが漏れた。
そのままロナルドは、蓮の身体をそっとベッドへ押し戻す。
暴れるのを抑えるように、片腕で蓮の肩を固定し、もう片方の手を──蓮の下腹部へ。
「……これで、少しは……」
言葉の続きはなかった。
ただ、淡々とした仕草のまま、ロナルドの手が熱の核へと触れる。
蓮は声にならない声を上げ、身体を震わせた。
意識は熱に溶けかけている。
自分が何をされているのか、なぜ涙が出るのか、もう分からなかった。
けれど──
どこかで、自分を傷つけるものではない優しさに包まれていることだけは、確かに感じ取っていた。
それが何より、嬉しかった。
やがて、体の奥の疼きが一度だけ、頂点を越える。
何かを吐き出すような感覚のあと、蓮の身体から力が抜けた。
熱は完全に収まってはいなかったが、意識はそのまま深く、深く沈んでいった。
ロナルドは、蓮の額に手を置いたまま、静かに息をつく。
「……今は、眠れ……」
誰にも聞こえないような声で、そう呟いた。
※
翌朝。
廊下の隅に寄りかかり、口を大きく開けて欠伸していたルースが、ロナルドの姿を見て目を細めた。
「おはよ。……一晩中、あの子のそばにいたんだろ?」
ロナルドは無言で頷く。
「すげぇな。アルファのくせに、よくやるよ。俺には……たぶん無理だわ。どこまでいっても、“理性”って、限界あるしな」
ロナルドは言葉を返さなかった。
ただ静かに、いつも通りの無表情で歩き去っていく。
その背中を見ながら、ルースは皮肉げに笑った。
「……ああいうのが、“本物の騎士”ってやつなんだろうな。やってらんねぇわ」
風がひとつ、静かに吹き抜けた。
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