イトムシ    〜 幼少期〜

夜束牡牛

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赤子

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 女が赤子を抱いている。
 見つめ合う瞳は、どちらも深い黒。
 両目に夜を宿した親子だ。
 
 母は赤子の胸へと手を当て、心臓の音を確かめた。

「キイト。ここにあるのは心臓。私たちイトムシが紡いで行く、すべての糸がここにある」

 心臓の音に合わせて、指で優しく胸を叩く。

「この心臓は、強く切れぬ糸を作る。紡いだ糸は、貴方と世界をつないでくれる。さぁ、キイト」

 赤子は母の目に瞬きを送り、小さな口を開けた。

 赤子の胸を上がり、喉の奥から何かがやってくる、それが、ゆっくりと舌の根へと辿り着いた。
 小さな唇から息に乗り、細い真白な糸が、するり、出てきた。
 緩やかな夜風に吹かれ、糸が離れる。ふわりと風に乗る糸。
 母は赤い唇で、その真白い糸を飲み込んだ。
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