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夜明け
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夜が明ける、太陽が昇っていく。
陽の光が空気を暖め、夜露を消してゆく度に、一人また一人と、人間たちが目を覚ます。
猫と家族に囲まれた幸せな夢から、深山は目を覚ました。次いで、勢いよく立ち上がった。
「起きなさいっ。なぜみんな眠っているのです? 怪我はないですか?」
隣で眠る宮守を揺り起こしつつ、まわりを見れば、警備の者たちが皆、その場に横になり眠っているではないか。
深山は混乱する自身の頭を落ち着かせようと、部下の頬を一つ叩いた。
パンッと、目が覚める音が響く。それの効果と痛みで、寝ていた宮守が目を覚ました。
「おはようございます、深山様。良い朝で」
「……おはよう。君は本当に真面目だね」
「えぇ、あの……はい」
一度は、そう目を覚ました宮守だったが、次の瞬きの間には再び寝入ってしまった。
「……」
「わかりました、君はここで寝ていなさい。それで頬の腫れはチャラです」
深山は宮守の二度寝を許すと、一人で庭へとむかった。
庭では、位ある人たちが同じように眠っていた。皆、草の上に気持ちよさそうに体を横たえている。
「これはいったい、どうなっているのです」
「おはよう、副隊長君」
声を掛けてきたのは国王だった。起き上がり大きく伸びをし、近くの宮臣を足で小突いている。
深山は素早く国王へと駆け寄った。
「おはようございます、国王陛下。お体に不調はございませんか?」
「大丈夫だ、怪我もない。むしろ爽快だな。こやつは日頃の疲れがよほど溜まっていたのだろう。起きるまでだいぶかかりそうだな」
「宮臣様!」
深山が素早く宮臣の体を確認していると、後からワリオス館長に声をかけられた。
「安心しろ、若いの。皆、ただ眠らされていただけだ。この様子だと、国全体やられたようだな」
国王がやって来たワリオス館長へと片手を挙げた。
「お、ワリオス、君も起きたか。それにしても国全体とは……まったく恐ろしいなぁ」
「相手は楽園です。常識の規模は通じませんよ」
参った参った、と国王と館長が笑い合う。そんな二人は、ふと笑い声を収めると、茂みの方を見た。深山もつられその視線を追うと、そこには、ヒノデと腕に抱かれたキイトの寝姿。
「っキイト様!」
腰を浮かす深山を、国王が手で止めた。
「よい、あの親子は特に寝かせてやろう。なにも心配するな、ふたりとも無事だ」
国王は穏やかに言うと、深山の足元で今だ眠る宮臣に視線を移した。
「さて、その堅物が起きるまで、後二時間はかかるだろうな。よし、二人に茶を入れてやろう。なんならここら一帯の分も用意しておこうか」
「手伝います。しかし、小石丸は茶器を勝手に触られるのを嫌がるでしょうね」
「そうか、それは恐ろしい。あやつには茶菓子もつけよう」
国王は楽しそうに、ワリオスを引き連れ館の中へと入って行った。
「……位が違うと、あぁも易く対応できるものですか」
残された深山がいまだ状況が吞み込めず、一人戸惑っていると、門の反対側を守っていたデノウ隊長が駆けてきた。
「深山無事か、国王陛下は? 報告を」
「報告、ですか」
そう隊長に命じられるが、深山とて、訳知り顔の二人に追いつけずにいたのだ。何をどう説明すればいいのかと、珍しく弱々しい声で報告をはじめる。
「皆無事です。宮臣様は日頃の心労が、いえ、お疲れがたまり、後二時間ほどは起きられぬご様子です。……私はただいまより、国王陛下、ワリオス館長様と共に、朝のお茶の支度をします。以上!」
深山は途中からやけぎみに言い、気持ちの良い敬礼をすると、任務遂行のために館へと走った。
ぽかんとする隊長の足元で、宮臣が寝返りを打つ。彼はきっと予想時刻まで体をやすめられるだろう。
○○○○○
ヒノデは幸せな夢から目を覚ました。
そして、夢の続きのような現実に、顔をほころばせた。
強く抱き寄せ、艶々としたラソワのような髪に顔を埋める。夜と月の香りがくすぐったい。
いつぶりだろうか、こうして自分の子を抱き締め眠ったのは。
いつまでだろうか、こうしてこの子が、小さいままでいてくれるのは。
この子を抱いている間は、世界で一番強くいられる。幸せで胸が一杯になり、涙が零れた。
「愛しているわ キイト」
夜明けの空気が国を包んでいた。
○○○○○
終わり
○○○○○
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