ゆるゾン

二コ・タケナカ

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ヘンな気分だ。頭の中がかゆいような、こそばゆいような、脳を直接羽根で撫でられている様なふわふわした気分でもあり、うまく言葉にできない。
アタシは変な気分のまま、ヘンな事を口走ってしまった。
「この中で一番最初に死ぬのは誰だろうねぇ」
「はぁ!?」ふーみんが”何言いだすのよこの子は”という顔をしている。
アタシも何でこんな言葉を言ってしまったんだろう。照れ隠しだったのか?後悔しながらも続けた。
「バイオハザードが起きたら、どうなるかって話だよ」
「くだらない。まあ、一番最初に死ぬとしたらアンタじゃない?運動音痴のオタクなんて真っ先にゾンビにやられるでしょうから」
「いやいや、アタシのポジションは物語にとって重要なんだよ?だって、女子高生だけが学校に立てこもったとして、どうやってゾンビから身を守るのさ。開始5分で全滅するのがオチだよ。そこでアタシのオタク知識が必要とされるんだ。身を守る為の知識がね」

「じゃあ、花とか?お腹が空いて我慢できずに外へ出たところをやられそうじゃない?」
「風香ちゃん、ひどいよぉ!」
「前に言ってたじゃない。人は1ヶ月、水だけでも生きられるって。ここなら水は確保できそうだけど、何も食べずに耐えられるの花は?」
「エヘヘ、ムリだね」
「大丈夫。はなっちはヒロイン的ポジションだから。開始早々にやられたりはしない。可愛い娘をキャーキャー言わせれば見ている方も盛り上がるからね」
「この話は現実じゃないの?映画の事を言ってるの?」
ふーみんが呆れている。けど、この娘ちゃんとアタシの話を覚えていてくれたんだな。

「ポジションで言えば、かいちょも序盤で死んだりはしないよ」
「月光さん。やめてください、そういう話」彼女は顔をこわばらせている。
「かいちょはダークホース的ポジションだよ。そうだなぁ、バイオハザードの原因を探る某国のエージェントという設定がいいかな?」
「私、ただの女子高生ですよ」
「なら、物語の終盤で波乱を起こす役だね。『もーっ!耐えられない!もーっ!こんな所、嫌っ』って言って、開けてはいけないと注意されていたのに、外への扉を開けてしまうんだ」
アタシが『もーっ!』っと、かいちょのモノマネをしてみせたら彼女は怒りだした。
「もーっ!そんな事しませんよ!」
「ほらーぁ!」
皆でアハハハハと笑い合った。

「まあ、一番最初にあっさり死んでしまうのは、ふーみんだろうけど」
「ちょっと!私は死んだりしないわよっ」
「ハイ!フラグ立ったーぁ。自分で死なないとか言ってる登場人物は真っ先にやられるのがお約束だよ」
「ぐ~っ!なんでそんなこと言うのよッ!バカっ!」

だいぶいつも通りに喋れるようになったところへ、一年ズもやってきた。
「失礼します」
そう言って入って来たヒメがニコニコと笑って、持っていた箱を差し出す。
「先輩。お誕生日おめでとうございます♪」
受け取った箱にはショートケーキが入っていた。
「Happy birthday Have a great day 」チカ丸も流ちょうな英語で祝ってくれる。
(ダメだ。)
また目頭が熱い。

助けてくれたのはチカ丸の発言だった。
「私がmoney、出してあげた。」
「待ってください、千鹿さん!私も半分出してますよ⁉」
チカ丸がケーキを指さす。
「日本のアニメに出てくる”short cake”食べてみたかった」ショーッ ケークと発音よく言ったチカ丸。
「そうか。確か日本のショートケーキは海外のものとは別物だって聞いたことがあるよ」
コクリと頷く。
「日本のアニメ、全部ケーキは白いホイップにイチゴが乗ってるだけ」
「なるほど。外国目線だとおもしろい」

かいちょがお茶の準備を進めてくれている。
「今日の紅茶は何にしましょうか?」
「小鳥ちゃん。せっかく主役はショートケーキなんだから、紅茶は引き立て役に香りも渋みも主張してこないニルギリがいいんじゃない?」
「そうですね。そうしましょうか」
「花もチカも自分が食べたいだけじゃない。誰の誕生日だと思ってるの?」
「そうですよ。先輩の誕生日なんですからね」
珍しくふーみんとヒメの意見がまとまっている。

「よっ!いるな」
パイセンもやってきた。
「あら、今日はいつにもまして賑やかじゃないですか?」
続けて、あおたんまで入ってきた。
「どうするの?ケーキ、足りる?」ふーみんがコソコソ話している。
「大丈夫ですよ。8個買ってきましたから」
「余ったら食べるつもりだった、」チカ丸が残念そうに言う。
アハハハハとみんなで笑った。


アタシは何気ない会話に安心感と幸せの様なものを、この時感じていたのかもしれない。
この時までは。
アタシはまだ知らなかったのだ。あんなことになるなんて・・・・・・

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