29 / 41
交際
しおりを挟む
「――ふふっ、真織さん。なんだか、みんなが私達を見てるね?」
「……まあ、そうなりますよね。こんな状態で、一緒に出社してきたら」
それから、翌朝のこと。
そう、何とも楽しそうな笑顔でそんなことを言う可憐な女性。……まあ、そうだろうね。朝から早々、腕を組んでオフィスに入ってきたりなんてしたら……うん、視線が痛い。
さて、経緯を説明すると……いや、するまでもないかな? すぐ隣で嬉しそうに笑う君島さんと、昨日から交際を始めたわけでして。
「――おはようございます、古城先輩。鈴奈ちゃん。ところで……ひょっとして、お二人は……」
「はい、そうなんです拓也先輩。昨日、めでたくお付き合いを始めまして!」
「……そっか、おめでとう。心から祝福するよ」
その後、最初に話しかけてきたのは吉川くん。その表情はとても穏やかで、本心から祝福してくれていることが伝わる。……だけど、どうしてか僕は――
「…………おめでとうございます、お二人とも」
すると、背中にポツリと届いた声。さっと振り返り見るも、声の主――降宮さんは振り返ることなく遠ざかっていて。そんな彼女の背を、僕は――
「……あの、真織さん。隣に彼女がいるというのに、他の女の人をじっと見るのはマナーとしてどうかと思うのですが」
「……あっ……その、すみません、君島さん」
すると、隣からありありと不満を湛えそう口にする君島さん。……まあ、それはそうなるよね……うん、ごめんなさい。
「いや~今日は注目の的だったね、真織さん」
「……ええ、確かに注目の的でしたね。きっと悪い意味で、ですけども」
その日の帰り道。
すっかり暗くなった空の下を、遥か上空の満月のように輝く笑顔で告げる君島さん。……うん、確かに注目の的だったね。悪い意味で、だけれども。
さて、改めて経緯を説明すると……うん、まさか家まで迎えにくるとは思わなかった。朝からほんとびっくりで……いや、迷惑というわけじゃないんだけども。
そして、職場では……まあ、出勤時のあのご様子とほぼ同じような感じで。業務中にも度々こちらに笑顔を向けてきたり、休憩時間には再び腕を絡めながら一緒に社員食堂へと入っていったり。なので、皆さんからの視線が刺さりに刺さり……いや、決して迷惑というわけじゃないんだけども。大いに困惑はあるけれど、君島さんの気持ちは素直に嬉しい。ほんと、僕には勿体ないくらいで。……だけど、
「――さて、改めてだけどこれから宜しくね? 真織さん」
「……はい、君島さん」
そう、僕の手を握り告げる君島さん。そんな彼女の可憐な笑顔に、ズキリと胸が痛くなる。もちろん、迷惑なわけじゃなく……ただ、申し訳ないだけ。こうして隣にいる資格なんて、こんな僕にあるはずがないのに。
「……まあ、そうなりますよね。こんな状態で、一緒に出社してきたら」
それから、翌朝のこと。
そう、何とも楽しそうな笑顔でそんなことを言う可憐な女性。……まあ、そうだろうね。朝から早々、腕を組んでオフィスに入ってきたりなんてしたら……うん、視線が痛い。
さて、経緯を説明すると……いや、するまでもないかな? すぐ隣で嬉しそうに笑う君島さんと、昨日から交際を始めたわけでして。
「――おはようございます、古城先輩。鈴奈ちゃん。ところで……ひょっとして、お二人は……」
「はい、そうなんです拓也先輩。昨日、めでたくお付き合いを始めまして!」
「……そっか、おめでとう。心から祝福するよ」
その後、最初に話しかけてきたのは吉川くん。その表情はとても穏やかで、本心から祝福してくれていることが伝わる。……だけど、どうしてか僕は――
「…………おめでとうございます、お二人とも」
すると、背中にポツリと届いた声。さっと振り返り見るも、声の主――降宮さんは振り返ることなく遠ざかっていて。そんな彼女の背を、僕は――
「……あの、真織さん。隣に彼女がいるというのに、他の女の人をじっと見るのはマナーとしてどうかと思うのですが」
「……あっ……その、すみません、君島さん」
すると、隣からありありと不満を湛えそう口にする君島さん。……まあ、それはそうなるよね……うん、ごめんなさい。
「いや~今日は注目の的だったね、真織さん」
「……ええ、確かに注目の的でしたね。きっと悪い意味で、ですけども」
その日の帰り道。
すっかり暗くなった空の下を、遥か上空の満月のように輝く笑顔で告げる君島さん。……うん、確かに注目の的だったね。悪い意味で、だけれども。
さて、改めて経緯を説明すると……うん、まさか家まで迎えにくるとは思わなかった。朝からほんとびっくりで……いや、迷惑というわけじゃないんだけども。
そして、職場では……まあ、出勤時のあのご様子とほぼ同じような感じで。業務中にも度々こちらに笑顔を向けてきたり、休憩時間には再び腕を絡めながら一緒に社員食堂へと入っていったり。なので、皆さんからの視線が刺さりに刺さり……いや、決して迷惑というわけじゃないんだけども。大いに困惑はあるけれど、君島さんの気持ちは素直に嬉しい。ほんと、僕には勿体ないくらいで。……だけど、
「――さて、改めてだけどこれから宜しくね? 真織さん」
「……はい、君島さん」
そう、僕の手を握り告げる君島さん。そんな彼女の可憐な笑顔に、ズキリと胸が痛くなる。もちろん、迷惑なわけじゃなく……ただ、申し訳ないだけ。こうして隣にいる資格なんて、こんな僕にあるはずがないのに。
0
あなたにおすすめの小説
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
隣人はクールな同期でした。
氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。
30歳を前にして
未婚で恋人もいないけれど。
マンションの隣に住む同期の男と
酒を酌み交わす日々。
心許すアイツとは
”同期以上、恋人未満―――”
1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され
恋敵の幼馴染には刃を向けられる。
広報部所属
●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳)
編集部所属 副編集長
●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳)
本当に好きな人は…誰?
己の気持ちに向き合う最後の恋。
“ただの恋愛物語”ってだけじゃない
命と、人との
向き合うという事。
現実に、なさそうな
だけどちょっとあり得るかもしれない
複雑に絡み合う人間模様を描いた
等身大のラブストーリー。
譲れない秘密の溺愛
恋文春奈
恋愛
憧れの的、国宝級にイケメンな一条社長と秘密で付き合っている 社内一人気の氷室先輩が急接近!? 憧れの二人に愛される美波だけど… 「美波…今日充電させて」 「俺だけに愛されて」 一条 朝陽 完全無欠なイケメン×鈴木 美波 無自覚隠れ美女
恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-
プリオネ
恋愛
せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。
ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。
恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。
〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー
i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆
最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡
バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。
数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。
五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。
ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。
年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。
慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。
二人の恋の行方は……
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる