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別物?
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「――ふふっ、初めてのデートだね真織さん」
「……初めて、ですか? ですが、以前にも四人でダブルデートを――」
「いやあれは別物でしょ。二人きりのデートが、ということで……いや、流石に言うまでもないよね?」
それから、数日経た昼下がり。
そう、腕を絡めつつ楽しそうに告げる君島さん。だけど、僕の返答に少し不服そうに……まあ、それでも楽しそうではあるのだけども。
さて、今いるのは休日ということもあり往来の多い大通り。恐らくは今時と言えようお洒落なお店が並ぶ道沿いを、ほのぼのと会話を交わしつつ目的地へと向かっているわけで。
「――さあ、今日は投げるよ真織さん! それこそ筋肉痛になっちゃうくらいに!」
「……いや、そこまでは……ほら、仕事に差し支えが出てしまっても困りますし」
「……いや、流石に仕事の話はなしでしょ。よもや、今デート中だということを忘れてないよね?」
それから、数十分後。
10本のピンが遠くに並ぶレーンの前にて、朗らかな笑顔でそう口にする君島さん。そんな彼女が何とも微笑ましく、僕の方まで思わず笑みが零れてしまう。……ほんと、眩しい人だなぁ。
さて、今いるのはボーリング場――先日、次の休日どこに行こうかという話になり、久しぶりにスカッとストライクを取りたいという彼女の希望にてこちらに決定したわけで。……うん、僕も本当に久しぶりで。確か、最後に行ったのはもう20年も――
「――さて、私の華麗なフォームをしかと見ててね真織さん!」
「……はい、しかと見させていただきます君島さん」
すると、ビシッと僕を指差し告げる君島さん。そんな彼女に、再び思わず笑みが洩れる。……ほんと、眩しいなぁ。
「……すごいですね、君島さん」
「ふふん、ざっとこんなもんだよ」
それから、ほどなくして。
そう、ポツリと口にする。すると、Vサインと共に可憐な笑顔で告げる君島さん。結果は、1投目から見事なストライク。そして、言っていた通りのとても滑らかで華麗なフォームで……うん、すごいなぁ。
「さて、次は真織さんだね。ちゃんとカッコいいとこ見せてね? 可愛い彼女に。……真織さん?」
「……あっ、すみません! ええ、その……はい、頑張ります」
すると、ニッコリと――だけど、ややあってキョトンと首を傾げ尋ねる君島さん。と言うのも――きっと、僕が茫然としてしまっていたからで。……駄目だ、切り替えなきゃ。だって、今はもう――
「……うん、まあ、その……ドンマイ」
「……お気遣い、ありがとうございます君島さん」
それから、ほどなくして。
1投目を終えた僕を、何とも言えない微笑で励ましてくれる君島さん。……うん、その、ごめんなさい。
さて、結果は……まあ、言うまでもないかな。もちろん0ピン……それも、鏡なんて見ずとも分かる不格好なフォームからの、レーンの半分にも満たない辺りでのガターという何とも恥ずかしい結末で……いや、でもまだこれから。とりあえず、次の1投でどうにか――
「……へっ?」
瞬間、ピタリと動きが止まる僕。と言うのも、いつの間にかこちらに来ていた君島さんが不格好な僕のフォームを正そうとしてくれていて。そして、僕の背中から腕を回す形で教えてくれているので……その、色々と密着してしまっている状況でして。それはさながら、あの時の……今も鮮明に刻まれている、あのバッティングセンターでの時のようで――
「…………真織さん?」
「……へっ? あっ、いえ……その、何でも……」
刹那、ハッと我に返る僕。見ると、覗き込むように僕を間近で見つめる君島さんのお顔が。……駄目だ、切り替えなきゃ。だって……今はもう、君島さんの彼氏なんだから。
「――いや~楽しかったね真織さん! それに、真織さんのすっごく可愛いところも見れたし」
「……か、からかわないでください。……ですが、ありがとうございます君島さん。本当に楽しかったです。でも、本当にそのうち筋肉痛になっちゃうかもしれませんね」
「あれ、そうなの? 私は全然余裕だよ? あと、痛くなるならせめて明日の朝以降にしてね?」
「……?」
それから、数時間後。
ほんのりと暗くなった頃、会話に花を咲かせながら街灯の照らす住宅街を歩いていく僕ら。まあ、筋肉痛に関しては冗談のつもりだったんだけど……でも、なんで明日の朝? 明日の朝までに治せ、とかなら分かるのだけど、翌朝《そこ》からだと思いっ切り仕事に支障が……いや、そもそも痛くなるのにタイミングとか選べないけども。
……ただ、それはともあれ……うん、楽しかった。僕と二人で楽しんでくれるか不安だったけど、今の――そして今日の様子を見るに、本当に楽しんでくれていたのが伝わって……うん、良かった。
「……それでは、君島さん。また明日」
それから、10分ほど経て。
鉄筋アパートの二階にて、奥から二つ目のお部屋の前でそう告げる僕。今しがた、到着した君島さんのお部屋の前で。あとは、明日以降に必要な買い物をして帰るだけ……なの、だけども――
「……君島さん?」
そう、戸惑いつつ尋ねてみる。と言うのも……どうしてか、何の言葉も発さずただ僕をじっと見つめているから。それも、僕のシャツを摘んだまま……えっと、いったいどうし――
「……ねえ、真織さん……もっと、一緒にいたい」
「……初めて、ですか? ですが、以前にも四人でダブルデートを――」
「いやあれは別物でしょ。二人きりのデートが、ということで……いや、流石に言うまでもないよね?」
それから、数日経た昼下がり。
そう、腕を絡めつつ楽しそうに告げる君島さん。だけど、僕の返答に少し不服そうに……まあ、それでも楽しそうではあるのだけども。
さて、今いるのは休日ということもあり往来の多い大通り。恐らくは今時と言えようお洒落なお店が並ぶ道沿いを、ほのぼのと会話を交わしつつ目的地へと向かっているわけで。
「――さあ、今日は投げるよ真織さん! それこそ筋肉痛になっちゃうくらいに!」
「……いや、そこまでは……ほら、仕事に差し支えが出てしまっても困りますし」
「……いや、流石に仕事の話はなしでしょ。よもや、今デート中だということを忘れてないよね?」
それから、数十分後。
10本のピンが遠くに並ぶレーンの前にて、朗らかな笑顔でそう口にする君島さん。そんな彼女が何とも微笑ましく、僕の方まで思わず笑みが零れてしまう。……ほんと、眩しい人だなぁ。
さて、今いるのはボーリング場――先日、次の休日どこに行こうかという話になり、久しぶりにスカッとストライクを取りたいという彼女の希望にてこちらに決定したわけで。……うん、僕も本当に久しぶりで。確か、最後に行ったのはもう20年も――
「――さて、私の華麗なフォームをしかと見ててね真織さん!」
「……はい、しかと見させていただきます君島さん」
すると、ビシッと僕を指差し告げる君島さん。そんな彼女に、再び思わず笑みが洩れる。……ほんと、眩しいなぁ。
「……すごいですね、君島さん」
「ふふん、ざっとこんなもんだよ」
それから、ほどなくして。
そう、ポツリと口にする。すると、Vサインと共に可憐な笑顔で告げる君島さん。結果は、1投目から見事なストライク。そして、言っていた通りのとても滑らかで華麗なフォームで……うん、すごいなぁ。
「さて、次は真織さんだね。ちゃんとカッコいいとこ見せてね? 可愛い彼女に。……真織さん?」
「……あっ、すみません! ええ、その……はい、頑張ります」
すると、ニッコリと――だけど、ややあってキョトンと首を傾げ尋ねる君島さん。と言うのも――きっと、僕が茫然としてしまっていたからで。……駄目だ、切り替えなきゃ。だって、今はもう――
「……うん、まあ、その……ドンマイ」
「……お気遣い、ありがとうございます君島さん」
それから、ほどなくして。
1投目を終えた僕を、何とも言えない微笑で励ましてくれる君島さん。……うん、その、ごめんなさい。
さて、結果は……まあ、言うまでもないかな。もちろん0ピン……それも、鏡なんて見ずとも分かる不格好なフォームからの、レーンの半分にも満たない辺りでのガターという何とも恥ずかしい結末で……いや、でもまだこれから。とりあえず、次の1投でどうにか――
「……へっ?」
瞬間、ピタリと動きが止まる僕。と言うのも、いつの間にかこちらに来ていた君島さんが不格好な僕のフォームを正そうとしてくれていて。そして、僕の背中から腕を回す形で教えてくれているので……その、色々と密着してしまっている状況でして。それはさながら、あの時の……今も鮮明に刻まれている、あのバッティングセンターでの時のようで――
「…………真織さん?」
「……へっ? あっ、いえ……その、何でも……」
刹那、ハッと我に返る僕。見ると、覗き込むように僕を間近で見つめる君島さんのお顔が。……駄目だ、切り替えなきゃ。だって……今はもう、君島さんの彼氏なんだから。
「――いや~楽しかったね真織さん! それに、真織さんのすっごく可愛いところも見れたし」
「……か、からかわないでください。……ですが、ありがとうございます君島さん。本当に楽しかったです。でも、本当にそのうち筋肉痛になっちゃうかもしれませんね」
「あれ、そうなの? 私は全然余裕だよ? あと、痛くなるならせめて明日の朝以降にしてね?」
「……?」
それから、数時間後。
ほんのりと暗くなった頃、会話に花を咲かせながら街灯の照らす住宅街を歩いていく僕ら。まあ、筋肉痛に関しては冗談のつもりだったんだけど……でも、なんで明日の朝? 明日の朝までに治せ、とかなら分かるのだけど、翌朝《そこ》からだと思いっ切り仕事に支障が……いや、そもそも痛くなるのにタイミングとか選べないけども。
……ただ、それはともあれ……うん、楽しかった。僕と二人で楽しんでくれるか不安だったけど、今の――そして今日の様子を見るに、本当に楽しんでくれていたのが伝わって……うん、良かった。
「……それでは、君島さん。また明日」
それから、10分ほど経て。
鉄筋アパートの二階にて、奥から二つ目のお部屋の前でそう告げる僕。今しがた、到着した君島さんのお部屋の前で。あとは、明日以降に必要な買い物をして帰るだけ……なの、だけども――
「……君島さん?」
そう、戸惑いつつ尋ねてみる。と言うのも……どうしてか、何の言葉も発さずただ僕をじっと見つめているから。それも、僕のシャツを摘んだまま……えっと、いったいどうし――
「……ねえ、真織さん……もっと、一緒にいたい」
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