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本当の気持ち
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さて、時は戻り現在――公園にて、あの赦されざる罪人達の娘だと打ち明けてからほどなくのこと。
すっかり帷の下りた住宅街を、一人ゆっくりと歩いていく。真織先輩は送ってくれると頑なに言ったけど、それ以上に私が頑なに拒んだから。申し訳ないとは思うけど、彼にも恋人がいるし、それに……今、彼といてもとても間が持つ気がしないから。……ところで、それはそれとして――
「…………よかった」
そう、ポツリと零す。まあ、分かってなかったわけでもないけど……先輩は、憎んでなかった。私があの赦されざる両親の娘だと知っていながら、それでも憎んでなんていなかった。私と付き合ってくれないのは、もしかしたら憎悪が理由なんじゃないかと思っていたから。
……でも、だったらなんで? きっとその手のことには鈍い人なのだろうけど、それでも流石に私の気持ちに気づいていなかったとは思えない。もちろん、単純に私をそういう対象として見ていなかったという可能性も真に残念ながら否めないけど……でも、それを言うなら君島さんに対してだってそういう感情を抱いていたとは思えない。もちろん、私がそう思いたいという面も否定はできないけど……それでも、ほぼ間違いないかなと。これでも、彼のことは誰よりも見てきたつもりだし。
……それに、疑問はもう一つ。この気持ちに――この恋心に応える気が全くなかったのなら……どうして、仲良くしてくれたの? なんで、何度も部屋に来てくれたの? なんで、料理を作ってくれたの? なんで、デートの誘いに応じてくれたの? なんで……ずっと、優しくしてくれたの? 誠実な彼の人柄からして、全く応じる気がない相手に期待を持たせるなんて酷いことをするはずが――
「……っ!!」
刹那、背筋が凍る。ハッと振り返ると、そこには猛スピードでこちらへ――それも、刃物を向け直進してくる黒いパーカー姿の人物。フードを纏っているためその顔は見えないけど、それでも底知れぬ憎悪――そして殺意は怖いくらいに伝わって……まずい、身体がまるで動かな――
「………………え」
刹那、呼吸が止まる。……いや、だって……
「…………まおり、せんぱい……?」
そう、ポツリと声が。茫然とする私の視界には、私を庇い背中へ刃物を受け、ガクリと膝から崩れ落ちる秀麗な男性の姿があって。
「…………まおり、さん、なんで……」
ややあって、ポツリと届く声。今やフードが外れその顔が顕となった女性――君島さんの声で。……まあ、見えなくても分かったとは思うけど。声もそうだし……そもそも、あんなありありと殺意を向けてくる相手なんて流石に限られてるし。
「……も」
「……え」
「……申し訳、ありません……君島さん。僕は……貴女のことを、酷く傷つけて……」
「……っ!! 謝らないで真織さん!! そんなこと、もうどうでもいい!! そんなことより、なん……いや、それより早く…………え?」
そう言って、すぐさまスマホを取り出し操作を始める君島さん。だけど、首を横に振りつつ彼女の手を留める真織先輩。まるで、もう助からないからと言わんばかりに……いや、ぼおっとしてる場合じゃない。すぐに――
「……そして、申し訳、ありません……降宮、さん。僕は、貴女の、ことも――」
「お願いだからもうしゃべらないください!! 傷口が広がりますから!! 今、救急車を呼ぶのでとにかく大人しくし…………へ?」
刹那、ハッと目を見開く。私をじっと見つめるその瞳から――この上もなく優しいその微笑から、疑う余地もなくはっきりと分かってしまったから。私に対する、彼の本当の気持ちを。そして、ほどなくそっと目を――
「……っ!! 先輩!! 先輩!! 先ぱ…………あ」
澄み切った夜空の下、ただひたすらに叫び続ける。だけど、返事はない。そして――もう二度と、その目が開くことはなかった。
すっかり帷の下りた住宅街を、一人ゆっくりと歩いていく。真織先輩は送ってくれると頑なに言ったけど、それ以上に私が頑なに拒んだから。申し訳ないとは思うけど、彼にも恋人がいるし、それに……今、彼といてもとても間が持つ気がしないから。……ところで、それはそれとして――
「…………よかった」
そう、ポツリと零す。まあ、分かってなかったわけでもないけど……先輩は、憎んでなかった。私があの赦されざる両親の娘だと知っていながら、それでも憎んでなんていなかった。私と付き合ってくれないのは、もしかしたら憎悪が理由なんじゃないかと思っていたから。
……でも、だったらなんで? きっとその手のことには鈍い人なのだろうけど、それでも流石に私の気持ちに気づいていなかったとは思えない。もちろん、単純に私をそういう対象として見ていなかったという可能性も真に残念ながら否めないけど……でも、それを言うなら君島さんに対してだってそういう感情を抱いていたとは思えない。もちろん、私がそう思いたいという面も否定はできないけど……それでも、ほぼ間違いないかなと。これでも、彼のことは誰よりも見てきたつもりだし。
……それに、疑問はもう一つ。この気持ちに――この恋心に応える気が全くなかったのなら……どうして、仲良くしてくれたの? なんで、何度も部屋に来てくれたの? なんで、料理を作ってくれたの? なんで、デートの誘いに応じてくれたの? なんで……ずっと、優しくしてくれたの? 誠実な彼の人柄からして、全く応じる気がない相手に期待を持たせるなんて酷いことをするはずが――
「……っ!!」
刹那、背筋が凍る。ハッと振り返ると、そこには猛スピードでこちらへ――それも、刃物を向け直進してくる黒いパーカー姿の人物。フードを纏っているためその顔は見えないけど、それでも底知れぬ憎悪――そして殺意は怖いくらいに伝わって……まずい、身体がまるで動かな――
「………………え」
刹那、呼吸が止まる。……いや、だって……
「…………まおり、せんぱい……?」
そう、ポツリと声が。茫然とする私の視界には、私を庇い背中へ刃物を受け、ガクリと膝から崩れ落ちる秀麗な男性の姿があって。
「…………まおり、さん、なんで……」
ややあって、ポツリと届く声。今やフードが外れその顔が顕となった女性――君島さんの声で。……まあ、見えなくても分かったとは思うけど。声もそうだし……そもそも、あんなありありと殺意を向けてくる相手なんて流石に限られてるし。
「……も」
「……え」
「……申し訳、ありません……君島さん。僕は……貴女のことを、酷く傷つけて……」
「……っ!! 謝らないで真織さん!! そんなこと、もうどうでもいい!! そんなことより、なん……いや、それより早く…………え?」
そう言って、すぐさまスマホを取り出し操作を始める君島さん。だけど、首を横に振りつつ彼女の手を留める真織先輩。まるで、もう助からないからと言わんばかりに……いや、ぼおっとしてる場合じゃない。すぐに――
「……そして、申し訳、ありません……降宮、さん。僕は、貴女の、ことも――」
「お願いだからもうしゃべらないください!! 傷口が広がりますから!! 今、救急車を呼ぶのでとにかく大人しくし…………へ?」
刹那、ハッと目を見開く。私をじっと見つめるその瞳から――この上もなく優しいその微笑から、疑う余地もなくはっきりと分かってしまったから。私に対する、彼の本当の気持ちを。そして、ほどなくそっと目を――
「……っ!! 先輩!! 先輩!! 先ぱ…………あ」
澄み切った夜空の下、ただひたすらに叫び続ける。だけど、返事はない。そして――もう二度と、その目が開くことはなかった。
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