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関西弁系聖女は今日もツッコむ
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下校中、突然足元にブラックホールみたいな大穴が空いて、吸い込まれて落ちて、気絶してから目覚めると、そこは知らない場所だった。
「おぉぉぉぉぉぉ!!!!! ついに聖女と聖騎士の召喚に成功したぞ!」
「素晴らしい!」
「これでこの国は救われるに違いない!」
「万歳! 万歳!」
なるほど、状況はだいたい把握した、と頭の中では思っていても、こうも奇怪な状況に出会うと人というものはとりあえずなにか喋るものである。とりわけ関西人は。
「……まじで意味わからへん、ここどこなんよ」
そしてそれは隣にいる幼馴染も勿論同じであった。
「それな。ほんまにここどこやねん」
ははっ、と諦めの混じった笑みがつい出てきた。ちなみに顔は全く笑っていない。これが噂の異世界転移ってやつね。確かに流行ってるけど! 流行ってるけどこれは違うだろ。関西人だからって何でも受け入れられると思うなよ、ノリのよさを売りにしてる関西人でもこれは無理だわ。よっしゃ、世界救ったるわ! とはならない。断じてならない。
たくさんのカラフルな髪の毛をお持ちでいらっしゃる方々に、ふわふわで豪華な刺繍のされた赤いカーペット、そしてキラキラすぎて眩しいシャンデリア。本当に場違いだ。誰が聖女なんだよ。関西弁喋る聖女とか聞いたことないし、もうこの時点で人選ミスだろ。「もう大丈夫です、私がみなさんを救います!」とか私言えないし。私が言ったら「はよどき、今倒したるからな!」になると思う。やっぱり駄目だろ。あぁ、早くも大阪が恋しいわ。通天閣のあたりでたこ焼き食べたい。串カツ行きたい。……え、異世界とか本当に無理なんですけれど。聖女とかやっぱり向いてないって。
と、私も幼馴染の彼も呆然としていれば、なぜか雄叫びを上げて喜んでいたときよりさらに興奮した様子で、豪華な紫の衣装をズルズル引きずってツルッパゲの一人の異世界人(予想)が私達に駆け寄ってきた。どうでもいいけどとても走りにくそうだ。ちなみに一回途中でつんのめって転けかけていた。
「おぉ、あなた達が喋っていらっしゃるのはもしや、あの伝説の聖女と聖騎士が使っていたという『カンサイベン』でしょうか! おぉ、素晴らしい……! もう一度喋っていただけますでしょうか!」
伝説? 再び私達は顔を見合わせた。あぁデジャブ……
そして叫んだ。こういうときでもやはり関西人は関西人なのである。大人しく引き下がっては関西人の血が廃る。
「なにが伝説やねん、意味わからんわ! とりあえずどういうことか説明してくれへんと」
「おぉ、やはり『カンサイベン』ですな…… 素晴らしい、素晴らしい……」
……うん、話が通じない。本当にどうしてくれよう。心からのため息を人目をはばかることなく漏れた。つらい。
◇
そして別室に移動させられた。こんどは大司祭を名乗る真面目そうな男の人が出てきた。だいぶさっきの大騒ぎしていた群衆よりもマトモそうだ。事情を説明してくれ、と言えば申し訳無さそうに詳しく説明を始めてくれる。
「お二人はこの国を魔の手から救うと言われる聖女と聖騎士として召喚されました。このように突然呼び出し、ご迷惑をかけて本当に申し訳ございません。勝手なお願いだとは分かっております。ですが、どうか。どうか、滅びつつあるこの国を救っていただきたいのです……っ!」
なるほどありがち。つまり魔王かなにか、天災級の何かが起こっていてそれを解決してくれということなんだろう。ということはこのときある可能性は2つ。倒したら帰れるパターンと、この世界に馴染んで生きていけというパターン。
「元の世界には戻れるんですか? それかもう戻れなくなってしまってるんか、どっちなんか教えてもらえます?」
「……今のところ、元の世界に戻られた方は歴代で一人もいらっしゃいません……」
「なるほど、ま、なら仕方ないわな。オニーサン責めても何も変わらんしな。――紫苑、諦めても埒が明かへんやろうし、やらへんか? 帰る方法はその間に探せばええ。どうや?」
「……ま、そうやな。こうなったらしゃあないもんな。お兄さん、任せとき。なにすればええかはわからんけどとりあえず頑張ってはみるわ」
まぁ、まだ希望がないわけではないから頑張ろう。どうにかして我々の故郷、大阪に帰るのだ。帰ってたこ焼きと串カツを食べよう。とかと思っているとお兄さんが再び話し始める。
「さすが伝説の二人と同じく『カンサイベン』をお使いになられるだけあります……! こうして頑張ってくださるとは……! これからお二人には婚約していただきお二人で手を取り合い、国の象徴として魔王と戦っていただきたいのです! あぁ、素晴らしい、伝説の再来とは……!」
だから関西弁はただの関西弁でしかないんだってば……! なんて言っても通じないであろうことは分かりきっている。結局この人もまともじゃないのかよ。頬を紅潮させて叫び始めたこの人からゆっくりと目をそらす。異世界ってやっぱり駄目だ、終わってる。
やはり私達はまた顔を見合わせた。そして叫ぶのだ。
「なんでやねん……っ!」
と。
「おぉぉぉぉぉぉ!!!!! ついに聖女と聖騎士の召喚に成功したぞ!」
「素晴らしい!」
「これでこの国は救われるに違いない!」
「万歳! 万歳!」
なるほど、状況はだいたい把握した、と頭の中では思っていても、こうも奇怪な状況に出会うと人というものはとりあえずなにか喋るものである。とりわけ関西人は。
「……まじで意味わからへん、ここどこなんよ」
そしてそれは隣にいる幼馴染も勿論同じであった。
「それな。ほんまにここどこやねん」
ははっ、と諦めの混じった笑みがつい出てきた。ちなみに顔は全く笑っていない。これが噂の異世界転移ってやつね。確かに流行ってるけど! 流行ってるけどこれは違うだろ。関西人だからって何でも受け入れられると思うなよ、ノリのよさを売りにしてる関西人でもこれは無理だわ。よっしゃ、世界救ったるわ! とはならない。断じてならない。
たくさんのカラフルな髪の毛をお持ちでいらっしゃる方々に、ふわふわで豪華な刺繍のされた赤いカーペット、そしてキラキラすぎて眩しいシャンデリア。本当に場違いだ。誰が聖女なんだよ。関西弁喋る聖女とか聞いたことないし、もうこの時点で人選ミスだろ。「もう大丈夫です、私がみなさんを救います!」とか私言えないし。私が言ったら「はよどき、今倒したるからな!」になると思う。やっぱり駄目だろ。あぁ、早くも大阪が恋しいわ。通天閣のあたりでたこ焼き食べたい。串カツ行きたい。……え、異世界とか本当に無理なんですけれど。聖女とかやっぱり向いてないって。
と、私も幼馴染の彼も呆然としていれば、なぜか雄叫びを上げて喜んでいたときよりさらに興奮した様子で、豪華な紫の衣装をズルズル引きずってツルッパゲの一人の異世界人(予想)が私達に駆け寄ってきた。どうでもいいけどとても走りにくそうだ。ちなみに一回途中でつんのめって転けかけていた。
「おぉ、あなた達が喋っていらっしゃるのはもしや、あの伝説の聖女と聖騎士が使っていたという『カンサイベン』でしょうか! おぉ、素晴らしい……! もう一度喋っていただけますでしょうか!」
伝説? 再び私達は顔を見合わせた。あぁデジャブ……
そして叫んだ。こういうときでもやはり関西人は関西人なのである。大人しく引き下がっては関西人の血が廃る。
「なにが伝説やねん、意味わからんわ! とりあえずどういうことか説明してくれへんと」
「おぉ、やはり『カンサイベン』ですな…… 素晴らしい、素晴らしい……」
……うん、話が通じない。本当にどうしてくれよう。心からのため息を人目をはばかることなく漏れた。つらい。
◇
そして別室に移動させられた。こんどは大司祭を名乗る真面目そうな男の人が出てきた。だいぶさっきの大騒ぎしていた群衆よりもマトモそうだ。事情を説明してくれ、と言えば申し訳無さそうに詳しく説明を始めてくれる。
「お二人はこの国を魔の手から救うと言われる聖女と聖騎士として召喚されました。このように突然呼び出し、ご迷惑をかけて本当に申し訳ございません。勝手なお願いだとは分かっております。ですが、どうか。どうか、滅びつつあるこの国を救っていただきたいのです……っ!」
なるほどありがち。つまり魔王かなにか、天災級の何かが起こっていてそれを解決してくれということなんだろう。ということはこのときある可能性は2つ。倒したら帰れるパターンと、この世界に馴染んで生きていけというパターン。
「元の世界には戻れるんですか? それかもう戻れなくなってしまってるんか、どっちなんか教えてもらえます?」
「……今のところ、元の世界に戻られた方は歴代で一人もいらっしゃいません……」
「なるほど、ま、なら仕方ないわな。オニーサン責めても何も変わらんしな。――紫苑、諦めても埒が明かへんやろうし、やらへんか? 帰る方法はその間に探せばええ。どうや?」
「……ま、そうやな。こうなったらしゃあないもんな。お兄さん、任せとき。なにすればええかはわからんけどとりあえず頑張ってはみるわ」
まぁ、まだ希望がないわけではないから頑張ろう。どうにかして我々の故郷、大阪に帰るのだ。帰ってたこ焼きと串カツを食べよう。とかと思っているとお兄さんが再び話し始める。
「さすが伝説の二人と同じく『カンサイベン』をお使いになられるだけあります……! こうして頑張ってくださるとは……! これからお二人には婚約していただきお二人で手を取り合い、国の象徴として魔王と戦っていただきたいのです! あぁ、素晴らしい、伝説の再来とは……!」
だから関西弁はただの関西弁でしかないんだってば……! なんて言っても通じないであろうことは分かりきっている。結局この人もまともじゃないのかよ。頬を紅潮させて叫び始めたこの人からゆっくりと目をそらす。異世界ってやっぱり駄目だ、終わってる。
やはり私達はまた顔を見合わせた。そして叫ぶのだ。
「なんでやねん……っ!」
と。
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