鉄壁防空艦隊

ypaaaaaaa

文字の大きさ
1 / 21
プロローグ

プロローグ 1942年6月・ミッドウェー

しおりを挟む
ミッドウェー島を攻略しようとしていた南雲機動部隊はこれまでの戦いとは打って変わって窮地に立たされていた。
「電探が反応!敵編隊が防空圏内に侵入してきます!」
航空参謀の源田が鬼気迫る表情で南雲に報告してくる。
現在、主力空母6隻の艦上においては艦爆や艦攻などの兵装が対艦ように転換されている真っ最中であり、可燃物が満載されていた。
ここにアメリカ軍の1000ポンド爆弾を1発でも喰らえば6隻の空母はたちまち大炎上することは目に見えていた。
下手をすればそのまま撃沈されてしまうかもしれない。
「即刻、戦闘機隊をあげよ」、
南雲はどこか緊張感に欠ける声でそう言った。

南雲機動部隊は10隻の空母で構成されている。
赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴の正規空母に大鷹、雲鷹、翔鷹、瑞鷹の防空空母。
これらが南雲の指揮の下にあった。
防空空母というのは文字通り防空戦に特化した空母のことである。
艦爆や艦攻は一切完済せずに艦載機は戦闘機だけである。
だからこそ島型環境をもつ軽空母並みの排水量でも51機の零戦が艦載できる。
これと6隻の正規空母の零戦を合わせると200機を優に超える。
次々と飛行甲板を蹴って空に舞い上がっていく零戦隊は電探に導かれて敵編隊へ向かって行った。


航空戦は南雲艦隊からおおよそ30海里手前で始まった。
迎撃に上がれた零戦は100機程度であったが、それでもアメリカ軍攻撃隊のF4Fより数で大きく優っていた。
F4Fとの空戦に巻き込まれなかった零戦隊は次々にTBDやSBDに襲いかかって、片っ端から撃墜して回った。
だが、全機を撃ち落とすことはできず40機程度の攻撃隊が俄然艦隊へ向けて進撃する。
そして目視で南雲艦隊を発見した攻撃隊はそのままの勢いで攻撃態勢に入ろうとした。
すると大量の対空砲弾が攻撃隊目がけて飛んできて、たちまち30機以上を撃墜した。
この攻撃は2隻の金剛型防空戦艦からの砲撃であったが、これほどの大戦果を叩き出せたのは一重にその砲弾のおかげであった。
帝国海軍が防空艦隊を建設する最中に開発された対空特化の砲弾。
それが零式対空弾である。
この零式対空弾には電探が内蔵されており、近くに物体を探知するとその時点で爆発し、破片で敵機を撃墜する代物であった。
だが、電探を製造するには真空管などが必要であるが資源の乏しい日本ではやはり真空管の調達は困難を極める。
そこで、数の少ない戦艦の砲弾に搭載することで破壊力と費用を調整した。
結果的にこれがあったから、金剛と榛名は30機もの敵機を撃墜することができたのである。
さて、残り9機となった攻撃隊だが、彼らは果敢にも攻撃を継続。
けれども攻撃位置につく前に、防空巡の放つ15.5㎝級の零式対空弾や10cm高角砲や37mm機関砲の餌食となり、20mm機銃の出番は全くなくついに攻撃隊はその本分を果たすことができなかったのである。
「今度はこちらの番だな」
南雲の声は先ほどと違い、はっきりとしていた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

戦艦大和航空科 大艦巨砲のその裏に

みにみ
歴史・時代
46cm三連装三基九門という世界に類を見ない巨砲を搭載し 大艦巨砲主義のトリを飾るような形で太平洋の嵐へと 生まれ出た日本海軍の技術力の粋を集結した大和型戦艦一番艦大和 その巨砲の弾着観測を行う航空科 あまり注目されることのない彼らだが竣工から沈没まで哨戒や対潜に多く従事してきた そんな彼らの物語をご覧あれ

万能艦隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
第一次世界大戦において国家総力戦の恐ろしさを痛感した日本海軍は、ドレットノート竣工以来続いてきた大艦巨砲主義を早々に放棄し、個艦万能主義へ転換した。世界の海軍通はこれを”愚かな判断”としたが、この個艦万能主義は1940年代に置いてその真価を発揮することになる…

鹵獲航空母艦 龍鶴 太平洋へ

みにみ
歴史・時代
南太平洋海戦で日本航空隊によって撃破された米空母ホーネット 日本海軍は彼の艦を鹵獲 正規空母龍鶴として三航戦に編入 生まれた国の敵として波乱の太平洋を駆け抜ける

未来を見た山本五十六、帝国を勝利へ導く

たか
歴史・時代
1928年12月10日の空母赤城艦長の就任式終了後、赤城の甲板に立ち夕暮れを見てた時だった。ふと立ちくらみのような眩暈が起きた瞬間、山本五十六「それ」を見た。 燃え上がる広島と長崎、硫黄島で散る歩兵、ミッドウェーで沈む空母、そして1943年ブーゲンビル島上空で戦死した事…… あまりに酷い光景に五十六は倒れそうになった、「これは夢ではない……現実、いやこれは未来か」 その夜、山本五十六は日記に記した。 【我、帝国の敗北を見たり。未来を変えねば、祖国は滅ぶ】

帝国夜襲艦隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
1921年。すべての始まりはこの会議だった。伏見宮博恭王軍事参議官が将来の日本海軍は夜襲を基本戦術とすべきであるという結論を出したのだ。ここを起点に日本海軍は徐々に変革していく…。 今回もいつものようにこんなことがあれば良いなぁと思いながら書いています。皆さまに楽しくお読みいただければ幸いです!

小日本帝国

ypaaaaaaa
歴史・時代
日露戦争で判定勝ちを得た日本は韓国などを併合することなく独立させ経済的な植民地とした。これは直接的な併合を主張した大日本主義の対局であるから小日本主義と呼称された。 大日本帝国ならぬ小日本帝国はこうして経済を盤石としてさらなる高みを目指していく… 戦線拡大が甚だしいですが、何卒!

強いられる賭け~脇坂安治軍記~

恩地玖
歴史・時代
浅井家の配下である脇坂家は、永禄11年に勃発した観音寺合戦に、織田・浅井連合軍の一隊として参戦する。この戦を何とか生き延びた安治は、浅井家を見限り、織田方につくことを決めた。そんな折、羽柴秀吉が人を集めているという話を聞きつけ、早速、秀吉の元に向かい、秀吉から温かく迎えられる。 こうして、秀吉の家臣となった安治は、幾多の困難を乗り越えて、ついには淡路三万石の大名にまで出世する。 しかし、秀吉亡き後、石田三成と徳川家康の対立が決定的となった。秀吉からの恩に報い、石田方につくか、秀吉子飼いの武将が従った徳川方につくか、安治は決断を迫られることになる。

処理中です...