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プロローグ
プロローグ 1942年6月・ミッドウェー
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ミッドウェー島を攻略しようとしていた南雲機動部隊はこれまでの戦いとは打って変わって窮地に立たされていた。
「電探が反応!敵編隊が防空圏内に侵入してきます!」
航空参謀の源田が鬼気迫る表情で南雲に報告してくる。
現在、主力空母6隻の艦上においては艦爆や艦攻などの兵装が対艦ように転換されている真っ最中であり、可燃物が満載されていた。
ここにアメリカ軍の1000ポンド爆弾を1発でも喰らえば6隻の空母はたちまち大炎上することは目に見えていた。
下手をすればそのまま撃沈されてしまうかもしれない。
「即刻、戦闘機隊をあげよ」、
南雲はどこか緊張感に欠ける声でそう言った。
南雲機動部隊は10隻の空母で構成されている。
赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴の正規空母に大鷹、雲鷹、翔鷹、瑞鷹の防空空母。
これらが南雲の指揮の下にあった。
防空空母というのは文字通り防空戦に特化した空母のことである。
艦爆や艦攻は一切完済せずに艦載機は戦闘機だけである。
だからこそ島型環境をもつ軽空母並みの排水量でも51機の零戦が艦載できる。
これと6隻の正規空母の零戦を合わせると200機を優に超える。
次々と飛行甲板を蹴って空に舞い上がっていく零戦隊は電探に導かれて敵編隊へ向かって行った。
航空戦は南雲艦隊からおおよそ30海里手前で始まった。
迎撃に上がれた零戦は100機程度であったが、それでもアメリカ軍攻撃隊のF4Fより数で大きく優っていた。
F4Fとの空戦に巻き込まれなかった零戦隊は次々にTBDやSBDに襲いかかって、片っ端から撃墜して回った。
だが、全機を撃ち落とすことはできず40機程度の攻撃隊が俄然艦隊へ向けて進撃する。
そして目視で南雲艦隊を発見した攻撃隊はそのままの勢いで攻撃態勢に入ろうとした。
すると大量の対空砲弾が攻撃隊目がけて飛んできて、たちまち30機以上を撃墜した。
この攻撃は2隻の金剛型防空戦艦からの砲撃であったが、これほどの大戦果を叩き出せたのは一重にその砲弾のおかげであった。
帝国海軍が防空艦隊を建設する最中に開発された対空特化の砲弾。
それが零式対空弾である。
この零式対空弾には電探が内蔵されており、近くに物体を探知するとその時点で爆発し、破片で敵機を撃墜する代物であった。
だが、電探を製造するには真空管などが必要であるが資源の乏しい日本ではやはり真空管の調達は困難を極める。
そこで、数の少ない戦艦の砲弾に搭載することで破壊力と費用を調整した。
結果的にこれがあったから、金剛と榛名は30機もの敵機を撃墜することができたのである。
さて、残り9機となった攻撃隊だが、彼らは果敢にも攻撃を継続。
けれども攻撃位置につく前に、防空巡の放つ15.5㎝級の零式対空弾や10cm高角砲や37mm機関砲の餌食となり、20mm機銃の出番は全くなくついに攻撃隊はその本分を果たすことができなかったのである。
「今度はこちらの番だな」
南雲の声は先ほどと違い、はっきりとしていた。
「電探が反応!敵編隊が防空圏内に侵入してきます!」
航空参謀の源田が鬼気迫る表情で南雲に報告してくる。
現在、主力空母6隻の艦上においては艦爆や艦攻などの兵装が対艦ように転換されている真っ最中であり、可燃物が満載されていた。
ここにアメリカ軍の1000ポンド爆弾を1発でも喰らえば6隻の空母はたちまち大炎上することは目に見えていた。
下手をすればそのまま撃沈されてしまうかもしれない。
「即刻、戦闘機隊をあげよ」、
南雲はどこか緊張感に欠ける声でそう言った。
南雲機動部隊は10隻の空母で構成されている。
赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴の正規空母に大鷹、雲鷹、翔鷹、瑞鷹の防空空母。
これらが南雲の指揮の下にあった。
防空空母というのは文字通り防空戦に特化した空母のことである。
艦爆や艦攻は一切完済せずに艦載機は戦闘機だけである。
だからこそ島型環境をもつ軽空母並みの排水量でも51機の零戦が艦載できる。
これと6隻の正規空母の零戦を合わせると200機を優に超える。
次々と飛行甲板を蹴って空に舞い上がっていく零戦隊は電探に導かれて敵編隊へ向かって行った。
航空戦は南雲艦隊からおおよそ30海里手前で始まった。
迎撃に上がれた零戦は100機程度であったが、それでもアメリカ軍攻撃隊のF4Fより数で大きく優っていた。
F4Fとの空戦に巻き込まれなかった零戦隊は次々にTBDやSBDに襲いかかって、片っ端から撃墜して回った。
だが、全機を撃ち落とすことはできず40機程度の攻撃隊が俄然艦隊へ向けて進撃する。
そして目視で南雲艦隊を発見した攻撃隊はそのままの勢いで攻撃態勢に入ろうとした。
すると大量の対空砲弾が攻撃隊目がけて飛んできて、たちまち30機以上を撃墜した。
この攻撃は2隻の金剛型防空戦艦からの砲撃であったが、これほどの大戦果を叩き出せたのは一重にその砲弾のおかげであった。
帝国海軍が防空艦隊を建設する最中に開発された対空特化の砲弾。
それが零式対空弾である。
この零式対空弾には電探が内蔵されており、近くに物体を探知するとその時点で爆発し、破片で敵機を撃墜する代物であった。
だが、電探を製造するには真空管などが必要であるが資源の乏しい日本ではやはり真空管の調達は困難を極める。
そこで、数の少ない戦艦の砲弾に搭載することで破壊力と費用を調整した。
結果的にこれがあったから、金剛と榛名は30機もの敵機を撃墜することができたのである。
さて、残り9機となった攻撃隊だが、彼らは果敢にも攻撃を継続。
けれども攻撃位置につく前に、防空巡の放つ15.5㎝級の零式対空弾や10cm高角砲や37mm機関砲の餌食となり、20mm機銃の出番は全くなくついに攻撃隊はその本分を果たすことができなかったのである。
「今度はこちらの番だな」
南雲の声は先ほどと違い、はっきりとしていた。
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