連合艦隊司令長官、井上成美

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”明治の頭”からの脱却

不拡大方針の完遂

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第2次上海事変が10月中に日本の勝利という形で終わったため、政府は不拡大方針の維持を表明。
民国政府との停戦交渉を続けることとした。
もっとも山本が陸軍大臣の杉山元と作戦課長の武藤章をともに事変不拡大派であった石原参謀本部第1部長がねじ伏せた結果でもあった。
そしてもろもろの交渉が北京の紫禁城で行われる運びとなった。


石原は山本を通じて首相であった近衛文麿に交渉団に同行させて欲しいという嘆願書を提出。
即刻受理され石原は広田弘毅外相以下12名とともに紫禁城に赴いていた。
「今回の事変は偶発的なものであり、お互い予期せぬ出来事であったと考えています。ですので我々からは特に要求はしません。」
広田は開口一番こういった。
つまり交渉の主導権を民国側に譲るということだった。
だが民国もおいそれと何か要求できる状況ではなかった。
理由は国際世論である。
第2次上海事変で日本軍はある程度人道に則った振る舞いをした。だが国民党軍は大々的に民間人への無差別空襲を実行し、あろうことかフランス租界へ誤爆してしまった。
これに対してフランスと同様に中国大陸に権益を持つ列強は不信感を募らせていた。
もしここで日本に何か要求しそれが拒絶された場合、傍から見れば”非文明国たる民国が文明国たる日本に一方的に要求した”という構図が出来上がる。
前提として満州が日本に占領されているとしても、それは民国の国際的立場を悪化させることに間違いなかった。
「…そうでしたら、我々からも特に何か要求することはありません。」
交渉団の団長だった何応欽がそれを口にした瞬間、北支事変は終結した。
その日中に日本軍は北京およびその周辺から撤退し戦闘態勢を解いた。
この報を聞き、国民は日露戦争を彷彿とさせるような結果に怒りこそ見られたものの僅か3カ月戦闘であり国民の負担は無いに等しかった。
1か月もすると落ち着きを取り戻していった。


「北支での鹵獲品の中で興味深いものがありました。」
第3艦隊の長谷川清司令から報告を聞きながら井上はその鹵獲品がある倉庫に向かっていた。
そして扉を開ける。
「これが37㎜機関砲か。」
そこにはドイツ製の37㎜機関砲だった。
「これで高角砲と機銃の間を埋めることが可能です。」
長谷川の言葉に井上はうなずいて返す。
もっとも国産化してからの話ではあるが艦艇の防空能力が飛躍的に上昇したのは間違いなかった。
ここでふと井上の脳裏にあることが浮かんだ。
「この37㎜砲を航空機に搭載すれば重爆などを一撃で撃破できるのではないか?」
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