連合艦隊司令長官、井上成美

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終戦へ向けて

ハルゼーの賭け

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日本軍がハワイに向けて出撃したことはすぐにアメリカ軍の知る所となった。
「太平洋艦隊は洋上で敵艦隊を攻撃してもらいたい」
ハワイ守備隊司令のウォルター・クルーガー大将はハルゼーにそう頼んだ。
「…それしかないだろう」
ハルゼーは苦虫を嚙み潰したかのような顔で了承した。


太平洋艦隊は硫黄島沖海戦からの敗北から立て直しつつあった。
具体的にはエセックス級空母のオスカニー、レプライザル、アンティータム、プリンストン、シャングリラと護衛空母10隻が太平洋艦隊の指揮下に入っており、硫黄島沖海戦を生き残ったインデペンデンス級5隻と合同していた。
また上陸支援中に中破したミズーリも戦線に復帰していた。
これに加え艦上戦闘機を一気にF8Fベアキャットに更新した。
ベアキャットは雷電に対して速度において大きく上回っており、また武装や旋回性能は互角だった。
ただ艦載機としては汎用性に欠け、航続距離では雷電に大きく負けていた。
それでも太平洋艦隊の誰もが”硫黄島沖のような大敗はない”と感じるほどの性能であった。
そしてハルゼーはこれらの部隊を第58任務部隊として再編し出撃した。


「長官、伊58が敵艦隊の出向を確認しました」
淵田の報告に山口はすぐに命令を飛ばした。
「彩雲を発進させろ。また攻撃隊は攻撃準備」
彩雲はすでに甲板上にありものの5分で24機の彩雲が伊58が報告した海域に向かっていった。


日本とアメリカの偵察力は大きく差があった。
日本軍は偵察専用の機体を運用し、その巡航速度もジェット機ということもあり時速500㎞をたたき出していた。
これに対してアメリカ軍は急降下爆撃機のヘルダイバーや写真偵察機型のヘルキャットを偵察に出すことが多く、これらは巡航速度が時速300㎞ほどであった。
この200㎞の速度差はすぐに結果となって現れる。


『敵大艦隊見ユ。ハワイ沖200海里』
発信したのは神鷹の彩雲だった。
「なるほど…敵艦隊はハワイの航空隊の援護圏内にいるのだな」
山口は少し悩んだ末に命令する。
「第1次攻撃隊発艦せよ。但し、全て橘花によって編成する」
淵田は最初は不思議そうな顔をしたがすぐに理解した。
そうして橘花312機からなる第1次攻撃隊は一路敵艦隊に向けて突き進んでいった。


「敵機に発見されました」
その報告を聞いてハルゼーは命令を下す。
「すでに偵察機は放ってある。攻撃隊は順次出撃し偵察機が発見した敵艦隊に攻撃せよ」
つまりどこにいるか分からない艦隊を偵察機が発見する可能性に賭けて攻撃隊を送り出したのだ。
普段のハルゼーならこのようなパイロットの命を危険にさらすことはしなかっただろう。
だが仮に攻撃機を残していたとしても敵攻撃機の空襲で失われる可能性が高く、ハルゼーは心を鬼にした。
「神よ、彼らにどうか道を示し給え」
ハルゼーはただそう願った。
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