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第2部
TAKE37 過去編⑤〜恋した鬼からの頼み事〜
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斗真が斗真であることに違いない。
しかし恋というのは確かに少しずつ彼を変えていった。
たとえばファッション。
『なぁ…こっちのジーパンとこの靴の組み合わせ。有り?無し?』
『…いーじゃね?』
『真面目に答えろよ!!』
たとえば進路。
『斗真…お前ココを受験すんのか?』
『ん?おぉ、まぁな!!』
『まぁなって…ここ進学校だぞ?』
『おぉ!!頑張るよ!!』
たとえば表情。
『…なんだよ。斗真が珍しく溜め息ついて。』
『ん?今ついてたか?』
『あぁ、おもいっきり。』
『そうか…うん、そっかー…。はぁー』
『…』
はっきりと"その子の話"を聞いたわけではないが、おそらく女絡みなのであろうと亜門は予想がついた。
『なぁ、その子に告白したんだろ?』
『ん…まぁ…そうだな…。俺の気持ちは伝えた。』
『でも彼女じゃないんだろ?』
『…………まぁそうだ。』
『お前フラれ…』
『ーてないから!!!!まだフラれてないから!!!!』
『…どういう状況?』
『答えはもらってない。聞いたらそれこそフラれると思ったから…』
『から?』
『返事はいいからって…俺が好きなだけだからって…』
『…それは向こうはお前をストーカーかなんかと思ってるんじゃ?』
『……マジでか!?』
そう言って目を見開いてから項垂れる斗真を見て、それでも楽しそうに見えた。
(斗真が恋...ね~…)
それだけで相手の女の子がどんなのか興味が沸いた。
『なぁ、どんな子?可愛いのか?』
『ん…おぉ!!かなりな!!でも俺は顔に惚れたわけじゃねぇけどな!!』
『ふーん。』
亜門の相槌に斗真は『あー…』と声を出した。
『あと、あれ!!なんか似てるよ、亜門に!!!!』
『……はぁ?』
『顔は違うんだけど…性格?…も違うな。なんつーか似てんだよ!!』
『……俺に似た女に惚れるとか……気色悪い…』
『ちげぇよ!!てめぇに惚れたわけじゃねぇっての!!』
そう言って笑う斗真はなんだか格好良くなったような気がした。
そして斗真は進学校への受験をひたすら頑張っていた。
彼女に釣り合うようになりたいと。
斗真だけではなく、学校の雰囲気は受験のピリピリや中学最後のイベントへの意気込みや高校への期待などが混ざって、全体的にテンションが高ぶっていた。
(高校…か。)
亜門は未来を考えるだけで胸が苦しくなった。
(仕方がない…仕方がない…)
そう自分に言い聞かせた。
(お金がない…勉強が好きでもないし…なりたいものもない…)
"俺?そうだな……昔はパイロットとか言ってたな。"
"…俺は何になりたいとか、自分で考えたことなかったな…"
斗真と小学生の時の会話。
自分はあの頃と変わっていない。
波古山家から離れて自分がしたかったこと、なりたかったものは何なのだろうか。
ただ斗真と泰成の優しいぬるま湯に甘えた生活を送っていただけだろうか。
(俺の…したいこと。)
亜門は残りの学生生活を考えることに使った。
でも今さら夢なんて思い付かなかった。
今まで家を離れたかっただけ、ただ時が流れて、喧嘩を買って、自暴自棄にもなって、何も考えず今日まできた自分を思い返す。
そしてただ斗真を見て思った。
冬休みに入り、受験もラストスパートとなった。
未だに好きな子との進展はないが、斗真の好きの情熱は衰えなかった。
"赤鬼のトーマ"と恐れられた斗真が勉強に打ち込んでいるのがその証拠。
そんな斗真を見て思ったのだ。
『俺ももっと色んなことしたかった、かも…』
亜門のビルで勉強していた斗真はその呟きに手を止めた。
『ん?』
『もっと中学生らしいこと…色々やっとけばよかった…って思っただけ。なんとなく…』
斗真はいつもみたくはしゃいだり茶化したりせずに、黙って亜門を見た。
だから亜門は言葉を続けた。
『授業サボってばっか…体育祭も文化祭もロクに出なかった。』
『行事はしょうがねぇだろ。お祭り騒ぎに便乗して色んな奴らが俺らを派手に狙うんだから。周りに迷惑かけらんねぇし…』
『…うん、まぁそうなんだけど。でもそれに俺、3年間いたのに同じ学年のやつ…クラスの奴らとほとんど喋らず終わっちまうのな…』
『…』
『俺…小学校の時も友達いなかった。家のせいにしてたけど…』
亜門はソファーの背もたれに体を全て預けて、天井を仰ぐ。
『勉強が喧嘩にすり変わっただけで…小学生の時となんら変わらねぇ…俺は何のために…』
『亜門!!』
斗真の声にハッと気付く。
あの時と何も変わってないことはない。
だから亜門は斗真に向かって笑った。
『いや…こっちの中学に来れてよかったとは本気で思ってる。小学生の時よりも斗真と色んなバカも出来たし…』
斗真が『青春!!』と訂正したが亜門は笑って無視をした。
『泰成さんと過ごした日も…俺にとってはホントに…なんつーか…』
大切なものということ以上に表現したい言葉が浮かばず、涙を浮かべた。
うまく言えないがそれ以上何かを言ったら何故か泣きそうになった。
黙っていたら、斗真が頷いた。
『うん、わかるよ。わかる。』
それだけで亜門はホッとした。
『まぁ、だから余計にお前とか見てると色々他にもやるのも…悪くなかったかもなって。』
『ん?』
『もっと友達作ったり…恋したりな。』
亜門はそう言って斗真をからかった。
斗真も笑った。
『なぁ!!亜門!!』
『何だ?』
『やっぱお前も高校行こうぜ!!』
『あ?』
『亜門!!お前も来いよ!!高校。うまく問題を起こさず大人しくしてたらお前だって友達出来るよ。今しか出来ない青春って最高だぞ?』
『ははは…また青春かよ。』
『おぉ!!今って"しょうがくきん"ってのもあるだろ!?』
『…あれは頭のいいやつが適応出来んだよ。』
『ちゃんと調べたら他にもあるって!!』
『…あぁ。』
『行こう!!高校!!青春しようぜ!!』
『……考えとく。』
片方の口角を上げて亜門はそう答えた。
しかし亜門はもう考えが固まっていた。
(来年からバイトも始めて、一年お金を貯めよう。それからでも高校に行こう。)
年が明けてから、日々はより早く過ぎていった。
担任から就職も進められたが、勉強の時間も欲しかったから亜門はフリーターとなって働くことを決めた。
そして斗真は志望の進学校の合格が決まった。
その内容のメールが届いてから、亜門は祝いのジュースを持って斗真の家に向かった。
しかし玄関を開けられ、亜門は驚いた。
『よぉ!!亜門入れよ!!』
『と…うま!?お前…』
斗真の髪が黒に戻っていたのだ。
部屋に通されてからも、斗真の髪色に違和感があって落ち着かなかった。
目を細めてその頭をジロジロ見ていたら斗真がニヤッと笑った。
『どうだ?俺の黒髪。』
『え?あ…まぁ…』
『懐かしい?』
『そうだな。幼くなった。』
『はは。なんじゃそりゃ。』
コップにジュースを注いでから、二人で乾杯した。
『とりあえずおめでとう!!』
『おぉ!!サンキュ。』
そして亜門が気になることを切り出した。
『斗真のそれ…進学校決まったから戻したのか?』
『ん?髪か?あー…まぁ、それもあるけど…』
『けど?』
『俺が鬼である必要はもうねぇだろうな…って思って。』
『?』
『お前はもう"デーモン"なんかじゃねぇよ。』
『…斗真。』
斗真は亜門に向かって笑い、自分の髪に手をやる。
『亜門はもう落ちてなんかねぇし、自棄にもなんねぇだろ。喧嘩よりもしたいことも見つかったろ?』
亜門はゆっくり頷いた。
斗真の言葉に少し感動しそうになった。
『もう…お前は大丈夫だよ。』
『……あぁ。』
『早くバイト決めろよ、プー!!』
『っるせ。てめぇこそ早く彼女落とせよ。』
『っるせ。』
そしてまた春がくる。
亜門と斗真、それぞれの新生活が始まった。
前ほど会うこともなかったが、時間が合えば以前と変わらないかのように遊びに行ったりした。
泰成の三回忌も無事に終わり、高校でいう夏休み目前となった時、ファーストフードで斗真は真剣な面持ちでいた。
亜門はポテトをつまんで首を傾げた。
『なんだ…期末テストが厳しかったのか?』
黒髪がすっかり馴染んできた斗真は首を横に振った。
亜門は眉間に皺を寄せて目を細めた。
そしてしばらくして斗真は口を開いた。
『なぁ…亜門はここ最近喧嘩、してるか?』
亜門は斗真から久々に『喧嘩』というワードが出て驚いた。
『いや…してねぇ。ほぼ…全く。』
学生と生活リズムが微妙に違うのか亜門は喧嘩に巻き込まれることは皆無になったといってもいいほどだった。
売ることはもちろん売られる場面などに遭遇しなくなった。
進学校に行き、見た目も変わって気付かれないのか、それは斗真も同じのようだった。
斗真は亜門の返事に一人納得したように頷いた。
『だよな。このまま喧嘩しなくなったら、周りも自然に俺らを忘れていって…俺らが望んでた喧嘩だけじゃない青春も出来るよな。』
『いや…俺はそこまで青春がしたいとは言ってない。てか…てめぇはさっきから何が言いたいわけ?』
斗真は注文したメニューに未だ手をつけず、ドリンクに汗をかいていた。
『このまま喧嘩しないのが一番に決まってる。来年から高校に行ってやり直そうとしてる亜門なら尚更…でも…』
斗真は亜門に深く頭を下げた。
『頼む!!!!俺に力を貸してくれ!!!!』
『…』
『ぜってぇ倒したい奴がいる!!!!ぜってぇに守りたい奴がいんだよ!!!!』
『わかった。』
『…え?』
亜門はドリンクに口をつける。
『いいよ。お前が言うなら。』
亜門は即答した。
斗真には返しきれない感謝があり、亜門にかけがえのない日々をくれた。
断る理由なんてあるはずがなかった。
"お前は優しいし、喧嘩も強ぇし、物事もよく考えられる。いつか誰かを守ってやれるよ。"
そして何故か泰成の言葉を思い出した。
そして夏休みになり、斗真と黒岩高校との決闘の日時が決まった。
しかし恋というのは確かに少しずつ彼を変えていった。
たとえばファッション。
『なぁ…こっちのジーパンとこの靴の組み合わせ。有り?無し?』
『…いーじゃね?』
『真面目に答えろよ!!』
たとえば進路。
『斗真…お前ココを受験すんのか?』
『ん?おぉ、まぁな!!』
『まぁなって…ここ進学校だぞ?』
『おぉ!!頑張るよ!!』
たとえば表情。
『…なんだよ。斗真が珍しく溜め息ついて。』
『ん?今ついてたか?』
『あぁ、おもいっきり。』
『そうか…うん、そっかー…。はぁー』
『…』
はっきりと"その子の話"を聞いたわけではないが、おそらく女絡みなのであろうと亜門は予想がついた。
『なぁ、その子に告白したんだろ?』
『ん…まぁ…そうだな…。俺の気持ちは伝えた。』
『でも彼女じゃないんだろ?』
『…………まぁそうだ。』
『お前フラれ…』
『ーてないから!!!!まだフラれてないから!!!!』
『…どういう状況?』
『答えはもらってない。聞いたらそれこそフラれると思ったから…』
『から?』
『返事はいいからって…俺が好きなだけだからって…』
『…それは向こうはお前をストーカーかなんかと思ってるんじゃ?』
『……マジでか!?』
そう言って目を見開いてから項垂れる斗真を見て、それでも楽しそうに見えた。
(斗真が恋...ね~…)
それだけで相手の女の子がどんなのか興味が沸いた。
『なぁ、どんな子?可愛いのか?』
『ん…おぉ!!かなりな!!でも俺は顔に惚れたわけじゃねぇけどな!!』
『ふーん。』
亜門の相槌に斗真は『あー…』と声を出した。
『あと、あれ!!なんか似てるよ、亜門に!!!!』
『……はぁ?』
『顔は違うんだけど…性格?…も違うな。なんつーか似てんだよ!!』
『……俺に似た女に惚れるとか……気色悪い…』
『ちげぇよ!!てめぇに惚れたわけじゃねぇっての!!』
そう言って笑う斗真はなんだか格好良くなったような気がした。
そして斗真は進学校への受験をひたすら頑張っていた。
彼女に釣り合うようになりたいと。
斗真だけではなく、学校の雰囲気は受験のピリピリや中学最後のイベントへの意気込みや高校への期待などが混ざって、全体的にテンションが高ぶっていた。
(高校…か。)
亜門は未来を考えるだけで胸が苦しくなった。
(仕方がない…仕方がない…)
そう自分に言い聞かせた。
(お金がない…勉強が好きでもないし…なりたいものもない…)
"俺?そうだな……昔はパイロットとか言ってたな。"
"…俺は何になりたいとか、自分で考えたことなかったな…"
斗真と小学生の時の会話。
自分はあの頃と変わっていない。
波古山家から離れて自分がしたかったこと、なりたかったものは何なのだろうか。
ただ斗真と泰成の優しいぬるま湯に甘えた生活を送っていただけだろうか。
(俺の…したいこと。)
亜門は残りの学生生活を考えることに使った。
でも今さら夢なんて思い付かなかった。
今まで家を離れたかっただけ、ただ時が流れて、喧嘩を買って、自暴自棄にもなって、何も考えず今日まできた自分を思い返す。
そしてただ斗真を見て思った。
冬休みに入り、受験もラストスパートとなった。
未だに好きな子との進展はないが、斗真の好きの情熱は衰えなかった。
"赤鬼のトーマ"と恐れられた斗真が勉強に打ち込んでいるのがその証拠。
そんな斗真を見て思ったのだ。
『俺ももっと色んなことしたかった、かも…』
亜門のビルで勉強していた斗真はその呟きに手を止めた。
『ん?』
『もっと中学生らしいこと…色々やっとけばよかった…って思っただけ。なんとなく…』
斗真はいつもみたくはしゃいだり茶化したりせずに、黙って亜門を見た。
だから亜門は言葉を続けた。
『授業サボってばっか…体育祭も文化祭もロクに出なかった。』
『行事はしょうがねぇだろ。お祭り騒ぎに便乗して色んな奴らが俺らを派手に狙うんだから。周りに迷惑かけらんねぇし…』
『…うん、まぁそうなんだけど。でもそれに俺、3年間いたのに同じ学年のやつ…クラスの奴らとほとんど喋らず終わっちまうのな…』
『…』
『俺…小学校の時も友達いなかった。家のせいにしてたけど…』
亜門はソファーの背もたれに体を全て預けて、天井を仰ぐ。
『勉強が喧嘩にすり変わっただけで…小学生の時となんら変わらねぇ…俺は何のために…』
『亜門!!』
斗真の声にハッと気付く。
あの時と何も変わってないことはない。
だから亜門は斗真に向かって笑った。
『いや…こっちの中学に来れてよかったとは本気で思ってる。小学生の時よりも斗真と色んなバカも出来たし…』
斗真が『青春!!』と訂正したが亜門は笑って無視をした。
『泰成さんと過ごした日も…俺にとってはホントに…なんつーか…』
大切なものということ以上に表現したい言葉が浮かばず、涙を浮かべた。
うまく言えないがそれ以上何かを言ったら何故か泣きそうになった。
黙っていたら、斗真が頷いた。
『うん、わかるよ。わかる。』
それだけで亜門はホッとした。
『まぁ、だから余計にお前とか見てると色々他にもやるのも…悪くなかったかもなって。』
『ん?』
『もっと友達作ったり…恋したりな。』
亜門はそう言って斗真をからかった。
斗真も笑った。
『なぁ!!亜門!!』
『何だ?』
『やっぱお前も高校行こうぜ!!』
『あ?』
『亜門!!お前も来いよ!!高校。うまく問題を起こさず大人しくしてたらお前だって友達出来るよ。今しか出来ない青春って最高だぞ?』
『ははは…また青春かよ。』
『おぉ!!今って"しょうがくきん"ってのもあるだろ!?』
『…あれは頭のいいやつが適応出来んだよ。』
『ちゃんと調べたら他にもあるって!!』
『…あぁ。』
『行こう!!高校!!青春しようぜ!!』
『……考えとく。』
片方の口角を上げて亜門はそう答えた。
しかし亜門はもう考えが固まっていた。
(来年からバイトも始めて、一年お金を貯めよう。それからでも高校に行こう。)
年が明けてから、日々はより早く過ぎていった。
担任から就職も進められたが、勉強の時間も欲しかったから亜門はフリーターとなって働くことを決めた。
そして斗真は志望の進学校の合格が決まった。
その内容のメールが届いてから、亜門は祝いのジュースを持って斗真の家に向かった。
しかし玄関を開けられ、亜門は驚いた。
『よぉ!!亜門入れよ!!』
『と…うま!?お前…』
斗真の髪が黒に戻っていたのだ。
部屋に通されてからも、斗真の髪色に違和感があって落ち着かなかった。
目を細めてその頭をジロジロ見ていたら斗真がニヤッと笑った。
『どうだ?俺の黒髪。』
『え?あ…まぁ…』
『懐かしい?』
『そうだな。幼くなった。』
『はは。なんじゃそりゃ。』
コップにジュースを注いでから、二人で乾杯した。
『とりあえずおめでとう!!』
『おぉ!!サンキュ。』
そして亜門が気になることを切り出した。
『斗真のそれ…進学校決まったから戻したのか?』
『ん?髪か?あー…まぁ、それもあるけど…』
『けど?』
『俺が鬼である必要はもうねぇだろうな…って思って。』
『?』
『お前はもう"デーモン"なんかじゃねぇよ。』
『…斗真。』
斗真は亜門に向かって笑い、自分の髪に手をやる。
『亜門はもう落ちてなんかねぇし、自棄にもなんねぇだろ。喧嘩よりもしたいことも見つかったろ?』
亜門はゆっくり頷いた。
斗真の言葉に少し感動しそうになった。
『もう…お前は大丈夫だよ。』
『……あぁ。』
『早くバイト決めろよ、プー!!』
『っるせ。てめぇこそ早く彼女落とせよ。』
『っるせ。』
そしてまた春がくる。
亜門と斗真、それぞれの新生活が始まった。
前ほど会うこともなかったが、時間が合えば以前と変わらないかのように遊びに行ったりした。
泰成の三回忌も無事に終わり、高校でいう夏休み目前となった時、ファーストフードで斗真は真剣な面持ちでいた。
亜門はポテトをつまんで首を傾げた。
『なんだ…期末テストが厳しかったのか?』
黒髪がすっかり馴染んできた斗真は首を横に振った。
亜門は眉間に皺を寄せて目を細めた。
そしてしばらくして斗真は口を開いた。
『なぁ…亜門はここ最近喧嘩、してるか?』
亜門は斗真から久々に『喧嘩』というワードが出て驚いた。
『いや…してねぇ。ほぼ…全く。』
学生と生活リズムが微妙に違うのか亜門は喧嘩に巻き込まれることは皆無になったといってもいいほどだった。
売ることはもちろん売られる場面などに遭遇しなくなった。
進学校に行き、見た目も変わって気付かれないのか、それは斗真も同じのようだった。
斗真は亜門の返事に一人納得したように頷いた。
『だよな。このまま喧嘩しなくなったら、周りも自然に俺らを忘れていって…俺らが望んでた喧嘩だけじゃない青春も出来るよな。』
『いや…俺はそこまで青春がしたいとは言ってない。てか…てめぇはさっきから何が言いたいわけ?』
斗真は注文したメニューに未だ手をつけず、ドリンクに汗をかいていた。
『このまま喧嘩しないのが一番に決まってる。来年から高校に行ってやり直そうとしてる亜門なら尚更…でも…』
斗真は亜門に深く頭を下げた。
『頼む!!!!俺に力を貸してくれ!!!!』
『…』
『ぜってぇ倒したい奴がいる!!!!ぜってぇに守りたい奴がいんだよ!!!!』
『わかった。』
『…え?』
亜門はドリンクに口をつける。
『いいよ。お前が言うなら。』
亜門は即答した。
斗真には返しきれない感謝があり、亜門にかけがえのない日々をくれた。
断る理由なんてあるはずがなかった。
"お前は優しいし、喧嘩も強ぇし、物事もよく考えられる。いつか誰かを守ってやれるよ。"
そして何故か泰成の言葉を思い出した。
そして夏休みになり、斗真と黒岩高校との決闘の日時が決まった。
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