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第2部
TAKE27 好き 前編
しおりを挟む慶介には見やすいだろう観客テントに案内して、小夜はチームテントに戻ることにした。
「じゃあ綱引き終わったらまた来るね!!」
「うん。こっから応援してるよ!!」
小夜は手を振って慶介と別れた。
チームテントでは午後に向けて士気が高まっている。
ワーワーと盛り上がる中、結子が小夜が帰ってきたことに気付いた。
「あ!!おかえり!!昼休みは結局あの男の子と一緒だったの?」
「うん!!ごめんね、勝手に行っちゃって…」
「うぅん!!それは全然いいんだけど…」
結子は小夜の肩に腕を回した。
「ねぇねぇ?一緒にいた子って彼氏?」
好奇心で目をキラキラさせた結子を見て、小夜は苦笑いをした。
「違うよ。友達!!」
小夜のその言葉に結子は手を離した。
「なんだぁ~。つまんない!!」
「つまんないって…。ご期待に添えなくて…」
「ドモくんにも言ってみたけど普通だったし…」
「うん、だからごめん…って亜門に言ったの!?」
思わず声を張った小夜と違って結子は飄々と言いのけた。
「うん!!なんかおもしろいことないかなって…波古山くんに『小夜ちゃんが男の子と一緒に行っちゃったよ』って。」
小夜は嫌な心音が鳴った。
確かに慶介がくることは手紙で言ったが、二人でいたと知られるのはなんだか後ろめたい気持ちになった。
「そ…それで…亜門はなんて?」
「別に?『ふーん』って言って終わった。」
「…」
(そう。手紙に書いたんだから普通それで当たり前じゃん…何を期待してんだか…)
小夜は結子に合わせて笑い、瑞希と仁美とも合流した。
「波古山くん!!写真一緒にとろ!!」
少し離れたところで亜門を呼ぶ声がして小夜はビクッと反応した。
その声の方に顔を向けると奈未が幸人達と一緒にいる亜門と話している姿が見えた。
亜門の背中。
背中はもう…飽きた。
小夜は目を反らして入場門を目指した。
午後の部、最初の種目が綱引きだったのですぐグラウンドへ向かった。
しかしすっかり忘れていたが、亜門も綱引きに参加していた。
一緒に並ぶ亜門を小夜は見ない振りをして綱の各位置についた。
(亜門に対する胸の痛みは亜門を見なかったら大丈夫。でも…なんかどんどん遠い感じ…)
綱の前方、後方を男子で固め中央は女子が並ぶ作戦だ。
小夜も丁度真ん中らへんにいた。
「それでは始めます!!いちについて、よーい……。」
パンッ!!
ピストルの合図が鳴った。
一斉に立ち上がる皆。
応援の「おー!えす!!」の声に合わせて皆引っ張っていく。
勝ってるかも負けてるかもわからない。
ただ闇雲に引っ張っていると、ふと綱の緊張がなくなった。
「「わっ!!??」」
向こうチームが引っ張るのを止めたのか、後ろへ倒れそうになる。
その時、小夜はチームのドミノ倒しに巻き込まれた。
「わっ!?ごめん!!大丈夫?」
小夜の上に倒れて乗っかってきたクラスの女の子は急いで退いて、謝ってきてくれた。
「いてて…うん!!大丈夫です!!」
小夜はとりあえず笑顔でそう答えた。
小夜のチームは負けてしまっていた。
『勝利したチームはグラウンドに残ってください。』
アナウンスによって負けたチームは退場を促された。
小夜はやれやれと立ち上がった。
とたんに足首に激痛が走った。
近くにいた子は「どうしたの?」と聞いてきた。
原因はおそらくさっきのドミノ倒しだ。
それで足が痛いと言えば、倒れてきた子が気にしてしまうのがわかった。
「なんでもないよ!!退場しよ!!」
「そうだね!!負けたの悔しい!!あんなに転けたのに!!」
「あはは…倒れ損だったね。」
小夜は笑顔を作って、自然な歩きを心掛けながらその場を離れた。
亜門と目が合った気がしたが、痛みでそれどころじゃない。
退場してから、小夜は慶介のところへ向かった。
足をどうすればいいのか、どこまで普通に歩く振りをすればいいのか、引っ込みがつかなくそのまま歩いた。
観客テントから小夜を見つけた慶介がこちらに向かってきた。
「小夜。残念だったね…」
「うん…まぁね!!」
小夜が慶介にそう答えた瞬間、後ろから腕を掴まれた。
「……え?」
心臓が高鳴った。
そこに亜門がいた。
「え?あも…。え?」
「お前…」
「え…何?」
こんな近くで亜門と喋っている。
亜門と目と目が合っている。
慶介のことなど頭から吹き飛んだ。
「お前…なんか変じゃねぇか?」
「何が……痛っ!!」
足のこともすっかり忘れて捻挫の方で一歩後ろへ動いてしまった。
それで思わず、声を上げた。
慶介もそれで小夜の足に気付いた。
「え……小夜、足挫いたの?」
「う、うん。実はさっき…」
そう白状すると慶介は慌てたようにキョロキョロした。
「えっと…じゃあ誰か先生…あ、まず水で冷やす?一緒に水道まで…」
「こいつは、」
亜門は小夜の腕を掴んだまま、慶介に向かって言った。
「俺が連れてくから。」
「え?でも俺も一緒に…」
「アンタ、保健室とか何処か知ってんの?」
「え…」
亜門が真っ直ぐ慶介を見据えた。
「だから俺一人でも大丈夫だ。心配かけて悪かったな…」
亜門は小夜の腕を自分の肩に回して、小夜を支えながら歩き出した。
小夜は引きずられるまま、亜門に掴まった。
「亜門…あの、慶介くん残してよかった…のかな?知らない学校なのに」
「子供じゃないんだから、なんとかするだろ。それよりお前の足が先。」
校舎に行くための階段で小夜と亜門は立ち止まった。
そこで亜門は小夜を支える手を離した。
突然掴んだり離したりと一体何なんだと思ったら、亜門は小夜の目の前でしゃがんだ。
小夜がキョトンとしていたら、少し荒い声を出した。
「おら、早く乗れ!!」
「え?」
「乗れって。登れんのかよ……階段!!」
「えっと…おぶってくれるってこと?」
「…嫌なら無理矢理担いでいくけど?」
「乗らせていただきます!!」
担がれるのがなんだか怖くて喰い気味にそう言ったが、小夜はなかなか乗れなかった。
「…重いよ?」
「平気。」
「…失礼します。」
遠かった背中。
飽き飽きしていた背中。
その背中に触れた時、トクンとまた心臓が跳ねた。
亜門の首に手を回してゆっくりと体を預けたら、亜門は小夜を背負って立ち上がった。
「なんで私が怪我したってわかったの?」
「怪我がわかったっつーか…変だったから。」
「変?」
「人見知りの小夜が友達じゃないクラスメイトにタメ語でべらべら喋ってたから…。」
「…」
「すっげぇ違和感だっただけ…」
ドクンドクンと体が熱くなる。
一歩一歩進んでいく亜門に伝わってしまうんではないかと思うが、体を止められない。
少し汗ばんでいるその首筋に小夜は顔を埋めた。
足が遅い亜門。
可愛い熊が似合わない亜門。
蛙にビビっちゃう亜門。
どれもダサくて格好悪いけど、それでもどんなことも出来る人よりも
頭を撫でて
抱きしめて
支えて
背中を貸してくれる
亜門がいい。
小夜はキューッと胸が絞られた。
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