わんもあ!

駿心

文字の大きさ
50 / 66
第2部

TAKE28 平和 後編

しおりを挟む
◇◇◇◇


「小夜、帰るぞ。」


放課後、それだけ言うと小夜も亜門に着いて教室を出る。

朝、病院に行ったという小夜も普通に階段を一人で降りていく。


「ほぼ全快になってよかったな。」

「うん。」


真顔の小夜は前を向いたまま、返事をする。

亜門がジッと見ても目を合わさない。

亜門は頭を掻く。

どうしたものかと悩んで、とりあえず違う話も振った。


「小夜は今週の土日…空いてるか?」

「え?」


ようやくこっちを見た。


「沢田と一緒なんだが、小夜にも聞いてほしいことあんだよ。」


亜門の言葉に小夜はしおしおとまた視線を落としていった。

小夜が口を開いた。


「亜門…私のこと避けてる?」

「はあ?」


一体どこでそうなったんだ?と亜門は眉をひそめた。


「なんで?」

「なんでって…だって…う~ん。」


小夜は俯いて言いづらそうにした。


「…ウザいと思わない?」

「わからないからとりあえず言ってみろ。」

「私は亜門の彼女…っていうことでいいの?」

「…何の確認?」

「うっ…だって体育祭からわりと経ったし、実感もないし……あれは幻!?みたいな…」


亜門は大きな溜め息を吐いた。

それに小夜が焦り出した。


「あ!!やっぱウザいって思った!?ごめん!!だって…わかんないよ!!私…」

「ウザいは思ってない…」

「……"付き合う"を私は知らないし…亜門から何も変化ないし…今までの友達と同じっていうか…むしろ素っ気ない。」


素っ気なくしたつもりはないが、小夜はあの告白から初めて会うことになる昼休みに何もなかったのをキッカケに不安になったのだろう。

小夜はどんどん暗く小さく落ち込んでいった。


「なんか…マジでごめん。私は友達だろうと彼女だろうと独占欲が強いみたい。ごめん…こんな私で…ごめん。」


どんよりという音が似合う空気を纏う小夜に亜門は少し笑ってしまった。


「亜門?」

「ククク…悪りぃ。小夜の…わかりやすいネガティブさが珍しくて。」

「…私もネガティブになることあるよ。」

「ーで、俺らのいつも通りが実感ないってなら…」

「え?」

「小夜はどんなんがご希望だったわけ?」


その問いかけに小夜は亜門をジーッと見て、瞬きをした。

そして真剣に考える素振りをした。


「…私、この土日は基に安静って言われて、基本ずっとベッドだったんだ。」


話が飛んだが、もういつものことなので亜門は話の腰をおらずに黙って聞いた。


「…で、暇だし、私も"付き合う"ってのを一応予習しようと思って…」

「お?」

「土日は恋愛小説や漫画たくさん借りたり買ったりして、たくさん読んだよ!!」

「…………真面目か。」


小夜は自慢気に読んだ小説と漫画の数を言ってくる。


「…それでどんなんだったんだ?」

「キスして、キスして…てかいきなりのキスが多かった!!あと抱き合ってすっごい良い感じの甘い言葉連発だった!!すごいイチャイチャのラブラブだった!!!!」

「へ…へぇー……」

「それですっごい頭のいいライバルが出てきて、その策略によってスレ違ったり、遠恋なったり、お風呂で裸バッタリとかあった。」

「あっそ……」


亜門は自分の額に手を当てる。


(なんか…小夜にまた余計な…しかもどうでもいい知識が増えたな。めんどくせぇ…)


「でもね!!すっごいよかった!!途中、感動で泣いたし!!リュウくんかっこよかった…」

「…誰?」

「主人公の好きな人の友達。」

「友達の方なんだ。」

「もちろんメインキャラのヒロも最高だったよ!!漫画も早く最新刊出ないかな~?」

「…つーか、やっぱり話ズレたし。」

「ん?なんか言った?」


小夜は漫画の続きが楽しみで足取り軽く歩いていた。

亜門は頭を掻きながら、どう言うか迷った。

仕方なく、亜門は小夜に問いかけた。


「予習バッチリの小夜さん。」

「はい、なんでしょう?」

「い…一応参考までに……聞きたいんだが、」

「うん?」

「その中で色々あった……手繋ぐとかキスとか……小夜はしたいと思ったのか?」

「んん!?」

「お…俺と。」


久々にドモッた。

自分のそのダサさに亜門は情けないと思いながら、片手で口元を覆う。

一方、小夜はポカーンとしている。

しばらくすると、想像したのか顔を赤くしていった。


「うぉ!!えぇ!!いや…その!!そんな…ッッわかんない!!!!そんなん考えてなかったし!!!!!!」


亜門は無言のまま、心の中で(考えてなかったんだ。)と地味にショックを受ける。

小夜はまたアワアワと慌てた。


「えっと…えっと…今はとりあえずわかりません!!」

「…わかった。」


亜門も気恥ずかしいのを小夜に悟られないように前を向いて歩いた。

左後ろにいる小夜も着いてくる。

そこから小さめな小夜の声が聞こえてきた。


「亜門も…」

「あ?」

「亜門もキスとか色々……その……したいと思いますか?」


亜門は歩みを止めて固まって、小夜がその背中にぶつかった。

小夜のすぐあれこれ疑問を口にする癖はやめてほしいと思った。

返答に困る。

眉間に皺寄せて、目を細めて、小夜の方を一瞥いちべつした。


「…………………………か…考えとく。」


それだけ言って亜門は少し早足で再び歩き出した。

小夜が小走りで追いかけてくるのがわかった。

追い付いて、亜門のブレザーの裾に掴まった。


「は……何?」

「私も色々と考えてなかったけど…」

「…」

「今週の土日に沢田くんも一緒って聞いて、ちょっとガッカリはしたかも…。」

「は?」

「……デートはしたいかもです!!」


顔を赤くしてそう言ってくる小夜を見て、亜門は脈がまた早くなる。

その高ぶる気持ちを何かに蹴っ飛ばして紛らわしたいが、小夜がいるので深呼吸をして落ち着かせる。

そして亜門はブレザーに掴まっている小夜の手を取った。


(まぁこんぐらいの手出しは許されるだろう…)


ギュッと離れないように握った。


「…このあと、どっか行くか。デートにでも?」

「……うん。」


小夜も握り返した。

不器用なカップルはぎこちない手のまま歩き出した。

そんな亜門と小夜を後ろから、とある一人が見ていたことに気付かないまま…

二人は歩いていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる

グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。 彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。 だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。 容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。 「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」 そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。 これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、 高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...