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第2部
TAKE29 赤鬼 前編
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◇◇◇◇
小夜は今なら聞けると思った。
自分の知らない亜門という存在は二人の距離を大きくするようで怖かった。
少なくとも自分の記憶が戻るまで、小夜に自信がつくまではいくら亜門を知っていっても、まともに自分の器を支えられないと思った。
でも亜門も同じ気持ちで、手を繋ぎ、傍にいてくれるとわかったから。
俯き『好きだ。』と言ってくれた時の握る手の熱さ。
不機嫌そうに目を細めて赤くする顔。
今はどんな小さなことでも亜門を知っていきたいと思えた。
だから小夜は向かいに座っている亜門に何気なくを装い聞いてみた。
「亜門の子供の頃ってどんなだった?」
亜門は一瞬、瞼を揺らしたがすぐに小夜に合わせてくれた。
話す決意が亜門にもあったらしい。
「小学校?中学校?それで天地の差があるけど…どっち?」
「じゃあまず小学校の方で。」
土曜日。
ファミレスの一角で亜門は烏龍茶を一口飲んだ。
「小学校なぁ…別に普通のガキだったけどな…。」
「習い事とかは?」
「あぁ…やってた。合気道。」
「合気道ッッ!?」
「…なんつーか俺ん家、実はちょっと金持ちっていうか父親が有名人なんだよ。」
実はそのことは少し慶介から聞いたことがあるが、小夜は黙って亜門に耳を傾けた。
「だから弟と一緒に有名私立の学校に行ってた。そんで護身術として始めたけど、それとは関係なく結構好きだったな。」
小夜はオレンジジュースを両手で抱えながら、聞いていた。
「それで格闘技を覚えて、のちにデーモンに…。」
「合気道にそんな殺傷能力ねぇよ。始めの頃にも言ったけど、不良なんてもんは流れでなんとなくだよ。」
「そんなもん?」
「しいて言うなら、斗真といたからかな…。」
「斗真……くん?」
今日はそんな斗真の話を幸人から聞くことが出来ると亜門から言われ、ここで待ち合わせをしている。
記憶の片鱗から小夜と斗真に関わりがあるとわかった。
だから話を聞いて何か思い出すかもしれないと亜門が提案したのだ。
(そうだ…亜門のことだけじゃなくて、私自身のこともちゃんと広げていかなくちゃ…)
来週には亜門と一緒に中学時代の小夜を知っている慶介の話を聞こうと思った。
亜門はグラスの中で氷を転がしながら、話を続けた。
「あいつとは小学校からの付き合いになる。」
「斗真くんも同じ小学校だったの?」
「あいつは違う。公立の学校だったけど、たまたま知り合ってからよく一緒にいることが多かったな…。」
小夜が「ふ~ん。」と相槌を打っている間に、幸人がお店に入ってくるのが見えた。
「遅くなって悪りぃ。つーかお前らが早いんか?」
そう言って幸人は小夜の横に座ったあと、軽い注文をした。
一体、どこから話が始まるのかわからなくてドキドキした。
そんな小夜を幸人は流し目したあと、亜門に聞いた。
「ところでなんで革城も一緒に聞くんだ?」
「大丈夫だ。小夜も斗真のことは少し知ってる。問題ない。」
「……まぁいいけど、別に。」
幸人はゆっくりと後ろの背もたれに体を掛けて腕を組んだ。
「そんで?何が聞きたいわけ?」
亜門は真面目な顔をして、幸人の顔をジッと見た。
「沢田が知ってる限りの斗真……ついでにお前が俺に絡んでくる目的とやらも言ってくれたらわかりやすい。」
氷が溶けて、カランと落ちる音が響いた。
「別に構わねぇよ。俺の中でアンタにはもう話しても大丈夫だと判断出来てるからな。」
「判断?」
「アンタは頭は悪くない。直感だけじゃなく、ある程度の洞察と考察も出来るらしい。そういう……いわゆる行動に一呼吸をおけるやつは信用できる」
「……」
「勝手に騒ぐバカや考えもせずすぐ殴るヤンキー君じゃなさそうだってこった。だから代わりに俺の質問にも答えろよ?」
「わかった。」
亜門の返事に幸人は真顔になり、話し始めた。
「最初に見かけたのは中2だったかな。目立つ赤髪の奴が世華をウロウロしててよ。なんか人を探してたらしい。」
亜門は眉をひそめる。
「人を?」
「俺も聞いた話だから詳しくは知んねぇけど、世華の生徒の誰かを見つけるためにって…時折フラッと現れるようになった。」
◇◇◇◇
『また来てる…。あの赤い人。』
『本当だ…先生達も早くなんとかしてくれないかな…』
その日も"赤髪"は校門の前でヤンキー座りをして陣取っていた。
制服は最近悪評ばかり聞く浅葱《あさぎ》中学である。
同級生もビビっている。
先生も役に立たない。
当時の幸人はちょっとした正義感とその頃から習っていたボクシングによる自信
…そして
『おい、ここはアンタがいるような場所じゃない。早くどっか行け。』
公立と私立の学校の違いという優越感から、そう口にした。
その声に赤髪は座ったまま、ゆっくりと幸人を見上げた。
中学生の幸人はそんな不良に少しビビった。
(大丈夫だ…たかが不良に負けやしない。)
幸人は構えていたが、相手は姿に似合わずヘラッと笑った。
『確かにな!!悪い悪い!!道の邪魔するつもりはなかったんだけど。』
そう言って赤髪は立ち上がった。
立つと、わりと大きくて体もがっしりしている。
しかし迫力のないその笑顔に幸人は拍子抜けした。
だから思わず話し掛けてしまった。
『アンタ…一体何の用でたまに来んだよ?』
『んー?とある子の情報収集っていうんかなぁ?様子見?』
『様子見って…誰の…』
『おーっと!!少年!!悪いがこれ以上は言えねぇ!!何と言っても今回のこれは極秘任務なのだ!』
極秘どころか彷徨いているのはとっくに周りにバレバレだというのに、目の前でニコニコ笑っている不良はバカだと幸人はすぐに思った。
そもそもその髪色が目立つのである。
(絶対不良の下っ端だ。弱くてバカで、上のボスみたいな人から言われて、なんかの偵察に来たんだ…。でもこんな髪色で制服もそのままで来るから偵察にもなってないけど…ウドの大木とはこのことだ。)
幸人はそう呆れるしかなかった。
『極秘任務がしたいなら、髪色戻せば?』
『んあ?なんで?』
『わからないんなら世話ないけど…俺からのアドバイスだよ。』
『おぉ!!そっかそっかぁ!!ありがとな!!…でも、』
今までのヘラヘラした顔がなくなった。
笑顔のままだが、瞳は真剣なものになった。
『鬼ってぇーのは昔から"赤鬼"って決まってんだろ?』
『…………は?』
『つまりはしばらく髪色を戻すつもりはないってこと!!じゃあな、エンジェル君!!』
『…………エンジェル君?』
それっきり見かけることはなくなっていった。
◇◇◇◇
「それが…斗真くん?」
小夜は幸人にそう聞いた。
「あぁ。でも俺もヤツが“鬼原斗真”と知ったのはしばらく経ってからだけどな。」
亜門はずっと黙って聞いていた。
「それを知ったってのが世華を退学してからだな。」
「退学?」
「つまんねぇことで特進の奴と喧嘩になってな…止めに入った教師も勢いでぶん殴ったんだよ。」
「あちゃー…。」
「立派な有名私立だからな…停学どころか一発レッドだ。『うちの校風じゃない所へ行かれた方が良いんじゃありませんか』ってな。実は世華ではそんな停学も退学も親の力で揉み消せるってのも過去にあったらしいが…俺の親はそこまで腐ってなかったらしい。俺とトコトン話した上で然るべき対処を受けたって感じ…」
幸人の親に対しての小さな信頼が見えて、小夜は優しい気持ちで「へー。」と相槌を打った。
「そんで地元公立の中学に通うようになった。」
「上村くん達とはその時からの友達?」
「まぁな…色々あってなんだかんだ一緒につるむようになって…。中3上がる頃にはもう今の形だったな…」
幸人は一呼吸を置いてから言った。
「鬼原斗真と再会したのはその頃だ。」
小夜は今なら聞けると思った。
自分の知らない亜門という存在は二人の距離を大きくするようで怖かった。
少なくとも自分の記憶が戻るまで、小夜に自信がつくまではいくら亜門を知っていっても、まともに自分の器を支えられないと思った。
でも亜門も同じ気持ちで、手を繋ぎ、傍にいてくれるとわかったから。
俯き『好きだ。』と言ってくれた時の握る手の熱さ。
不機嫌そうに目を細めて赤くする顔。
今はどんな小さなことでも亜門を知っていきたいと思えた。
だから小夜は向かいに座っている亜門に何気なくを装い聞いてみた。
「亜門の子供の頃ってどんなだった?」
亜門は一瞬、瞼を揺らしたがすぐに小夜に合わせてくれた。
話す決意が亜門にもあったらしい。
「小学校?中学校?それで天地の差があるけど…どっち?」
「じゃあまず小学校の方で。」
土曜日。
ファミレスの一角で亜門は烏龍茶を一口飲んだ。
「小学校なぁ…別に普通のガキだったけどな…。」
「習い事とかは?」
「あぁ…やってた。合気道。」
「合気道ッッ!?」
「…なんつーか俺ん家、実はちょっと金持ちっていうか父親が有名人なんだよ。」
実はそのことは少し慶介から聞いたことがあるが、小夜は黙って亜門に耳を傾けた。
「だから弟と一緒に有名私立の学校に行ってた。そんで護身術として始めたけど、それとは関係なく結構好きだったな。」
小夜はオレンジジュースを両手で抱えながら、聞いていた。
「それで格闘技を覚えて、のちにデーモンに…。」
「合気道にそんな殺傷能力ねぇよ。始めの頃にも言ったけど、不良なんてもんは流れでなんとなくだよ。」
「そんなもん?」
「しいて言うなら、斗真といたからかな…。」
「斗真……くん?」
今日はそんな斗真の話を幸人から聞くことが出来ると亜門から言われ、ここで待ち合わせをしている。
記憶の片鱗から小夜と斗真に関わりがあるとわかった。
だから話を聞いて何か思い出すかもしれないと亜門が提案したのだ。
(そうだ…亜門のことだけじゃなくて、私自身のこともちゃんと広げていかなくちゃ…)
来週には亜門と一緒に中学時代の小夜を知っている慶介の話を聞こうと思った。
亜門はグラスの中で氷を転がしながら、話を続けた。
「あいつとは小学校からの付き合いになる。」
「斗真くんも同じ小学校だったの?」
「あいつは違う。公立の学校だったけど、たまたま知り合ってからよく一緒にいることが多かったな…。」
小夜が「ふ~ん。」と相槌を打っている間に、幸人がお店に入ってくるのが見えた。
「遅くなって悪りぃ。つーかお前らが早いんか?」
そう言って幸人は小夜の横に座ったあと、軽い注文をした。
一体、どこから話が始まるのかわからなくてドキドキした。
そんな小夜を幸人は流し目したあと、亜門に聞いた。
「ところでなんで革城も一緒に聞くんだ?」
「大丈夫だ。小夜も斗真のことは少し知ってる。問題ない。」
「……まぁいいけど、別に。」
幸人はゆっくりと後ろの背もたれに体を掛けて腕を組んだ。
「そんで?何が聞きたいわけ?」
亜門は真面目な顔をして、幸人の顔をジッと見た。
「沢田が知ってる限りの斗真……ついでにお前が俺に絡んでくる目的とやらも言ってくれたらわかりやすい。」
氷が溶けて、カランと落ちる音が響いた。
「別に構わねぇよ。俺の中でアンタにはもう話しても大丈夫だと判断出来てるからな。」
「判断?」
「アンタは頭は悪くない。直感だけじゃなく、ある程度の洞察と考察も出来るらしい。そういう……いわゆる行動に一呼吸をおけるやつは信用できる」
「……」
「勝手に騒ぐバカや考えもせずすぐ殴るヤンキー君じゃなさそうだってこった。だから代わりに俺の質問にも答えろよ?」
「わかった。」
亜門の返事に幸人は真顔になり、話し始めた。
「最初に見かけたのは中2だったかな。目立つ赤髪の奴が世華をウロウロしててよ。なんか人を探してたらしい。」
亜門は眉をひそめる。
「人を?」
「俺も聞いた話だから詳しくは知んねぇけど、世華の生徒の誰かを見つけるためにって…時折フラッと現れるようになった。」
◇◇◇◇
『また来てる…。あの赤い人。』
『本当だ…先生達も早くなんとかしてくれないかな…』
その日も"赤髪"は校門の前でヤンキー座りをして陣取っていた。
制服は最近悪評ばかり聞く浅葱《あさぎ》中学である。
同級生もビビっている。
先生も役に立たない。
当時の幸人はちょっとした正義感とその頃から習っていたボクシングによる自信
…そして
『おい、ここはアンタがいるような場所じゃない。早くどっか行け。』
公立と私立の学校の違いという優越感から、そう口にした。
その声に赤髪は座ったまま、ゆっくりと幸人を見上げた。
中学生の幸人はそんな不良に少しビビった。
(大丈夫だ…たかが不良に負けやしない。)
幸人は構えていたが、相手は姿に似合わずヘラッと笑った。
『確かにな!!悪い悪い!!道の邪魔するつもりはなかったんだけど。』
そう言って赤髪は立ち上がった。
立つと、わりと大きくて体もがっしりしている。
しかし迫力のないその笑顔に幸人は拍子抜けした。
だから思わず話し掛けてしまった。
『アンタ…一体何の用でたまに来んだよ?』
『んー?とある子の情報収集っていうんかなぁ?様子見?』
『様子見って…誰の…』
『おーっと!!少年!!悪いがこれ以上は言えねぇ!!何と言っても今回のこれは極秘任務なのだ!』
極秘どころか彷徨いているのはとっくに周りにバレバレだというのに、目の前でニコニコ笑っている不良はバカだと幸人はすぐに思った。
そもそもその髪色が目立つのである。
(絶対不良の下っ端だ。弱くてバカで、上のボスみたいな人から言われて、なんかの偵察に来たんだ…。でもこんな髪色で制服もそのままで来るから偵察にもなってないけど…ウドの大木とはこのことだ。)
幸人はそう呆れるしかなかった。
『極秘任務がしたいなら、髪色戻せば?』
『んあ?なんで?』
『わからないんなら世話ないけど…俺からのアドバイスだよ。』
『おぉ!!そっかそっかぁ!!ありがとな!!…でも、』
今までのヘラヘラした顔がなくなった。
笑顔のままだが、瞳は真剣なものになった。
『鬼ってぇーのは昔から"赤鬼"って決まってんだろ?』
『…………は?』
『つまりはしばらく髪色を戻すつもりはないってこと!!じゃあな、エンジェル君!!』
『…………エンジェル君?』
それっきり見かけることはなくなっていった。
◇◇◇◇
「それが…斗真くん?」
小夜は幸人にそう聞いた。
「あぁ。でも俺もヤツが“鬼原斗真”と知ったのはしばらく経ってからだけどな。」
亜門はずっと黙って聞いていた。
「それを知ったってのが世華を退学してからだな。」
「退学?」
「つまんねぇことで特進の奴と喧嘩になってな…止めに入った教師も勢いでぶん殴ったんだよ。」
「あちゃー…。」
「立派な有名私立だからな…停学どころか一発レッドだ。『うちの校風じゃない所へ行かれた方が良いんじゃありませんか』ってな。実は世華ではそんな停学も退学も親の力で揉み消せるってのも過去にあったらしいが…俺の親はそこまで腐ってなかったらしい。俺とトコトン話した上で然るべき対処を受けたって感じ…」
幸人の親に対しての小さな信頼が見えて、小夜は優しい気持ちで「へー。」と相槌を打った。
「そんで地元公立の中学に通うようになった。」
「上村くん達とはその時からの友達?」
「まぁな…色々あってなんだかんだ一緒につるむようになって…。中3上がる頃にはもう今の形だったな…」
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