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第八章
ドーンエルフの別の弱点
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「あ、そちらへお願い」
ダリオさんがてきぱき指示を出し、簡単な食事がテーブルに並べられる。
「失礼しました」
一瞬で準備が整い、ダリオさんに「給仕は不要」と言われた侍従さんが部屋を退出する。
「まあ……食べましょうか?」
「はい」
さっきは誤って「入らない」と答えたものの、俺はかなりの空腹だった。パンのような物を手に取りギリギリ下品でない速度でかみ砕き飲み込む。
「ん、食べると言えば」
「はい?」
破片をエルフワインで流し込んだ俺は中断された会話を再開させた。
「レブロン王が一般の方と飲食すると何か不味い事でもあるんですか?」
「あー、それですね」
同じくエルフワインを一気に煽り、顔をやや赤らめたダリオさんが答える。
「王宮では王族として礼儀正しく食べていますが、一般の方と同席できると羽目を外してしまいそうで」
王族として礼儀正しく、か。割とそうじゃない場面も観た気がするが黙っておこう。
「羽目を外す、ですか。もしかして酒癖が悪かったり?」
「いえそんな事は! ……そんなことはないれす。わらしたち、おさけはかなりつよひんで」
そう言いつつ二杯、ワイングラスを空にしながらダリオさんが否定する。否定しているが口調はかなり怪しい感じだ。
「あーだいだい察しました。他の保護者さんたちの前でレブロン王がそんな感じになったら大変すね」
「えぇ? なにをさっしたんれす?」
対面に座っていたダリオさんがすっと立ち上がり俺の膝に座った。
「え!? ちょ、ダリオさん!? 疲れてる所に空きっ腹で飲み過ぎでは……」
「べつにぃ。ねえ、なにをさっしらの? それともさすってくれる?」
こっちこそ何をさすれば良いんだ!? と小パニックに襲われる俺に答えるかのように、ダリオさんが胸のボタンを更に開けた。
「え、ダリオさん駄目だめ!」
「ショウキチさん、ダリオのこと『たよりになる』ってほめてくれられしょう? あれ、すっごくうれしかっらんら……。れもね、たまにはダリオもだれかにたよりらいの……ねえ、さっすお~れ~」
だからさすれって何を? それともサッスオーロの事か? セリエAの緑のユニフォームの?
「ダリオさん、ちょっと冷静に……あれ?」
彼女を落ち着かせようと悩む俺の視界の窓の外。城壁の上に大きな黒い影がいた。鳥の様で鳥でないそれが凄いスピードで窓へ近づいてきた時、俺は驚きよりも確信めいたものを感じていた。
「ろうしたの? ショウキチさん?」
「ダリオさん、突風注意です」
俺の言葉が終わるかどうかくらいのタイミングで風が吹き込み窓を大きく開けて書類が舞い飛んだ。
「きゃあ!」
ダリオさんが悲鳴をあげて抱きつく。思わず鼻の下が伸びそうになるが、次に起こる事を予想していた俺はキリっとした顔を維持して窓の外を見つめていた。
やがて風が落ち着くと、「それ」は口を開いた。
「毎度、お取り込み中に申し訳ないな。急ぎの用事なのだが?」
そこにいたのは前足の無いドラゴン、DSDKで伝達の仕事をしているワイバーンのマローン・メイルマンさんだった。
「どうも、お久しぶりです」
「うむ。建物が変わったので少し探したぞ。今日は文書だけだが速達だ」
マローンさんはそう言うと器用に首の鞄から大きな封筒を取り出す。
「えっと」
「はーい! いきますぅー」
こんな状態の彼女に行かせるのは不安だが、ダリオさんを膝に乗せた俺が取りに行ける訳もなく。目配せに気づいたダリオさんは陽気に返事をしつつ千鳥足でマローンさんの元へ行った。
「受け取りのサインが必要なのだが、書けるか?」
「もちろん~。こことここと、ここですねぇ?」
ダリオさんは文書を受け取ると、机に手を置きお尻を突き出す様な姿勢でペンを紙に走らせる。ナイトエルフたちがいたらまた騒ぎそうだな、と思いながら俺は目を逸らし彼女が鼻歌交じりにサインを終えるのを聞く。
「む!? そこは……まあ良いか」
「あい?」
「これはそちらの控えだ。それでは。健闘を祈る」
そう言うとマローンさんは一部をダリオさんから受け取り、再び空へ戻って行った。
「励まされちゃいましたね。ところで何の手紙だったんです?」
「分かりましぇ~ん。文字が泳いじゃって~。ショウキチさん読んで~」
それで大丈夫か!? と心配する俺に控えを渡し、ダリオさんは軽食を載せたテーブルへ向かいワインをグラスに注ぐ。
「泳いでいるのは文字じゃなくてダリオさんの理性でしょ! えっと、どれどれ……」
俺は翻訳の眼鏡をかけて文面をチェックする。差し出し元はなんとドワーフサッカードウ協会だ。さすがドワーフらしい堅い文章だな~と思いながら読み進めて、最後の部分で俺は固まってしまった。
「ええっ!? ダリオさんこれ、もうサインして返したんですよね!?」
「そうれすけど~?」
そこには軽く酔いが入った俺を一気に覚めさせる事が書いてあった。
「と言う事はドワーフとの定期戦、受けちゃってます……。開幕前に。しかもあっちの本拠地で」
「あはは、大変ら~」
大変ですむか!
「嘘やろ……」
なんという事だ……。チームがろくに完成していない時期に、宿敵とアウェイで対戦することが決定してしまった……。
ダリオさんがてきぱき指示を出し、簡単な食事がテーブルに並べられる。
「失礼しました」
一瞬で準備が整い、ダリオさんに「給仕は不要」と言われた侍従さんが部屋を退出する。
「まあ……食べましょうか?」
「はい」
さっきは誤って「入らない」と答えたものの、俺はかなりの空腹だった。パンのような物を手に取りギリギリ下品でない速度でかみ砕き飲み込む。
「ん、食べると言えば」
「はい?」
破片をエルフワインで流し込んだ俺は中断された会話を再開させた。
「レブロン王が一般の方と飲食すると何か不味い事でもあるんですか?」
「あー、それですね」
同じくエルフワインを一気に煽り、顔をやや赤らめたダリオさんが答える。
「王宮では王族として礼儀正しく食べていますが、一般の方と同席できると羽目を外してしまいそうで」
王族として礼儀正しく、か。割とそうじゃない場面も観た気がするが黙っておこう。
「羽目を外す、ですか。もしかして酒癖が悪かったり?」
「いえそんな事は! ……そんなことはないれす。わらしたち、おさけはかなりつよひんで」
そう言いつつ二杯、ワイングラスを空にしながらダリオさんが否定する。否定しているが口調はかなり怪しい感じだ。
「あーだいだい察しました。他の保護者さんたちの前でレブロン王がそんな感じになったら大変すね」
「えぇ? なにをさっしたんれす?」
対面に座っていたダリオさんがすっと立ち上がり俺の膝に座った。
「え!? ちょ、ダリオさん!? 疲れてる所に空きっ腹で飲み過ぎでは……」
「べつにぃ。ねえ、なにをさっしらの? それともさすってくれる?」
こっちこそ何をさすれば良いんだ!? と小パニックに襲われる俺に答えるかのように、ダリオさんが胸のボタンを更に開けた。
「え、ダリオさん駄目だめ!」
「ショウキチさん、ダリオのこと『たよりになる』ってほめてくれられしょう? あれ、すっごくうれしかっらんら……。れもね、たまにはダリオもだれかにたよりらいの……ねえ、さっすお~れ~」
だからさすれって何を? それともサッスオーロの事か? セリエAの緑のユニフォームの?
「ダリオさん、ちょっと冷静に……あれ?」
彼女を落ち着かせようと悩む俺の視界の窓の外。城壁の上に大きな黒い影がいた。鳥の様で鳥でないそれが凄いスピードで窓へ近づいてきた時、俺は驚きよりも確信めいたものを感じていた。
「ろうしたの? ショウキチさん?」
「ダリオさん、突風注意です」
俺の言葉が終わるかどうかくらいのタイミングで風が吹き込み窓を大きく開けて書類が舞い飛んだ。
「きゃあ!」
ダリオさんが悲鳴をあげて抱きつく。思わず鼻の下が伸びそうになるが、次に起こる事を予想していた俺はキリっとした顔を維持して窓の外を見つめていた。
やがて風が落ち着くと、「それ」は口を開いた。
「毎度、お取り込み中に申し訳ないな。急ぎの用事なのだが?」
そこにいたのは前足の無いドラゴン、DSDKで伝達の仕事をしているワイバーンのマローン・メイルマンさんだった。
「どうも、お久しぶりです」
「うむ。建物が変わったので少し探したぞ。今日は文書だけだが速達だ」
マローンさんはそう言うと器用に首の鞄から大きな封筒を取り出す。
「えっと」
「はーい! いきますぅー」
こんな状態の彼女に行かせるのは不安だが、ダリオさんを膝に乗せた俺が取りに行ける訳もなく。目配せに気づいたダリオさんは陽気に返事をしつつ千鳥足でマローンさんの元へ行った。
「受け取りのサインが必要なのだが、書けるか?」
「もちろん~。こことここと、ここですねぇ?」
ダリオさんは文書を受け取ると、机に手を置きお尻を突き出す様な姿勢でペンを紙に走らせる。ナイトエルフたちがいたらまた騒ぎそうだな、と思いながら俺は目を逸らし彼女が鼻歌交じりにサインを終えるのを聞く。
「む!? そこは……まあ良いか」
「あい?」
「これはそちらの控えだ。それでは。健闘を祈る」
そう言うとマローンさんは一部をダリオさんから受け取り、再び空へ戻って行った。
「励まされちゃいましたね。ところで何の手紙だったんです?」
「分かりましぇ~ん。文字が泳いじゃって~。ショウキチさん読んで~」
それで大丈夫か!? と心配する俺に控えを渡し、ダリオさんは軽食を載せたテーブルへ向かいワインをグラスに注ぐ。
「泳いでいるのは文字じゃなくてダリオさんの理性でしょ! えっと、どれどれ……」
俺は翻訳の眼鏡をかけて文面をチェックする。差し出し元はなんとドワーフサッカードウ協会だ。さすがドワーフらしい堅い文章だな~と思いながら読み進めて、最後の部分で俺は固まってしまった。
「ええっ!? ダリオさんこれ、もうサインして返したんですよね!?」
「そうれすけど~?」
そこには軽く酔いが入った俺を一気に覚めさせる事が書いてあった。
「と言う事はドワーフとの定期戦、受けちゃってます……。開幕前に。しかもあっちの本拠地で」
「あはは、大変ら~」
大変ですむか!
「嘘やろ……」
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