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第二十章
結晶カウンター
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「「ゴゴゴゴ……ブ!」」
クレイ選手の助走に併せてジ○ジョの効果音の様なかけ声が響き、再びCKが放たれた。そのボールは比較的速い速度で高い高度を飛んだ後、リストさんを越えてから急に落ちるという軌道を描く!
「第三!」
これは仏教の祈りではない。クレイ選手が選んだ第三の選択――高くて遅いのでもなく低くて速いのでもなく、高く速く飛んで急に落ちる球種――を見て俺が思わず漏らした唸り声だ。
『オーケー!』
しかしそのボールを見てもボナザさんは少しも慌てず、冷静に落下地点へ先回りして両手でパンチングした。
『上がって!』
それを見てシャマーさんが号令をかけブロックが一斉に上がる。CKをゾーンで守ることの利点の一つがこれだ。ボールをクリアした後、比較的容易にラインを上げて多数の相手選手をオフサイドポジションへ置き去りにできる。更に状況が良ければそのまま攻撃へ移る事もできるのだ!
『外に出セ!』
ボールを拾った味方MFが迫り来るエルフの群に恐慌を起こし、パスを出せないでいるのを見たカーリー選手が何か指示を叫んだ。しかしセットプレーで最前線へ上がっていたキャプテンの声は彼女には届かなかった。
「外そと……そう!」
そこからの展開は目まぐるしかった。まずブロック右角を担当してうたクエンさんがそのMFを襲いボールを奪取する、そしてすぐ右からフォローするティアさんへ落とす、ティアさんは受けたボールをストーンの位置から駆け上がるリストさんへパス、今度は無駄にコネずリストさんが前方センターサークル中央のエオンさんへ……。
『エオン、こっちへ!』
『ん~ぷい!』
CKが蹴られた時には左サイドにいたリーシャさんがオフサイドにならないように斜めに走って距離をかけながらエオンさんに声をかける。当のファーストスコアラー――ユーカリの葉を食べる鼻のでかい動物ではない。最初の得点者の事だ――はその声に耳を貸さず左サイドを上がるダリオさんの方を見る……ような顔をして、右サイドへスルーパスを出した!
「「ゴブブ~」」
再び悔しさと賞賛が混ざった様なゴブリン観衆の声が渦巻く中、リーシャさんが独走状態へ入る。エオンさんのノールックパスに唯一残っていたSBは足が止まり、GKも飛び出す事ができなかったからだ。
いやまあセンターサークル付近なんてアローズのGKでも飛び出せないけど。
『リーシャ姉様、いっけー!』
『やったー!』
リーシャさんガチ勢のエルエルとユイノさんがゴールを確信してベンチから飛び出す。まだ決まってないのにそれは悪いフラグだ! というよりもプレイ中に控え選手がピッチへ乱入して注意や警告を受ける事を俺は危惧した。
「ピピー!」
審判さんの笛が鳴った。だがそれは俺が恐れていたモノではなく、GKとの一対一を冷静に決めた、リーシャさんのゴールを認めるものだった。前半30分、0-2。
『ナイススプリントじゃった!』
『なんと美しいパス回しだ!』
『情報通りのCKが来た!』
『エオンさんのノールックパス、エロ過ぎなんですけど~』
『レっレイちゃんみたいだった!』
『ボナザの判断も素晴らしかったわ!』
コーチ陣が輪になりそれぞれの言語で何やら語り合っている。たぶん、それぞれの仕事を讃え合っているのだろう。実際、今のゴールは各コーチが分担する各部分が見事に噛み合わさった物の結実だったからだ。
まずクレイ選手のCKの球種を調べ抜きボナザさんへ伝えたアカサオの分析があり、それに応じたセービング――遠くへ弾く事を選んだのは良い判断だった。フェリダエ族は伝統的に肉球と爪を生かしたキャッチングを重視するが、猫人のGKコーチはエルフ向けにパンチングの練習も独自に研究してきた――を仕込んだニャイアーコーチのトレーニングがあり、ジノリコーチのパターン練習で半自動化されたパス回しがあり、ナリンさんとの個人練習の成果でエオンさんがパスを出し、元から速かったリーシャさんの足はザックコーチの指導で更に速度を上げた。
恐らくダイジェストで取り上げられるのはエオンさんのパスだったりするのだろうが、一つのゴールにはこれだけの努力が関わっている。更にもちろん他の選手やスタッフの頑張りもある。メディアやサポーターからあまり褒められない分、特に俺が彼ら彼女らの貢献を讃え報いなければならないだろう。
「みんな、もっと上げてー!」
そんな事を頭の片隅で考えつつ俺はコーチの輪にも選手の輪にも加わらずにいた。べっ、別に仲間はずれじゃないんだからねっ! アローズサポーターの固まるゴール裏へ向かって声をかけ腕を振っていただけなんだから!
「「ゴールゴールゴール♪ リーシャゴール~♪」」
俺の煽りに応えるように、エルフ達の歌声が流れる。このアウェイ2連戦、不気味に静かなインセクターや圧倒的な声量と騒々しさのゴブリン相手にアローズサポーターは押されていた。しかし今の見事なゴールは、その重石を取り払ったようだ。
「……さてと。真価が問われるのはここからだぞ!」
俺はベンチ前の方へ戻りながら、時計を見上げた。前半30分過ぎで0-2だ。まだ勝負は決まっていない。
クレイ選手の助走に併せてジ○ジョの効果音の様なかけ声が響き、再びCKが放たれた。そのボールは比較的速い速度で高い高度を飛んだ後、リストさんを越えてから急に落ちるという軌道を描く!
「第三!」
これは仏教の祈りではない。クレイ選手が選んだ第三の選択――高くて遅いのでもなく低くて速いのでもなく、高く速く飛んで急に落ちる球種――を見て俺が思わず漏らした唸り声だ。
『オーケー!』
しかしそのボールを見てもボナザさんは少しも慌てず、冷静に落下地点へ先回りして両手でパンチングした。
『上がって!』
それを見てシャマーさんが号令をかけブロックが一斉に上がる。CKをゾーンで守ることの利点の一つがこれだ。ボールをクリアした後、比較的容易にラインを上げて多数の相手選手をオフサイドポジションへ置き去りにできる。更に状況が良ければそのまま攻撃へ移る事もできるのだ!
『外に出セ!』
ボールを拾った味方MFが迫り来るエルフの群に恐慌を起こし、パスを出せないでいるのを見たカーリー選手が何か指示を叫んだ。しかしセットプレーで最前線へ上がっていたキャプテンの声は彼女には届かなかった。
「外そと……そう!」
そこからの展開は目まぐるしかった。まずブロック右角を担当してうたクエンさんがそのMFを襲いボールを奪取する、そしてすぐ右からフォローするティアさんへ落とす、ティアさんは受けたボールをストーンの位置から駆け上がるリストさんへパス、今度は無駄にコネずリストさんが前方センターサークル中央のエオンさんへ……。
『エオン、こっちへ!』
『ん~ぷい!』
CKが蹴られた時には左サイドにいたリーシャさんがオフサイドにならないように斜めに走って距離をかけながらエオンさんに声をかける。当のファーストスコアラー――ユーカリの葉を食べる鼻のでかい動物ではない。最初の得点者の事だ――はその声に耳を貸さず左サイドを上がるダリオさんの方を見る……ような顔をして、右サイドへスルーパスを出した!
「「ゴブブ~」」
再び悔しさと賞賛が混ざった様なゴブリン観衆の声が渦巻く中、リーシャさんが独走状態へ入る。エオンさんのノールックパスに唯一残っていたSBは足が止まり、GKも飛び出す事ができなかったからだ。
いやまあセンターサークル付近なんてアローズのGKでも飛び出せないけど。
『リーシャ姉様、いっけー!』
『やったー!』
リーシャさんガチ勢のエルエルとユイノさんがゴールを確信してベンチから飛び出す。まだ決まってないのにそれは悪いフラグだ! というよりもプレイ中に控え選手がピッチへ乱入して注意や警告を受ける事を俺は危惧した。
「ピピー!」
審判さんの笛が鳴った。だがそれは俺が恐れていたモノではなく、GKとの一対一を冷静に決めた、リーシャさんのゴールを認めるものだった。前半30分、0-2。
『ナイススプリントじゃった!』
『なんと美しいパス回しだ!』
『情報通りのCKが来た!』
『エオンさんのノールックパス、エロ過ぎなんですけど~』
『レっレイちゃんみたいだった!』
『ボナザの判断も素晴らしかったわ!』
コーチ陣が輪になりそれぞれの言語で何やら語り合っている。たぶん、それぞれの仕事を讃え合っているのだろう。実際、今のゴールは各コーチが分担する各部分が見事に噛み合わさった物の結実だったからだ。
まずクレイ選手のCKの球種を調べ抜きボナザさんへ伝えたアカサオの分析があり、それに応じたセービング――遠くへ弾く事を選んだのは良い判断だった。フェリダエ族は伝統的に肉球と爪を生かしたキャッチングを重視するが、猫人のGKコーチはエルフ向けにパンチングの練習も独自に研究してきた――を仕込んだニャイアーコーチのトレーニングがあり、ジノリコーチのパターン練習で半自動化されたパス回しがあり、ナリンさんとの個人練習の成果でエオンさんがパスを出し、元から速かったリーシャさんの足はザックコーチの指導で更に速度を上げた。
恐らくダイジェストで取り上げられるのはエオンさんのパスだったりするのだろうが、一つのゴールにはこれだけの努力が関わっている。更にもちろん他の選手やスタッフの頑張りもある。メディアやサポーターからあまり褒められない分、特に俺が彼ら彼女らの貢献を讃え報いなければならないだろう。
「みんな、もっと上げてー!」
そんな事を頭の片隅で考えつつ俺はコーチの輪にも選手の輪にも加わらずにいた。べっ、別に仲間はずれじゃないんだからねっ! アローズサポーターの固まるゴール裏へ向かって声をかけ腕を振っていただけなんだから!
「「ゴールゴールゴール♪ リーシャゴール~♪」」
俺の煽りに応えるように、エルフ達の歌声が流れる。このアウェイ2連戦、不気味に静かなインセクターや圧倒的な声量と騒々しさのゴブリン相手にアローズサポーターは押されていた。しかし今の見事なゴールは、その重石を取り払ったようだ。
「……さてと。真価が問われるのはここからだぞ!」
俺はベンチ前の方へ戻りながら、時計を見上げた。前半30分過ぎで0-2だ。まだ勝負は決まっていない。
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