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第二十四章
頭を突き合わせて
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ゴルルグ族の監督、マースさんとデュースさんとジョーさんはものの見事に三つの首を見合わせて悩んでいた。
彼或いは彼らの思考はある程度読める。アローズの体調不良、これはブラフではなく真実であることを知っている。ホテルから情報が逐一、報告されているからだ。
である以上、俺が言ったように感染の危険を犯してまで試合をする必要はない。大人しく3-0の勝利を受け入れるべきだ。
一方でゴルルグ族の基本方針として他種族は叩きのめしたい。できるだけボコボコに。それが相手の弱味につけ込んでとならば尚更だ。不戦勝ではゴルルグ族民感情は納得しないだろう。
とは言え感染は怖い。試合を強行して病が蔓延した時、より大きな損をするのはゴルルグ族だ。残留だけを目指すアローズと違いゴルルグ族は上を目指している。目先の感情に囚われるべきではない。
そうそう上を目指すと言えば得失点差も重要なファクターだ。サッカードウもごく一般的なリーグと同じで勝ち点が並んだ際には得失点差がモノを言う。今回のアローズ戦はそのボーナスタイムかもしれない。
しかし気になるのはエルフ代表が自ら自分たちの情報を開示した部分だ。普通そんな悪い情報は隠したがるものだ。自分たちゴルルグ族なら間違いなくそうする。だがエルフは隠さなかった。何か裏があるのかもしれない……。
恐らくだが、だいたいそんな感じの思考が三つの頭の中をぐるぐる回っているようだ。
「あと30分以内に決めて貰えば一番、被害が少ないですかね?」
「なに? そんなにすぐに!?」
俺がベノワさんの隣で外を見ながらそう言うと、ジョーさんが驚いた声を上げた。
「確かに。開催の準備が進み観客が入ってしまうと、また片づけと退場が面倒であろうな」
ベノワさんは俺がいるのと反対の方向に首をやって、同じくスタジアム内の様子を見ながら言った。
「失礼します。もし監督の一任で決めかねるのでしたら、そちらのサッカードウ協会の方と急ぎご相談されてはどうでしょう? こちらは、私とショウキチ監督との間で常に繋がっておりますが……」
ダリオさんが割り込む詫びを入れてからそう伝える。親切心からの助言に聞こえるが、何気にとっとと決めるかそれが無理なら上に聞いてこいとプレッシャーをかけているのである。
相手に決めて貰うのだから考える時間をじっくり与えよう、というのは善人の考えだ。俺も相手が友人であればそうしただろう。だがサッカードウは容赦ない争いだ。善人には少し眠って貰う必要がある。
と言うかそもそも友人相手にこういうムーブは絶対にしちゃいけないからね? 自分で考えるのが面倒だから相手に全部決めさせよう、でも時間を切って急いで考えさせようなんて最悪だから!
「いや、構いません。開催しましょう」
マースさんが首を左右に振って――手の使用権は無い首なのかな? なんか一番大変そうなポジションなのに――言った。
「協会への相談は良いのか?」
案の定デューさんが異論を挟む。
「アイツらに相談すると、またその中で議論になるだろう。そうこうする間により時間が無駄になる」
「そうだそうだ! アイツら、無駄に偉そうに議論しやがる!」
マースさんの返答にジョーさんも便乗する。改めて見ても面白い風景だ。俺も心の中で複数人格を作って相談する、みたいな事をやっても良いかもしれない。
「……そうか。エルフ側もDSDKもそれで宜しいか?」
多数決で負けたか納得したか、デューさんが俺たちに問う。
「はい」
「両者で合意がなされたなら、DSDKも開催に動くまでだ」
俺は真面目な顔で頷き、それを見たベノワさんも首を縦に振りつつ言った。
「ただ先ほど申し上げた様に被害が拡大する可能性もあります。申し訳ありませんが、我々のロッカーやウォーミングアップスペース等は広く、みなさんとの距離も広くとって頂けますか?」
厚かましいにも程があるが、集団衛生を考慮する上では当然の要求を俺は付け足す。
「うむ。それについては手配して、後ほど下の者から連絡させよう」
デューさんが即決で回答する。彼は徹頭徹尾、紳士だ。優しい担当なのかな?
「ありがとうございます。難しい状況ですが良い試合をしましょう。……本来ならここで握手でもしたい所ですが、俺も隠れ感染者かもしれないので」
俺はそう言って深々と頭を下げる。追従するようにナリンさんとダリオさんも同じ動作をした。俺が目下のところ無事なのは地球にいた時の予防接種のお陰かもしれず、エルフと免疫とか体質が異なるからかもしれない。どちらにせよキャリアである可能性はある。
「ではこれで」
「こちらも準備に戻ろう」
頭を上げるとゴルルグ族の監督とドラゴンが別れを告げ、それぞれの方向へ去って行った。それを見送るナリンさんとダリオさんの後ろ姿を見ながらふと考える。
同じエルフと言ってもデイエルフとドーンエルフでかなり体つきが違う。デイエルフはほぼ全員が細身で引き締まっている。ドーンエルフはそれに比べて柔らかい印象で、そもそも個体差が激しい。そういった外観で分かる違いは知っているが、俺はエルフの体組織をどの程度、理解しているのだろうか? もしかしたらちょっとドン引きするような検証をする必要があるかもしれない。
そしてそれを提案するなら今、彼女たちに、だ。
「ナリンさんダリオさん、今回の件で俺の知識不足が発覚しました。エルフの文化的に受け入れ難い提案かもしれませんが、それも含めて相談させて下さい」
「はい?」
「大丈夫です。何でも言って下さい」
俺がそう問うとダリオさんが首を傾げナリンさんがいつものように迷い無く応えた。
「今度、貴女達の身体を隅々まで調べたいのです!」
彼或いは彼らの思考はある程度読める。アローズの体調不良、これはブラフではなく真実であることを知っている。ホテルから情報が逐一、報告されているからだ。
である以上、俺が言ったように感染の危険を犯してまで試合をする必要はない。大人しく3-0の勝利を受け入れるべきだ。
一方でゴルルグ族の基本方針として他種族は叩きのめしたい。できるだけボコボコに。それが相手の弱味につけ込んでとならば尚更だ。不戦勝ではゴルルグ族民感情は納得しないだろう。
とは言え感染は怖い。試合を強行して病が蔓延した時、より大きな損をするのはゴルルグ族だ。残留だけを目指すアローズと違いゴルルグ族は上を目指している。目先の感情に囚われるべきではない。
そうそう上を目指すと言えば得失点差も重要なファクターだ。サッカードウもごく一般的なリーグと同じで勝ち点が並んだ際には得失点差がモノを言う。今回のアローズ戦はそのボーナスタイムかもしれない。
しかし気になるのはエルフ代表が自ら自分たちの情報を開示した部分だ。普通そんな悪い情報は隠したがるものだ。自分たちゴルルグ族なら間違いなくそうする。だがエルフは隠さなかった。何か裏があるのかもしれない……。
恐らくだが、だいたいそんな感じの思考が三つの頭の中をぐるぐる回っているようだ。
「あと30分以内に決めて貰えば一番、被害が少ないですかね?」
「なに? そんなにすぐに!?」
俺がベノワさんの隣で外を見ながらそう言うと、ジョーさんが驚いた声を上げた。
「確かに。開催の準備が進み観客が入ってしまうと、また片づけと退場が面倒であろうな」
ベノワさんは俺がいるのと反対の方向に首をやって、同じくスタジアム内の様子を見ながら言った。
「失礼します。もし監督の一任で決めかねるのでしたら、そちらのサッカードウ協会の方と急ぎご相談されてはどうでしょう? こちらは、私とショウキチ監督との間で常に繋がっておりますが……」
ダリオさんが割り込む詫びを入れてからそう伝える。親切心からの助言に聞こえるが、何気にとっとと決めるかそれが無理なら上に聞いてこいとプレッシャーをかけているのである。
相手に決めて貰うのだから考える時間をじっくり与えよう、というのは善人の考えだ。俺も相手が友人であればそうしただろう。だがサッカードウは容赦ない争いだ。善人には少し眠って貰う必要がある。
と言うかそもそも友人相手にこういうムーブは絶対にしちゃいけないからね? 自分で考えるのが面倒だから相手に全部決めさせよう、でも時間を切って急いで考えさせようなんて最悪だから!
「いや、構いません。開催しましょう」
マースさんが首を左右に振って――手の使用権は無い首なのかな? なんか一番大変そうなポジションなのに――言った。
「協会への相談は良いのか?」
案の定デューさんが異論を挟む。
「アイツらに相談すると、またその中で議論になるだろう。そうこうする間により時間が無駄になる」
「そうだそうだ! アイツら、無駄に偉そうに議論しやがる!」
マースさんの返答にジョーさんも便乗する。改めて見ても面白い風景だ。俺も心の中で複数人格を作って相談する、みたいな事をやっても良いかもしれない。
「……そうか。エルフ側もDSDKもそれで宜しいか?」
多数決で負けたか納得したか、デューさんが俺たちに問う。
「はい」
「両者で合意がなされたなら、DSDKも開催に動くまでだ」
俺は真面目な顔で頷き、それを見たベノワさんも首を縦に振りつつ言った。
「ただ先ほど申し上げた様に被害が拡大する可能性もあります。申し訳ありませんが、我々のロッカーやウォーミングアップスペース等は広く、みなさんとの距離も広くとって頂けますか?」
厚かましいにも程があるが、集団衛生を考慮する上では当然の要求を俺は付け足す。
「うむ。それについては手配して、後ほど下の者から連絡させよう」
デューさんが即決で回答する。彼は徹頭徹尾、紳士だ。優しい担当なのかな?
「ありがとうございます。難しい状況ですが良い試合をしましょう。……本来ならここで握手でもしたい所ですが、俺も隠れ感染者かもしれないので」
俺はそう言って深々と頭を下げる。追従するようにナリンさんとダリオさんも同じ動作をした。俺が目下のところ無事なのは地球にいた時の予防接種のお陰かもしれず、エルフと免疫とか体質が異なるからかもしれない。どちらにせよキャリアである可能性はある。
「ではこれで」
「こちらも準備に戻ろう」
頭を上げるとゴルルグ族の監督とドラゴンが別れを告げ、それぞれの方向へ去って行った。それを見送るナリンさんとダリオさんの後ろ姿を見ながらふと考える。
同じエルフと言ってもデイエルフとドーンエルフでかなり体つきが違う。デイエルフはほぼ全員が細身で引き締まっている。ドーンエルフはそれに比べて柔らかい印象で、そもそも個体差が激しい。そういった外観で分かる違いは知っているが、俺はエルフの体組織をどの程度、理解しているのだろうか? もしかしたらちょっとドン引きするような検証をする必要があるかもしれない。
そしてそれを提案するなら今、彼女たちに、だ。
「ナリンさんダリオさん、今回の件で俺の知識不足が発覚しました。エルフの文化的に受け入れ難い提案かもしれませんが、それも含めて相談させて下さい」
「はい?」
「大丈夫です。何でも言って下さい」
俺がそう問うとダリオさんが首を傾げナリンさんがいつものように迷い無く応えた。
「今度、貴女達の身体を隅々まで調べたいのです!」
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