D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第二十四章

マル・ナーゲルスマン監督

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 古今東西さまざまなゲーム、競技がある中で安定してそこそこの強さを誇る戦法がある。それは
『自分ではなく相手に考えさせる、悩ませる』
という戦術である。
 そもそも判断する、決断するというのは非常にリソース――限られた資源。この場合体力や思考力や精神力だ――を消費する行為だ。しかもリソースが減った状態で行うと精度がかなり下がる。
 精度が下がると間違った判断をする事が多くなるので、失敗してストレスとなる。精度が下がりストレスが溜まると、思考方面だけでなく行動方面も上手くいかなくなる。
 もちろん、世の中にはそれ方面のスタミナと耐性が異常に強いタイプもいれば、自分で決断できる事に至上の喜びを感じるタイプもいる。だがやはり判断を強いられる事そのものはストレスになるので最終的には精度が下がっていく。
 ここまでは概念の話。では実際にどんなことがその戦術なのか? 例えば我々の行っているゾーンプレスがまさにそれだ。
 ゾーンプレスをこちら側の視点で言えば、一人の選手を複数で囲んでボールを奪いに行くということになる。そして相手側の視点で言えば、複数の選手に囲まれボールが奪われそうになるということである。
 この際、相手側には幾つかの選択肢がある。ドリブルで抜く、パスする、身体でガードしてボールを守るなど。そしてそれぞれの選択肢の先で誰を抜くか、誰にパスするかなどを判断しなければいけない。
 それで相手側にとって幸いな事にドリブルが上手く行ってその囲みを突破できたとする。すると――こちらの守備陣形が正しくできているとすればだが――また次の一段が囲んでくる。ここでその選手は再び同じ判断を強いられる事になる。
 それを繰り返せばいつか判断を間違えるか技術的なミスを犯す。こちらはそれを待って奪えば良いのだ。
 ちょっと待てその中でこちら側も何度も『判断』をしているじゃないかって? それはそうだ。ゾーンプレスは非常に頭脳を使う戦術ではある。 だがその判断は非常にシンプルだ。
「このゾーンだと誰と誰がアタックし、他の選手はどのようにポジションを取るか」
というのが前もって決められ身につくまで反復練習されている。実際の試合では簡単な判断を行って行動するだけで、それほどリソースを削らないしストレスにもならない。
 更に不測の事態については、シャマーさん――頭脳労働と創意工夫とアドリブが大好きで、いわゆる『それ方面のスタミナと耐性が異常に強く自分で決断できる事に至上の喜びを感じるタイプ』である――というリベロ最後の砦が保険で待ちかまえている。
 そうやって俺たちは準備の元、『自分ではなく相手に考えさせる、悩ませる』という戦法をとっている訳だ。

 脱線が長くなった。何故そんな事に思いを巡らせていたかというと、今回の件ももう相手に考えさせて決めて貰おうと決心したからだ。
 試合を開催するにしても中止するにしても、どちらにもメリットとデメリットがある。またその後の波及効果についてシミュレート皮算用していけば、可能性は無限大にある。
 そんな事に頭を使っている暇があれば、看護や次の試合の準備に当てたい。だったらそういう事に使う頭は他人のを頼ろう、そいつに悩んで貰おう。ちょうど近くにたくさんの頭を持った種族がいるではないか?
 そう考えた俺は現状を赤裸々に報告の上、会場の主催であるゴルルグ族の監督と審判さんをスタジアムの会議室へ呼び出したのである。
 切っ掛けはもちろん、本日の中盤の構成に悩んだ末にタッキさんに相談した事である。彼女の意外な答えは……この面談が終わってからで良いか。無駄になるかもだし。

「まずは身体を壊した選手達にお大事に、と」
 ベノワさんがその大きな口を開いた。
「ありがとうございます。心遣いに感謝します」
 俺は椅子から立ち上がりドラゴンに頭を下げた。ダリオさんナリンさんもそれに続き、遅れてデュースさんも同様の旨を告げる。
「まあ全員、かけたまえ。で、アローズとしては試合を開催できる人数はいる、と?」
 挨拶と労いの言葉の後は一気に本題だった。ベノワさんはもう報告で知っている筈だが、そう口にすることで口火を切ったのだろう。
「はい。11名は現在のところ全く問題ありません。控えの選手の体調はやや不安ですが、ベンチに座るくらいには回復しそうです」
 これは本当だ。それを聞いたからタッキさん達にすべてを任せてここに来れたのである。
「なら何故、我々を呼んだ!? 勝手にコンディションを崩したのだから、勝手にボロボロに負けたら良いだろう!」
 ジョーさんが俺を指さしながら言う。おお、左手は彼に使用権があるのか。
「今回の体調不良には感染性の疑いがあります。基本的な対策は打ちましたが、現在問題ない選手も隠れ感染者で試合中に発症する可能性がありますし、それが大事なゴルルグ族の選手やスタッフに移る危険もあります」 
 ボロボロに負けるならまだ良いけどポロポロと何かコボす危険があるんだよな、と俺は心の中でだけ呟く。
「なにっ!?」
「こちらとしてはそのリスクを隠して試合を行うことはスポーツマンシップに欠けると思いまして。それで報告し相談したいと思った次第です」
 俺は両手を開いて相手に見せるような仕草をした。異世界における病気や食中毒の感染が俺のいた世界とどれくらい同じでどれくらい違うかは分からない。だがサッカーは濃密に選手が触れ合う競技だ。感染の可能性はゼロではないだろう。
「なるほど。エルフ代表として試合をするのはやぶさかではないが、そのような危険性がある以上、開催するかの判断は主催に委ねたい、と」
 俺の仕草を理解したベノワさんがそう言いながら頷く。
「ええ。我々にしてみればもしこれ以上被害が広がるとしても、限度があります。まあ全スタッフ足しても20名前後でしょう。ですがゴルルグ族さんは……」
 両手の指を適当に折りながら――なんかさっきのタッキさんみたいになってるな――俺はそう言った。
 そしてベノワさんと同時に、ゴルルグ族監督の方を見た。
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