D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第三十五章

両親と良心

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 食堂にはそもそも出入り口が複数ある。俺はアリスさんが入ってきたのとは違う所から中へ入り直し、彼女たち親子と直角に座った。
 テーブルの上の皿は殆ど下げられ、残るはデザートのケーキと香り立つブルマンだけだ。地球にあるコーヒーと非常に似た飲料を見てやや気持ちが萎えかけた――このブルマン、見た目も香りも味もかなりコーヒーなのだが、作り方だけが問題なのだ――俺は、頭を降ってどうにか気を取り直す。
「本日はお時間を頂きまして、ありがとうございます」
 今度はその頭を下げて礼を口にする。普通であればこの後
「昨晩はゆっくりお過ごしになられましたか?」
等と続ける所ではあるが、昨晩の痴態やその後の様子を想像してしまいそうで流石に言えなかった。代わりに
「食事の方は口に合いましたでしょうか? チームとしても特に力を入れている部分なんですが」
と問う。これは掛け値なしの本音だ。クラブハウス建築の時から重視しただけでなく、ラビンさんにブヒキュアと外部のスタッフも投入して充実させている。トレーニング、栄養補給、休養が最重要案件。そこは決して曲げない。
「とっても美味しかったわ! ママより料理が上手いと思う。これに慣れてしまうと、アリスが太らないか心配ね~」
「ちょっとママ!」
「そうだママ。まだアリスがここに居座るとは限らない! 食事と宿泊については礼を言う。しかしそれはそれとして、報道の件はきちんと説明して貰おう!」
「パパぁ~」
 少し好意的な反応のシンディさんと厳しいターカオさんへ、アリスさんが悩ましげな声をかける。もともと子供っぽい所があるデイエルフだったが、両親の隣だと更に幼く感じるな。
「では説明致しますが、まず背景と時系列にそって話させて頂きます。少し前に自分とアリスさんはスタジアムで出会い、それぞれが互いに関心を持っていること、つまり自分には日本語の知識、彼女にはエルフ文学の知識がある事を知りました。それで相互に教え会う勉強会をあるお店で開く事になりまして。その第一回があの夜です。そして映像を撮られたのはその帰り道と言うことになります」
 俺はそこまで言い放つと卓上のピッチャーを手に取り俺の為に置いてあったコップ――ナギサさんかホノカさんの心遣いだ。普段の見た目と裏腹に繊細な部分もあるんだよな――へ水を注いで一口、飲んだ。
「ここまでで何か疑問、或いは詳細を聞きたい部分はありますでしょうか?」
 そしてデイエルフ三名の顔を見渡す。因みにテーブルのあちら辺に親子が座り、こちらに俺が独りなのは
「両親vs俺とアリスさん」
という形式にならないようにする為だ。って実はあともう一つ、理由もあるんだけどね。
「スタジアムで? アリス、あなたサッカードウになんて興味あったかしら?」
「「それは……」」
 俺とアリスさんの声が重なり、俺はさっと言葉を引っ込め彼女に続きを促した。
「えっと、ショーキチせ……監督が、学院の生徒達を試合へ招待してくれたの。アリスはその引率で。で、観戦してる子たちの様子を見に来てくれて」
 アリスさん、親の前では一人称は名前なんだな。チームにも何名かいるが。あと今の説明、嘘ではないが俺が退場処分でベンチに入れなかったとかの背景情報が欠けているな。まあ仕方ないか。
「なるほど、そこまでは分かった。次は君の気持ちを知りたい。君はアリスに対してどれくらい本気なんだ? 娘に、決まった相手がいると知っていてあんな行為に……」
「ごめん、父さん母さん!」
 いよいよターカオさんが核心を突き始めた所で、アリスさんが立ち上がり口を挟んだ。
「どうしたの?」
「父さん母さんってまさか……」
「『付き合っている男性がいる』って話、アレは嘘なの!」
 驚くご両親へ女教師は告白を続ける。
「彼氏がいるって事にしないと生徒に馬鹿にされる気がして! あと、遠くに住んでいる父さんと母さんにアリスは立派にやっている、って思われたくて……。嘘ついてごめんなさい!」
 そう言って彼女は涙をこぼしながら頭を下げた。即座にご両親がアリスさんの頭に手を伸ばし慰めの言葉をかける。
「馬鹿な子ね、変な嘘をついて。でもそんな必要は無かったよ? 彼氏がいようといまいと、貴女は素敵な子なんだから」
「そうだぞ、別に泣かんでよろしい! しかしそうか、彼氏はいなかったのか~」
 シンディさんはまさに慈母の微笑みを浮かべ、ターカオさんは出会ってここまでで最高にだらしない顔になってアリスさんの頭を撫でる。……なんとも感動的なシーンだ。俺には縁のない事ながら、もらい泣きしそうになる。
「そんな訳で彼女はおつき合いの経験もなくて、帰り道が少しデートっぽい空気になったので、遊びが激しいある同僚の話で聞き齧った『デートあるある』を再現しようとして、あの行為に至った訳でして。結果、激写された事は非常に申し訳ないですが……。これは『恋に恋する乙女』が少し背伸びされただけかと」
 俺は実は前もってアリスさんと打ち合わせていた通り、架空の同僚に少し罪を被せる形で話をまとめた。割って入るにはやや早いタイミングだが、これは俺の嫉妬がそうさせたのかもしれない。
「そうなの、アリス?」
「ウンソウダヨー」
「はっはっは! アリスもそんなお年頃って訳か、ん?」
「パパッテバヤダモー」
 両親の質問にアリスさんは何とか頷く。お父さんは余裕だがお母さんはやや疑いを持っているようだ。このエルフ、演技が下手だな……。やっぱ存在しない同僚の話みたいな嘘を含めるのは良くなかったか?
「アリス? ママの目を見て話して欲しいんだけど」
 まだ頭部にあった自分の手を降ろし、今度はアリスさんの手を握ってシンディさんが続ける。
「怒らないから本当の事を教えて?」
「エーホントウダヨ?」
 マズいなボロが出そうだ。俺は仕方なくコップを弾いて音を鳴らし、奥の手発動の合図を送る。
「おーもう始まってんじゃん!」
「ごめん、ちょっと中継みるねー!」
 その合図にブヒキュアの二人が厨房から現れ食堂中央の天井付近、俺の背後にあるモニターを機動させた。
「まもなく、アローズによるセンシャの儀式が開始だにゃあ!」
 そしてフェリダエ族の司会による、センシャ開幕宣言の声が食堂中に響いた……!
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