D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第三十七章

サイドラインの座談会

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「ニャイアーコーチ、ユイノさんの準備を! 交代はティアさんで! アカリさん、キッカーが決まったらお願いします!」
 俺は思わず早口でそう叫ぶ。レイさんが背後からボールを奪ってPKをゲットした時が混乱だとしたら、今回の状況は大混乱だった。
 空中から舞い降りてきたドラゴンやライン際のリザードマンへ両チームの選手が抗議を行う中、ストックトンさんはペナルティスポットを指しつつ、ボナザさんへレッドカードを提示する。両チームのサポーターは盛大なブーイングを送り、一般のお客様は困惑の声。上空のスクリーンはどのシーンのリプレイを流すべきか迷い、頭部を押さえて倒れるティアさんやらトミー選手の最初のシュートやらの巻き戻しを何度も映していた。
『ちょいちょいー。今のリスタートありなの~?』
『ゴールしたじゃろ!? PKは必要ない!』
 シャマーさんとホーリー選手、両代表のキャプテンが説明を求めて主審さんの前に集まる。恐らく今のリスタートが正当なモノだったか? そしてゴールを認めるべきかPKを行うべきか? 聞いているのだろう。
 だがドラゴンさんは明確にプレイオンの意思表示をしていたし、GKにレッドカードを出してPK、というジャッジを先にドワーフに下している。エルフにも同じモノを出したほうが公平に見えるというものだ。そういった説明はするだろうが、裁定は覆らない筈だ。
 何にせよたぶんそんな話し合いがなされている間にそれぞれの医療チームがトミー選手とティア選手の元へ走り、副審さんが抗議しもみ合う選手たちを押し分け、ニャイアーコーチが急ピッチでユイノさんに準備をさせていた。
『すまない、監督。ドワーフ戦でまたこれとは……。ユイノとレイのケアを』
「気にしないで下さい。トライしてくれたお陰でPKストップの可能性が出ました」
 俺はピッチから出てきたボナザさんと握手し言葉を交わす。もちろん、通訳をしてくれるナリンさんは選手交代の手続きでいないので、互いに言葉は分かっていない。しかしそれぞれの気持ちみたいなモノは通じただろう。
 いや、一部だけ分かったな。ユイノさんとレイさんの名前をあげてたっけ?
「ユイノさんは良いとして、レイさんはどこだっけ?」
 俺は何かと話題の中心になりがちなナイトエルフを探す。この手の出来事があった際、騒動の発端となった選手は負傷してなくても痛んだフリをして外へ運ばれたりするものだ。ほら、ファウルとなるスライディングを仕掛けた側なのにより痛がるとか?
「あ、あそこか」 
 案の定、彼女はピッチの脇に座りルーナさんと並んで治療を受けていた。俺は負傷コンビに近づき、見慣れぬスタッフが傍らの救急箱から出した包帯をレイさんに巻き直しているのを目に留める。
「あ、ミガサさん?」
『衝撃で包帯がずれただけで、特に問題は無いようです。あ、えっと……』
 俺に話しかけられた銀髪のエルフは冷静な声で何か喋ったが、相手が俺で今は言葉が通じない事を思い出すとハチャメチャな仕草をし出す。これで役者志望なんだよな……大丈夫か?
「レイちゃんは包帯の巻き直し。私はスライディングで擦りむいた所に薬を塗って貰っただけ」
 見かねてルーナさんが通訳をしてくれる。そうそう、このハーフエルフは意外とこういう所、気が利くんだよな。
「そうでしたか! 二人ともありがとうございます」
 俺はミガサさんを落ち着かせるように肩を叩き頭を下げる。試合前の彼女はイベント部でアナウンスをしていた筈だが、今はピッチで治療行為を行っている。今日は負傷者が多く医療班が大忙しだから呼ばれてきたのだろう。
『はい……どうぞ!』
 どうやら翻訳を待たずに俺の意図は伝わったようだ。銀髪の美女はにっこりと微笑むと、渋面のナイトエルフの横の位置を俺に譲った。
「さて……と。ルーナさん、通訳お願いします」
 俺は素直にミガサさんの空けたスペースに膝立ちになり、まず半分日本人のエルフに声をかける。
「良いけど……。PKは見ないの?」
「うん。心臓に悪いから」
 俺が笑ってそう言うとルーナさんも、そして言葉が分からないなりにミガサつられて笑顔になった。ただこの場に唯一、その雰囲気に共鳴しない存在がいる。
「えっと、レイさん?」
 それがナイトエルフのこの少女だ。彼女は才能で言えば孤高の天才でありながら『仲間外れ』の状態を非常に嫌う。俺は早めに気持ちを切り替え、そちらに向けて話しかける。
「ナイストライでした。君はみんなを救ったよ」
『良いチャレンジだったって。みんなの救世主だとか』
 俺の言葉に首を傾げつつ、ルーナさんが翻訳して伝える。
『はっ? どこがなん!?』
 レイさんは驚いたような怒ったような表情だ。たぶんだが言ってる事は分かる。俺は手を挙げルーナさんを制して続ける。
「最近、またちょっと切り替えが遅くなってる気がしてさ。このまま温い感じだったら『デス90』をやろうと思ってたんだ」
『チームがなまけてるから、アレが無かったらデス90を予定してたって』
『はあ』
 デス90は反則によるFK無し、スローイン無しという休み無しで行う練習形式で、集中力を養えるメニューだ。ただ心身共にとんでもなく疲労するので選手達はあまり歓迎する構えではない。
「でもレイさんの早い反応を見たら、みんなもその大事さに気づいただろう。結果は良くないものだったとしても」
 俺はこの少女が行おうとしたクイックリスタートの事を語った。デス90の目的の一つには素早い切り替えの意識を持たせる、というものがある。レイさんのプレイは……まあ直接それの影響ではないとしても、思想としては近い行為だ。
『それは……物は言い様ってやつで、本当は怒っているんやろ? ショーキチにいさんの髪がかかった試合で、あんな軽率なことを……』
 俺の説明が通訳させるのを聞いたレイさんは、まだ何かぐずっていた。ルーナさんからその中身を聞いて俺は少し考え込む。
 彼女は間違いなく天才で、殆どの時間は関西風のノリが良いねーちゃんである。しかしたまに凄いマイナス思考に陥り、そうなるとナイトエルフが生まれ育った大洞穴よりも暗い闇に包まれる。
「髪か。そんなに気になる、これ?」
 その闇を払うのは簡単な事ではない。ある事を思いついた俺はミガサさんにジェスチャーで断って救急箱から鋏を取り出すと、それで自分の前髪をバッサリと落とした!
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