D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第三十七章

切ったはったの?

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 落とした! と勇ましく述べたものの、選手が闘うこの神聖なるピッチに俺の身から出たゴミを捨てる訳には――いや選手達は普通に唾を吐いたり口を濯いだ水を捨てたりしているが――いかない。俺は切り離した前髪を自分のスーツのポケットへ突っ込む。
『なにしてんのんショーキチにいさん!』
「ショーキチ、気でも狂ったの!?」
 それを見たレイさんとルーナさんが驚きの声をあげ、ミガサさんが慌てながら巾着袋の様なものを差し出す。あ、ポケットじゃなくてこれに入れろって事か。確かにそれが良いな。
「ありがとうございます。で、今のはレイさんの言葉?」
 俺はポケットから髪の断片を取り出し袋へ詰めながら訊ねた。
「ううん、この子はもう少しマイルド。今のは私の本心」
 聞かれたルーナさんは首を振りながら答える。
「そ、そうか……。まあ何にせよこんな髪になったから、どのみち散髪はしないといけないよね」
 今度は前もって袋を前に置き、その中めがけて何束か前髪を切り落とす。
「ルーナさんも前髪切らない?」
「切らない」
『ちょっと!』
 俺がハーフエルフに冷たく拒絶されている所に、レイさんが割って入ってきた。
「俺はレイさんに笑ってサッカーをして欲しいんだよ。俺の髪がどうとか気にせず、自由にさ。君が笑えばボールも笑うよ」
 そのレイさんに俺は笑ってそう言う。そしてルーナさんの通訳を待つが……彼女は頭をポリポリと掻いていた。
「えっと、翻訳お願い」
「いいけど……。ダサいから最後の部分は省いて良い?」
 おっとショックだ。ダサいと言われてしまった。しかし無理強いはできないので、俺は黙って頷く。
「ピッ!」
 短い笛が鳴る。そんな間にピッチではPKの準備がなされ、ゴールマウスにはボナザさんに代わってユイノさんが立っていた。その背後のアローズサポーターはPKキッカーの集中を乱そうと大騒ぎをしている。
 しかしユイノさんの跳躍もサポーターの奮闘も功を奏する事は無かった。止まった状態で精度の高い作業をするのはドワーフの得意とする所だ。PKキッカーのトミー選手はほぼ助走無しで右足を振り抜き、シュートを左サイドネットの内側へ撃ち込んだ。
「ピピーッ!」
 そのゴールを認めると同時に審判さんが長い笛を吹いた。このゴールで前半終了だ。ゲームは2-1でハーフタイムを迎える事となったのだ。
「おおう、終わったか。じゃあ後はロッカーで」
『ショーちゃん、どうしちゃったの!?』
『ひっどい髪型だにゃん!』
 そう言って身を起こした俺の方は、選手達の驚きの反応を迎える事となる。
「はいはい、話すのはロッカーで!」
 今日はハーフタイムショーの為にこのあと魔法無効化フィールドは一端、切られる予定である。しかし選手が出て行くまでは有効なままだ。まだ翻訳アミュレットは効果を発揮しないので、俺は自分も歩きつつジェスチャーで選手達に移動を促す。
「監督さん、そっ、そちら貰います」
 コンコースに入った所でミガサさんが話しかけてきた。その言葉は理解できるようになっていたが、意味が分からず俺は首を傾げる。
「その、袋を……」
「ああ、これ!」
 俺は彼女の視線を追って、切った髪を入れた袋をまだ持っている事に気づく。
「どうもです。あ、鋏も」
「いえ。でも乱暴な切り方でしたね。お怪我はありませんか?」
 銀髪の美女はそう言って俺の頭部に手を伸ばす。俺は目を瞑り、その手が俺の額付近を探るのに身を委ねた。
「ないと思います。ただ怪我と言うか切った時に落ちた細かい毛が背中に入ってチクチク痛いです」
「でしょうね」
 俺の言葉を聞いたミガサさんはくすっと笑って身を離した。
「でも非常に勇敢な行為でした。選手の為に、自分の身に鋏を入れるなんて」
「いや、身というか髪ですよ?」
 そう言って俺はロックミュージシャンの様に身を捩った。口にしてしまった事で、なおさら背中に入った毛が気になるようになってしまったのだ。あ、ロックと言えば!
「それに勇敢と言えばミガサさんですよ。この後、ショーのナレーションですよね?」
「ああっ!」
 俺の言葉を聞いた美貌の治療士は、それこそ美しい彫像のように身を固めた。そう、この後で音楽のショーがあり、彼女もイベント部で関係があるのだ。
「そっ、そうでした……」
「大丈夫ですよ。さあ、行って下さい! あ、それ預かっておきます」
 彼女の背を押しつつ、先ほど渡した袋を受け取る。これは後で別の医療班に託せば良いだろう。
「はい……」
 ふらふらと歩き去るミガサさんを見送った所に、入れ替わるようにナリンさんが来る。
「ショーキチ殿、まあ随分と素敵に」
 ミガサさんにひけをとらない美貌のエルフは、俺の頭部を見て心からの笑顔でそう言った。
「そうですか~。流行になったらどうしよう?」
 俺はそう言いながら改めて自分の前髪に手をやる。右手の方向から斜めに二度、入れられたカットは稲妻の様と言うか作業用に前髪をヘアピンで留めた様と言うか何とも落ち着かない形だ。
「冗談はともかく。この状態じゃ集中できないので、ハーフタイム中にささっとシャワーを浴びて毛を落として着替えもしてきます。間に合うと思いますが、最悪の場合はお任せして良いですか?」
「はい。交代は無しで?」
 ナリンさんは快くそれを了承すると、形だけの質問をしてきた。
「ええ。このままで行けば後半早々にレイさんがやってくれますし」
 俺は既に歩き始めながら言葉を続ける。
「それでもうウチの勝ちです」
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