D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第三十七章

学生と縛りゲー

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 後半7分、レイさんがこの日2点目となる得点をあげてで3-1! スタジアムは、中でもエルフサポーターは当然大盛り上がりとなった。
 と、俺はここまで見てきたかのように語ったが実は得点シーンはスクリーンのリプレイで確認しただけで、選手やサポーター達の喜ぶ様くらいからしか追いついていないのである。
『ただいまの得点は……エルフ代表チーム、背番号14番、レイ選手!』
 そのかわりノゾノゾさんのナレーションにはジャストタイミングとなった。ジャイアントのお姉さんは声と胸を弾ませながら、サポーター達とコール&レスポンスを開始する。
『ゴールを決めたのは?』
『『レイ!』』
『ヨミケの太陽ー!』
『『レイ!』』
『ゴールを決めて最上級に~』
『『可愛いの!』』
 前半終了間際、失点の起点となってしまった選手がそれを取り返すゴールを決めたのだ。そりゃスタジアムDJもサポーターもノリノリになるだろう。なるだろうけど、それにしても変なコルレスしてる気がする。やはり一度、問いつめた方が良いだろう。
「どうしましたショーキチ殿? どこか修正しますか?」
 考え込む俺を見てナリンさんが声をかけてきた。
「いえ、イベント部の粛清はするかもしれませんがシステムの修正は必要ないでしょう」
 俺は重々しく首を横に振った。そこで少し深刻な空気になり過ぎた事に気づいて、笑顔を浮かべて続ける。
「ただ選手交代は考えないといけませんね。エルフにとって気合いの入るドワーフ戦に出れなかったとなると、士気に関わる」
「はい……それはそうであります……」
 俺のくすぐりにナリンさんは顔を赤らめた。エルフとドワーフの対抗心は他種族から見れば異様である。この美貌のコーチは他の同胞に比べて見識が広く別種族の知り合いも多い。故にその異様さに気づいてはいるが、同時に捨て切れないでもいる。
「ジノリコーチを呼んで下さい。相談しましょう」
 もう少しその顔を見ていたい欲を抑えて、俺はそう言った。ドワーフの幼女もナリンさんと同じくらい、いやそれ以上に複雑な心境――ライバル種族チームのコーチとして、自種族のチームを打ち破ろうとしている――であろうが、それはそれとしてサッカードウの戦術家として全力を尽くしてくれる筈だ。
「了解であります!」
 ナリンさんは俺の視線から逃れるように小走りでジノリコーチを呼びに走った。ちょっとイヤラシイ目つき過ぎたかな……。

 さて。アローズの選手交代には、既に幾つかのセオリーが確立している。一つには前線の入れ替えを積極的に行うこと。我々の行うゾーンプレスにおいて前の選手の運動量や守備への参加は生命線となるモノではあるが、これまで
「攻撃の選手は攻撃だけやっていればよい」
という指導の元で育ってきた選手にはその負担が重いのだ。
 しかも単純に運動量と言っても自分の裁量で走ったり止まったりする攻撃選手としての動きと、相手やボールの位置によって『動かされる』動き方では疲れ方も違う。そんな訳で前線の運動量を維持する為に、スタミナが尽きてきた選手を外すのは絶対であった。
 そしてもう一つ。これはホーム限定かつ隠れたセオリーではあるが、
「レイさんとポリンさんはなるべく出し続ける」
というのがある。
 このコンビは学生であるので極力アウェイには連れていかないし、未成年で身体も出来ていないのでボディコンタクトの激しいチーム相手に使い辛い。将来性はあるし技術は成年と比べても遜色ないんだけどね。
 それを逆に言えば使える時はとことん使いたい、という意味でもある。使える時が限られているなら、そのチャンスは徹底的に利用しよう、と。 関西人らしいケチさ? いやこれこそがニッポンが誇るモッタイナイの精神である!
 と息巻いてみたものの。この二つの条件を満たす交代というのは難しい。前線の選手を変えると言いつつもレイさんとポリンさん――両者は基本的に攻撃の選手だ――は残さなければならないのだ。そうなると選べる手段は自ずと狭まってくる。
 そんな無理難題に対してジノリコーチがどんな解答を捻り出すのか? 楽しみに見させて貰うとしよう……って最終的に決めるの俺だけど!

『マイラ、ダリオ、リストー!』
 副審さんが掲げるボードに背番号は出ているが、ザックコーチは念のために大声で交代で下がる選手の名を呼んだ。ミノタウロスのほえ声を聞いて呼ばれた選手が振り返り、自分が対象である事に気づいてこちらへ駆けてくる。
『ツンカ、良い練習じゃと思ってプレイしてくるのじゃ!』
 一方、交代で出場する方の選手はリーシャさん、パリスさん、ツンカさんというメンバーであった。中でもツンカさんにはジノリコーチが直々に細かい指示を与えている。
 リーシャさんは左サイドに位置して攻撃、パリスさんは右SBに入って守備固め――代わりにポリンさんは再び前目の右サイドに上がる。右足をサイドラインの上に置くのは今まで通りだ――と役割は比較的にシンプルだが、ツンカさんはある時はボランチ、ある時はトップ下とマルチに動く事になっている。
 つまり……ツンカさんインサイドハーフ化のテストを実戦で行おうというのである!
「よりにもよってエルドワクラシコで、ですか。大胆ですね」
「しかし、これを逃すと後の実戦はミノタウロス戦を最後に間が空くでありますし」
 許可を出しつつも呆れる俺の呟きに、ナリンさんも複雑な顔と表情で返す。しかし彼女の言う通りだ。リーグ戦は次節で一度、中休みに入りその後もカップ戦の抽選会などがあって試合間隔が空く。
 やるぞやるぞと言いつつなかなか始めないのであれば、ツンカさんの気持ちも定まらないだろう。
「何か声をかけてやるでありますか?」
 そんな事を考えていた俺にナリンさんが問いかけてきた。行くなら通訳するが? という感じだろう。
「そうですね……」
 しかし既にジノリコーチに色々と詰め込まれている所に、差し込む言葉があるだろうか?
「いや、辞めておきます。彼女の場合、俺の言葉が重くなってしまう可能性がありますし。むしろ気楽に行って貰いましょう」
 考えた俺はそう言って首を振った。さっきのティアさんの言葉、
『シャマーやツンカと違って彼女になりたいとかじゃ……』
というのが脳裏を過ぎったからである。
 あの過激なエルフの言う事を完全に信じる訳ではないが、ツンカさんは見た目の軽さと裏腹に情の深い女性だ。期待の声をかけた方がプレッシャーになるかもしれない。
「そうでありますか! さすがショーキチ殿、選手を良く見ているであります!」
 ナリンさんはそう言って真面目にメモをとった。いや、今の決断は俺よりもティアさんの見識に基づくものなんだけどね?
 ……と、謙遜してみたものの。俺たちはその後、自分の判断が正解だったことをしみじみと実感する事となった。
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