D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
664 / 700
第三十七章

越えないドワーフ

しおりを挟む
「システムはこちらも1441。ですがいわゆるミラーゲームでは無いであります」
 そう言うナリンさんが持つボードには背番号で選手の並びが示されていた。
 GKは交代で入ったユイノさん。DFラインはルーナ、シャマー、ムルトと来て右SBにはポリンさんが降りた形だ。
 中盤はいわゆるダイヤモンド型で左マイラ、右リスト、底がクエン。トップ下にダリオさんで、1TOPがレイさん。
 ……それほど珍しい形ではない。だがこのシステムには細かな気配りと目論見が幾つも隠されていた。
「ポリンが右SBまで下がる事で、ドワーフはあの子を追い難くなったであります。その上、右足を防ぐ事が困難になるよう……」
 ナリンさんはボードの上で、ドワーフDFの駒をクイクイと動かしたが、その駒はある部分で見えない壁にぶつかったかのように止まった。
 俺はそれを見てはっと呟く。
「サイドラインですね!」
「そうであります!」
 ドワーフのDFは前半、レイさんへのパスの最大の供給源であるポリンさんを潰しにかかっていた。その中でもっとも意識されていたのは『ポリンさんの右足の前に立つ』である……というのは俺たちが彼女に告げた通り。
 それを打ち破る策については、俺も考えていた――本当だよ? ただ前半にはそれを伝える時間が無く、ハーフタイムもティアさん相手でほぼ消えただけなのだ――のだが、ジノリコーチはもっとシンプルでかつ、ドワーフの習性を読み切った対策を与えた。
「ドワーフは線を越えないであります!」
 ナリンさんは、彼女もエルフであることを伺わせるような意地悪な笑みを浮かべクククと笑った。

 まずごく基本的なルールの話として、選手は勝手にピッチの外へ出てはいけない事になっている。もちろんスローインやCKの時、プレイが止まっている間に給水する、治療の為に外へ出されるなどは別だ。
 ここで言っているのはプレイ中にゴール裏を通るとか、ボールだけフィールド内へ残しつつ、自分はサイドラインの外を走るといった行為の事だ。
 もっとも例外は多々ある。例えば空中戦で競り合った後、着地した際に勢い余ってゴールラインを越えてしまうとか。サイドをドリブル突破している最中、副審さんに衝突しそうになったので外へ膨らんで避けるとか。そういったケースでラインを踏み越えてしまう事はプレイの一環として認められている。
 ただ性格的な話、そんなケースでもなるべく外へ出てしまわないように頑張って踏ん張るタイプと
「仕方ねーじゃん」
とばかりに大きくはみ出るタイプとがいる。
 ドワーフは……圧倒的に前者だ。彼女たちは交代を急ぐ時でも勝手に外へ出たりしない。審判の指示があるまで待つし、他にもFKやスローインの位置を誤魔化したりもしない。愚直にルールを守る。その分、ルール外の不正は平気でする。例の送風機とか。あっちの方がよほどヤバそうな行為だが、土の種族の中では正当な努力なのだろう。
 話を元に戻そう。そういった性質をジノリコーチはどう利用したか? 同族を良く知る天才コーチはポリンさんをSBに置いて、彼女の右足がサイドライン上に位置するように設定したのである。
 対面したドワーフの選手はおそらくポビッチ監督に厳命された通り、自身の身体を常にポリンさんの右足の前へ置こうとする。しかしエルフ少女の右足はサイドラインの上だ。老将の命令を守ろうとすれば、自分の身体の大半がラインの外へ出てしまう。
 それが絶対的に駄目な事か? と言われると実はそうではない。プレイの流れ上で自然であれば認められるし、審判さんも早々ファウルをとったりする事もない。
 しかしドワーフはドワーフである。身体の一部でもフィールド内にあればセーフだろ? とか注意されるまではやろう! みたいな考え方はしない。生真面目に、自分からはみ出ようとはしないのだ。それがナリンさんの言った
「ドワーフは線を越えないであります!」
と言う言葉の意味だ。
 彼女がそう笑った事から分かるようにエルフはするけどね。俺も今さっきだって一線を越えようとするエルフから逃げてきたばかりだしね。
 って意味が違うわ! ……ともかく、そんなこんなでポリンさんの右足を封じようとしたドワーフの選手はポビッチ監督の指示と自身のモラルの間で板挟みになった。エルフ少女の右足の前には立ちたい、しかし線を越えてはいけない。
 もともとポリンさんの右足封じは無心で遂行するからこそ効力を発揮する策である。加えて言えば愚直に一つの事をやり通す時にドワーフは最大限の能力を発揮する。だがそれが阻害されればどうなるか?
 結果かなりぎこちない動きをする事となり、そのドワーフをあざ笑うかの様にポリンさんは対面のドワーフを抜き去り、余裕をもってレイさんへスルーパスを送った。
 本来であれば1TOPのFWに、今のような均衡した試合で絶好のスルーパスが通る事は滅多にない。DF陣としてケアしなければならない相手がたった一人であるからだ。しかしパスの出し手と受け手のタイミングが完全に合い、両者に技術があれば可能だ。
 ポリンさんとレイさんにはそれら、タイミングを合わせられる相性の良さと技術の両方があった。
 そしてGKと一対一になったナイトエルフのファンタジスタはドワーフの頭上を軽く越すループシュートを放って、いとも簡単にゴールを決めてみせた。
 ゲームの勝敗を決定的にするゴールを。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...