D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第三十九章

若きエースの見せ場、そして

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 今日、アンカーのポジションへ入ったアガサさんはただひたすら確実にパスを繋いでいた。彼女の特性であるパス能力と極端なマイペースはローズ選手やククチ選手のプレスを微塵も恐れず、ここまでパス成功率100%を誇っていたのだ。
 但し効果的なパスもそれほど繰り出してはいなかった。一つには今日の彼女の役割はあくまでもボール回しの潤滑油であり、ラストパスの仕事は偽CFであるダリオさんへ委ねられていたからである。
 そしてもう一つ。アガサさんはサリーをして――かなり久しぶりの復習の時間。サリーとは? サリーダ・ラボルピアーナ、つまりボランチがDFラインへ降りてそこからパスを出すプレイスタイルの事だ――前線との距離があり、危険なエリアへパスを出す機会があまりなかったというのもある。
 だが先程、クエンさんの突撃によりリーシャさんについているSBの意識がやや内側へ向いた。それと同時にそのSBの身体もややCB寄りに移動した。
 アガサさんにはその僅かな差で十分だった。

『パリス、次は避けてー』
『はい!』
 それは今までと殆ど代わりのない光景だった。中盤でパスを受けた偽SBのマイラさんがローズ選手のプレスを受け、逃げ場になったアガサさんへパスを送る。それを受けたデイエルフはダイレクトでパリスさんへ繋ぐ……はずであった。
 しかし何時もと少しだけ違うフォームで蹴られたボールは、速度もコースも近い距離のパリスさんが受けるには強過ぎた。下手をすれば近距離でレイさんのFKを頭部に受けたティアさんの二の舞だ。
 だが今回はアローズの選手全員がそのパスの軌道と意図を分かっていた。アガサさんが蹴ったそのボールは、やや左に曲がる弾道を描きながらパリスさんの横をすり抜けクエンさんも飛び越し、左の最前線で待つリーシャさんの元へ飛んでいく。
『身体を左に……そう!』
 それを見守るナリンさんがエルフ語で何か叫ぶ中、リーシャさんはアガサさんから来たボールを左足でトラップし、ピッタリと自分の股下少し前方に落としながら前を向く。
「前いったナイス!」
 俺もそれを見て叫んだ。リーシャさんはボールを完全にコントロールできる位置に置き、相手SBとゴールと自分より右にいる選手――つまりこの場合、それは『必要な全て』とイコールだ――を見る事ができる体勢になった。
 こうなったら彼女の独壇場である。サイドラインはリーシャさんにとって古巣であり、簡単に縦に突破してクロスを入れる事ができる。或いはFWとしての特訓で身につけた、カットインしてからファーへのシュートでも良い。はたまた偽CFとして降りてきたダリオさんに預け、自分がDFの裏へ走り込むのも面白いだろう。
『エオンには負けてられないからね!』
 リーシャさんの選択は恐らく二つ目だった。縦へ走る体重移動のフェイントを上半身でかけた後、素早く斜め前へドリブルを始めたのだ。
『ぴぴぴぴい!』
 それを見たダリオさんがリーシャさんに呼びかけながら方向転換し左サイドへ走っていく。だがこれは囮だ。彼女にリーシャさんからのパスを受けるつもりはない。あくまでもDFとGKの意識を自分へ集め、リーシャさんのドリブルとシュートのコースを作る為である。
 口走っているのも明確な指示ではない。デコイラン――他の選手へのコースを空ける為に自分が囮になって走る技術だ――の際は、それと分かる符丁的なものを叫ぶようになっている。微かに聞こえたが姫様は
「ぴぴぴい!」
といった意味のない言葉を叫んでいた筈だ。これは囮、鳳、大鳥、グリフォンのスワッグ……という連想から決めたものなのだ。
 実はスワッグがよく出鱈目ばかり喋るから、
「これは意味のない言葉ですよ!」
という意味も込めているが。これはスワッグには内緒ね!
「空いた!」
 俺は思わずガッツポーズする。ダリオさんの叫びに意味はないが、ミノタウロスにはそれが分からない。ドーンエルフをマークしていたCBのホレス選手は裏へ走る彼女がパスを要求しているち思い、パスコースを遮断しようと追走し中央を空けてしまった。
『いける! 撃て!』
『撃つのじゃ!』
 再びコーチ陣がベンチ前で絶叫する。だが今回、ボールを持っているのはFWのリーシャさんだ。彼女は慌てることなく、だが遅すぎるということもなく、冷静に右足を振り抜いた。
『おー!』
 リーシャさんの放ったシュートはゴールを外れるかに見せかけて左にカーブし、落ちながらゴール右隅へ飛んでいく。彼女がずっと練習してきたプレイ、左サイドから中央へカットインしファーへ巻いて入るシュートだ。俺はゴールを確信した。
『も!』
「「バァーーン!」」
 だがシュートはクロスバーを直撃し、鈍い音を奏でた。
「リーシャがアレを外すでありますか!」
「あーっ! あ、雨で水を吸ったボールが重くて回転が……」
 俺の肩を掴んで揺らすナリンさんに俺はそう説明をした。いや、説明をしかけた。ボールの回転が不十分で、カーブしきらなかったのだろうと。
「ツンカさん、頼む!」
 だが俺は途中で言葉を止めて、右IHのツンカさんへ叫んだ。クロスバーで跳ね返ったボールは時を同じくしてゴール前へ飛び込んでいたエオンさんを軽く越え、アローズ右サイドまで転がってきていたのだ。
『アウチ!』
『モオオ!?』
 そのボールへ先に到着したのはツンカさんだった。しかし彼女はボールをトラップした直後に顔を抑え、その場にうずくまった。遅れてきたミノタウロスのMFはやや戸惑ったものの、デイエルフの側のボールを回収し、ドリブルを開始する。
「何があった!? いや兎に角、あたれ!」
 彼女にどんな異変があったか分からないが、試合は中断されていなかった。俺はツンカさんの身を案じつつもDF陣へ叫んだ。
 だがミノタウロスの逆襲はもう発動しつつあった……。
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