高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど

文字の大きさ
9 / 85

第九話

しおりを挟む
リドールの馬車に王子と向かい合って座り、王都の町を走る。王都の中で一際大きい建物の前で馬車が止まると、馬車の窓を開けた王子がその建物に目をやる。

「こちらが懲罰場です。罪を犯した者を裁く場になります。」

「昨日の食事会の時に話題に上がってた場所だな。懲罰の場とは思えない綺麗な建築だな」

僕の説明を聞き建築をじっくり見る。
壁一面に彫刻が彫られ、支柱が等間隔に並ぶ。そして門部分には丸い支柱が埋まっている。

「エステート王国の建築様式はリドール帝国のものとは全然違うから興味深いな。」

「エステートの建築は、独自の進化をとげ今の形になったそうです。リドール帝国はどんな街並みなんですか?」

「そうなのか。帝国は曲線屋根が多いから、街並みは全然違うぞ。」

「違うんですね。リドール帝国がどんな所なのか、この目で見てみたいです。」

「ならば私の側室になり、一緒に帰るか?」

僕の言葉に王子が微笑み、試すように聞かれる。

「王子が私で良ければ。喜んでついていきます」

「ほお。でも、あの嫉妬深い番候補が許さないんじゃないか?」

「フィリアス卿が何と言っても、私の気持ちは変わりません。」

「…」

王子が徐に馬車の窓を閉め、向かい合っている僕の両サイドに手をつき覆い被さる姿勢になり上から見下ろす。

「…王子?」

「何を驚いているんだ?こういった事も当然受け入れる覚悟をして側室になると言ったのだろう?」

僕の首に唇を這わす。生暖かい感触が不快に感じ肌が粟立つ。

「っ!待ってください!」

僕が王子の肩を押し抵抗してもびくともせず首筋を這うのは止まらない。その間にコートのボタンが開かれブラウスの上からウェストラインを撫でられ、全身に鳥肌がたつ。

「王子、まだこんなことしてはいけません。」

僕の言葉に一切耳を貸さず、王子は手を止めない。ブラウスの裾から手を入れられ胸をサラリと撫でられると

「ひっ…」

色気のない悲鳴が喉から出る。そして王子が僕の首筋に吸い付き微かな痛みが走る。

「随分と色気のない声だな。そんなに嫌なら、好きな男の顔でも思い浮かべればいい。」

「やっ」

そう言うと僕のブラウスを力任せに開きボタンが弾け飛ぶ。そして僕の体を倒し席にうつ伏せにさせる。うつ伏せにされ突き出す形になったお尻をズボンの上から撫でられ、嫌悪感がピークに達する。

「随分、足癖が悪いな。」

無意識に後ろ蹴りをするも、その足も抑え込まれる。

このまま抱かれるなんて嫌だ!そう思うと涙が溢れてくる。

そのまま王子はブラウスをたくし上げると、動きがピタリと止まった。そして数秒後

「ふははっ!これは、すごい。」

面白そうに笑い、僕の背中を指でなぞる。

「もし君を手籠にしたなんてことを彼が知ったら、私は殺されるな。」

ボソリと言うと僕の手を引き体を起こす。

よく分からないけどやめたのか?
状況が飲み込めずキョトンとする。

「これは、すごい独占欲だな。」

王子はブラウスで隠れていた噛み跡を見つけると、指で撫で呆れた様に言う。

「おうじ…?」

「あぁ、怖い思いをさせてすまない。これを使ってくれ。」

状況についていけず、恐る恐る声をかけると王子が僕の目尻を手で拭いハンカチを手渡してくる。
僕はおずおずとそれを受け取り、涙を拭うが中々止まらない。

「すまなかった。でも、側室になるというならば、私に抱かれる覚悟が必要だ。
いや、私だけでなくアルファの王族に嫁ぐという事は、子を成すために好きでもない相手に身を委ねなければならない。」

「…はい。」

覚悟はしていたつもりだった。でも、いざそうなると、嫌だと心が拒絶し体も拒否反応を示した。

「君の背中を見て、私はもっと君が欲しくなった。こんなことをしたから、もう嫌われてしまったかもしれないが、2月後にリドール帝国で私の誕生日パーティーが開かれる。その時に改めて、私の側室になるか、回答を教えてくれないか?」

「…はい。」

王子に返す言葉が見つからず歯切れの悪い返事になる。
王城につくまで、王子は優しく僕の頭を撫でていてくれた。


* * *

「お帰りなさいませ」

王城に着き馬車を降りると、アーシュが正門で待ち構えていた。























しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

あなたは僕の運命なのだと、

BL
将来を誓いあっているアルファの煌とオメガの唯。仲睦まじく、二人の未来は強固で揺るぎないと思っていた。 ──あの時までは。 すれ違い(?)オメガバース話。

アルファだけど愛されたい

屑籠
BL
ベータの家系に生まれた突然変異のアルファ、天川 陸。 彼は、疲れていた。何もかもに。 そんな時、社の視察に来ていた上流階級のアルファに見つかったことで、彼の生活は一変する。 だが……。 *甘々とか溺愛とか、偏愛とか書いてみたいなぁと思って見切り発車で書いてます。 *不定期更新です。なるべく、12月までメインで更新していきたいなとは思っていますが、ムーンライトノベルさんにも書きかけを残していますし、イスティアもアドラギも在りますので、毎日は出来ません。 完結まで投稿できました。

婚約破棄?しませんよ、そんなもの

おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。 アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。 けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり…… 「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」 それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。 <嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>

番を持ちたがらないはずのアルファは、何故かいつも距離が近い【オメガバース】

さか【傘路さか】
BL
全10話。距離感のおかしい貴族の次男アルファ×家族を支えるため屋敷で働く魔術師オメガ。 オメガであるロシュは、ジール家の屋敷で魔術師として働いている。母は病気のため入院中、自宅は貸しに出し、住み込みでの仕事である。 屋敷の次男でアルファでもあるリカルドは、普段から誰に対しても物怖じせず、人との距離の近い男だ。 リカルドは特殊な石や宝石の収集を仕事の一つとしており、ある日、そんな彼から仕事で収集した雷管石が魔力の干渉を受けない、と相談を受けた。 自国の神殿へ神が生み出した雷管石に魔力を込めて預ければ、神殿所属の鑑定士が魔力相性の良いアルファを探してくれる。 貴族達の間では大振りの雷管石は番との縁を繋ぐ品として高額で取引されており、折角の石も、魔力を込められないことにより、価値を著しく落としてしまっていた。 ロシュは調査の協力を承諾し、リカルドの私室に出入りするようになる。 ※小説の文章をコピーして無断で使用したり、登場人物名を版権キャラクターに置き換えた二次創作小説への転用は一部分であってもお断りします。 無断使用を発見した場合には、警告をおこなった上で、悪質な場合は法的措置をとる場合があります。 自サイト: https://sakkkkkkkkk.lsv.jp/ 誤字脱字報告フォーム: https://form1ssl.fc2.com/form/?id=fcdb8998a698847f

僕が死んだあと、あなたは悲しんでくれる?

いちみやりょう
BL
死神 × 不憫なオメガ 僕を大切にしてくれる青砥と、ずっと一緒に居られると思ってた。 誰も感じない僕のオメガのフェロモンを青砥だけはいい匂いと言ってくれた。 だけど。 「千景、ごめん。ごめんね」 「青砥……どうしたの?」 青砥は困った顔で笑って、もう一度僕に“ごめん”と謝った。 「俺、和樹と付き合うことにした。だから、ごめん」 「そんな……。もう僕のことは好きじゃないってこと?」 「……ごめん」 「……そっか。分かった。幸せにね」 「ありがとう、千景」 分かったと言うしか僕にはできなかった。 ※主人公は辛い目に遭いますし、病気で死んでしまいますが、最終的に死神に愛されます。

無理です!僕は絶対にこんな屑駄目王子の嫁になりませんからね?

竜鳴躍
BL
見た目と才能を隠していた第二王子と第一王子の婚約者候補のラブコメ?王家ざまあ。番確定なのに未成熟で分かってない主人公(受)とすれ違いの攻。あげく第一王子は変装した弟に恋をするし、たいへんです。 ※前半あらすじ? 「なんでウチは公爵なのぉ!?」ハイリ5歳は絶望した。ちょっと顔が綺麗なだけで傲慢な第一王子。外面が良いだけの悪魔の婚約者候補に選ばれてしまう。ハイリは男の子だけどΩでお嫁に行く。だから女の子に混じって、実家の爵位と年齢から選ばれてしまった。死にそうになったところを助けてしまったり、あまりのアホさにやらかす男を助けてしまい、なんとか自分だとバレないように裏工作するハイリ。見た目と才能をひた隠しにして、どうにかこうにか誰かに第一王子を押し付けようとするのだった。 ☆短編になりました。

オメガなのにムキムキに成長したんだが?

未知 道
BL
オメガという存在は、庇護欲が湧く容姿に成長する。 なのに俺は背が高くてムキムキに育ってしまい、周囲のアルファから『間違っても手を出したくない』と言われたこともある。 お見合いパーティーにも行ったが、あまりに容姿重視なアルファ達に「ざっけんじゃねー!! ヤルことばかりのくそアルファ共がぁああーーー!!」とキレて帰り、幼なじみの和紗に愚痴を聞いてもらう始末。 発情期が近いからと、帰りに寄った病院で判明した事実に、衝撃と怒りが込み上げて――。 ※攻めがけっこうなクズです。でも本人はそれに気が付いていないし、むしろ正当なことだと思っています。 同意なく薬を服用させる描写がありますので、不快になる方はブラウザバックをお願いします。

処理中です...