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第十話
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アーシュが僕を一瞥した後、王子をまっすぐ見遣る。それに対して王子は余裕の笑みで返す。
「エステート王との面会日は決まったか?」
「はい。王子の滞在最終日で調整がつきました。そういえば、本日の外遊はいかがでした?」
「ヴィルム王子が自国の文化を深く理解し、博学だとわかった。やはり側室に迎えるならば、教養はあるにこしたことはないな。」
王子の言葉に、アーシュが不快感を滲ませる。もちろん、あからさまに表情に出した訳ではなく、アーシュに近しい者だけが分かる程度の変化だ。僕を失えば権力を得られないからだろう。
「王子にご満足いただけて良かったですね、殿下。お二人とも外遊でお疲れでしょうから、後はお部屋で休まれたらよろしいかと。」
「確かに、今日はヴィルム王子の体に負担をかけてしまったからな。王子無理をさせて申し訳なかった。ゆっくり休んでくれ。」
「…」
アーシュは同行を拒否したことを当てこする様に僕に言葉を投げてから、王子に向き直り告げる。それに王子は誤解を招く言い方をしたので、アーシュは静かに僕を観察する様に見る。そして何を感じ取ったのか、目が据わり、そのままアーシュが侍女に王子を居室まで案内する様指示を出す。
「ヴィルム王子、君を泣かせたことを滞在期間中に挽回したい。だから、明日も一緒に居て欲しい」
横にいる王子に手を持ち上げられたので、馬車の出来事がフラッシュバックし無意識に体に力が入る。それを察した様に王子が、とろける様な微笑みを浮かべ甘く囁く。あえて誤解を生む様な言い回しをしていることに疑問を感じるが、帝国の次期王太子の要望を、うち程度の小国が断る事などできない。それは王子も分かっているから、伺う口調ではないのだろう。
「…もちろん。ご一緒させていただきます。」
「ありがとう。明日、楽しみにしている。」
持ち上げた僕の手の甲に口付けを落としてから、案内役の侍女に目配せをし僕らの元を去る。アーシュと二人きりになり重い空気が漂う。
「…ご苦労だった。フィリアス卿も各方面への調整で疲れているだろう。今日はもう帰って…うわっ」
その場を切り上げようとしていた僕はアーシュの肩に担がれ素っ頓狂な声をあげてしまう。
「何をするんだ!」
「殿下に確認したいことがあるので、少しお付き合いください」
王子に触れられた時とは違い、胸の高鳴りを感じ最もらしい抵抗ができず為されるがままになる。アーシュの顔は見えないが、声音には苛立ちが伺え、機嫌が相当悪いのは分かった。
* * *
アーシュは僕を私室のベッドに投げ下ろし、僕の上にのし掛かる。体重をかけられ、身動きが取れない。
「この間と違って今日はやけに大人しいですね」
「…抵抗しても無駄なんだろう?」
僕の腕を押さえつけたアーシュに顔を覗き込まれれば、その顔はもう不機嫌さを隠すことなく顕にしている。王子の時よりも手荒にされているのに、不快感を感じない。そんな風に、色恋にのぼせている自分の愚かさを恨めしく思う。
「そうですね。抵抗されたら、酷いことをして泣かせてしまう。…王子に何をされたんですか?」
「お前には関係ない」
「自分の番が泣かされて、無関心でいられる訳がないじゃないですか?」
泣いて赤くなっている僕の目尻に、チュッと音をたてキスをする。アーシュの言葉や行動に勘違いし舞い上がりそうになるのを必死で抑え込む。
「大したことじゃない」
そう発した僕の言葉にアーシュがため息をついた。
「エステート王との面会日は決まったか?」
「はい。王子の滞在最終日で調整がつきました。そういえば、本日の外遊はいかがでした?」
「ヴィルム王子が自国の文化を深く理解し、博学だとわかった。やはり側室に迎えるならば、教養はあるにこしたことはないな。」
王子の言葉に、アーシュが不快感を滲ませる。もちろん、あからさまに表情に出した訳ではなく、アーシュに近しい者だけが分かる程度の変化だ。僕を失えば権力を得られないからだろう。
「王子にご満足いただけて良かったですね、殿下。お二人とも外遊でお疲れでしょうから、後はお部屋で休まれたらよろしいかと。」
「確かに、今日はヴィルム王子の体に負担をかけてしまったからな。王子無理をさせて申し訳なかった。ゆっくり休んでくれ。」
「…」
アーシュは同行を拒否したことを当てこする様に僕に言葉を投げてから、王子に向き直り告げる。それに王子は誤解を招く言い方をしたので、アーシュは静かに僕を観察する様に見る。そして何を感じ取ったのか、目が据わり、そのままアーシュが侍女に王子を居室まで案内する様指示を出す。
「ヴィルム王子、君を泣かせたことを滞在期間中に挽回したい。だから、明日も一緒に居て欲しい」
横にいる王子に手を持ち上げられたので、馬車の出来事がフラッシュバックし無意識に体に力が入る。それを察した様に王子が、とろける様な微笑みを浮かべ甘く囁く。あえて誤解を生む様な言い回しをしていることに疑問を感じるが、帝国の次期王太子の要望を、うち程度の小国が断る事などできない。それは王子も分かっているから、伺う口調ではないのだろう。
「…もちろん。ご一緒させていただきます。」
「ありがとう。明日、楽しみにしている。」
持ち上げた僕の手の甲に口付けを落としてから、案内役の侍女に目配せをし僕らの元を去る。アーシュと二人きりになり重い空気が漂う。
「…ご苦労だった。フィリアス卿も各方面への調整で疲れているだろう。今日はもう帰って…うわっ」
その場を切り上げようとしていた僕はアーシュの肩に担がれ素っ頓狂な声をあげてしまう。
「何をするんだ!」
「殿下に確認したいことがあるので、少しお付き合いください」
王子に触れられた時とは違い、胸の高鳴りを感じ最もらしい抵抗ができず為されるがままになる。アーシュの顔は見えないが、声音には苛立ちが伺え、機嫌が相当悪いのは分かった。
* * *
アーシュは僕を私室のベッドに投げ下ろし、僕の上にのし掛かる。体重をかけられ、身動きが取れない。
「この間と違って今日はやけに大人しいですね」
「…抵抗しても無駄なんだろう?」
僕の腕を押さえつけたアーシュに顔を覗き込まれれば、その顔はもう不機嫌さを隠すことなく顕にしている。王子の時よりも手荒にされているのに、不快感を感じない。そんな風に、色恋にのぼせている自分の愚かさを恨めしく思う。
「そうですね。抵抗されたら、酷いことをして泣かせてしまう。…王子に何をされたんですか?」
「お前には関係ない」
「自分の番が泣かされて、無関心でいられる訳がないじゃないですか?」
泣いて赤くなっている僕の目尻に、チュッと音をたてキスをする。アーシュの言葉や行動に勘違いし舞い上がりそうになるのを必死で抑え込む。
「大したことじゃない」
そう発した僕の言葉にアーシュがため息をついた。
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