高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど

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【ヤンデレβ×性悪α】 高慢αは手折られる

第二十九話 side.フェナーラ

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「あれ?フェナーラさん、兄様は?」

パーティー会場に着くなり、俺を見つけたアルヴィがセラフの所在を確認する。

「セラフは体調悪そうだったから、部屋で休ませてる」

「とかいって、フェナが無理をさせたんでしょ?」

横からカリーノ様が横から茶々を入れてくる。レディがそんなこと言っていいのかと内心ツッコミつつも、近からず遠からずの回答に苦笑いするしかなかった

「無理はさせてませんよ。長旅の疲れが出たをでしょう」

「それは珍しいですね。兄様は長旅に慣れているはずですが」

カリーノ様に感化されたアルヴィも疑いの目を向けてくる。

「兄貴の情事を聞きたがるなんて、いい趣味してんな。昨晩は…」

「なっ!違います!話さないでください!」

少し揶揄うだけで、アルヴィは顔を赤くして耳を塞ぐ。こういう、うぶな所は学院時代から変わってないなと思う。カリーノ様を追ってリドールにまで来るくらいだから、学院卒業後も他に目移りすることなく過ごしてきたんだろう。

まだ誰も愛したことのないセラフと、叶わないと知りながら十数年ずっと思い続けているアルヴィ。
似てない兄弟だと言われているが、本当にそうだなと思う。

「真っ赤になって可愛いなぁ。それよりカリーノ様、今日は予定通り決行されるんですよね?」

「ええ、もちろん。これ以上、野放しにして被害者を増やす訳にはいかないもの。憲兵隊も、屋敷近くで待機しているから、舞踏の音楽が終わったら、例の場所に突入する予定よ」

「そうですが、突入のタイミングでカリーノ様は王宮に戻っていただきますから!王子の番あなたの身に何かあったら、大問題になりますから!」

「えぇ?でも、私が居なかったら『憲兵ごときが伯爵位の私を取り締まることはできないだろ?』とか言い逃れされそうじゃない?」

「それは、シャロル殿下の承認印を捺印した令状をお預かりしているので、問題ありません。なのでカリーノ様は、王宮におかえりください」

「えー?」

アルヴィが言い含めるように伝えても、カリーノ様には一向に響かない。リドールに来てから既に何度も繰り広げられている光景を見ていると微笑ましく思うのと同じくらい羨ましくもある。そうやって言い合えるのは、互いに信頼し合っているからだろ?

昨晩、セラフからはっきり、俺の伴侶ものじゃないと言われた時、頭に血が上り嫌がるセラフを無理矢理手込めにした。
いつもなら受け流せだが、昨日はセラフがエイヴィアと握手しているのを見て、焦っていたんだ。セラフがエイヴィアとまた関係を持つかもしれないって。俺以外に抱かれるなって思った。
手込めにしたら、なおさらセラフの心は離れていくのにな。
でも、セラフが俺を嫌ってももう手放してやれない。

「フェナはどう思う?」

「え?…あぁ、カリーノ様は安全な場所に居られた方がよろしいかと。もし、あなたに何かあれば俺がアーシュに殺されかねません」

カリーノ様に話を振られ、意識が引き戻される。今回の仕事の依頼主の名前を出して、カリーノ様には安全第一でいて欲しいことを伝える。

「そっか。フェナがアーシュに殺されたら可哀想だから、突入の同行は断念するわ。新婚さんの幸せの邪魔しちゃ悪いもの。二人は舞踏の音楽が終わって少ししたら例の場所に行くんでしょ?」

カリーノ様の質問に返事をすると、会場内の音楽が変わった。舞踏の時間になったようだ。

* * *
カリーノ様も俺も、ダンスを申し込んできた相手との踊りをこなしつつ、時がくるのを待っていた。セラフが今日この場に居たら、男女問わずダンスの申し込みがあったに違いない。だから、セラフを部屋に閉じ込めておいて良かったと安心してしまう俺はもう狂っているんだと思う。

一曲目が終わり、次の申し込み相手の手を取ろうとした時に、焦った様子で入ってくる女性が目に入った。
その女性は、一心不乱にカリーノ様の元まで走っていき、彼女に泣き縋った。

「か、か、か、カリーノ様…しゅ、主人が…」

何事だと思い近づくと、彼女は震える声で何かを訴えている。間近でみると、痩せ細った体よりも顔に目がいく。頬は打たれたのか赤く腫れ、口の端は切れていた。でも、その顔はどこかで見覚えがある気がするした。

「フェナ、ちょっと一緒に来て」

カリーノ様にそう言われ、俺はパーティー会場を出て行く彼女達の後を追った。

* * *
客間らしき場所に到着すると、扉が閉まるなる女性は、また震える声で話し出した。

「しゅ、主人が…き、綺麗な…男の人を、む、無理矢理」

「夫人。落ち着いて。エイヴィアが男性を無理矢理連れて行ったのは、例の場所?」

カリーノ様が夫人と呼んだことで、女性について思い出した。昨日、パーティーの時に挨拶だけ交わしたエイヴィアの奥方だった。

「そ、そ、そうです。……男性は…商談って、だ、騙されてました。…わ、私、主人を、止めたんですが…き、聞き入れてもらえなくて」

「そうなの。その人が今日のターゲットだったのね。夫人、その男性の名前とか分かる?」

「た、確か…セ、セラフって。ば…バナト商会のか…」

「それは、本当か⁈」

セラフの名前が出て、咄嗟に奥方の肩を掴んだ

「ほ、本当です」

奥方は俺に肩を掴まれ驚いたのか、その頬には涙がつたう。考えるより先に体が動いた。

「フェナ、待ちなさい!」

背後でカリーノ様が俺を呼び止める声が聞こえたが、それに構わず屋敷内を走った。

ーーー
俺とセラフの部屋の中に入った瞬間に、奥方の話が本当なのだとわかった。主室から寝室につながる扉は開け放たれ、その扉の前に置いていたカウチはずらされていた。その状況は、エイヴィアがセラフを部屋から連れ出したことを教える。

そうなれば、次に向かう場所は一つしかない。また屋敷内を走り、例の場所ー屋敷の裏庭にある離れを目指す。事前に手渡された見取り図の記憶をたぐり、裏庭に続く勝手口に手をかけた時、誰かが俺の手を掴んだ。







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