高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど

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【ヤンデレβ×性悪α】 高慢αは手折られる

第三十二話 side.フェナーラ

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「お前の方こそ人の伴侶に手を出して、蹴り一発で済むと思ってんのか?」

エイヴィアを睨み返すと、奴は鼻で笑う。

「伴侶ねぇ。アルファなら誰とでも寝るような奴にそんな価値があるか?それにオメガのフェロモンがなきゃ、感じないような不感症を抱いてて楽しいのか?」

小馬鹿にするように言われ、こめかみに青筋が走る。

セラフに触れていいのは今はもう俺だけなんだよ。

「騙して無理矢理犯すしかできなかった奴が何言ってんだ?そもそも今のお前はセラフに選ばれてすらいないんだよ」

「あっ⁈何言ってんだ?」

「それになセラフは不感症じゃない。ただ単にお前が粗チンで下手くそなだけだから」

「はぁ⁈テメェ、もう一度言ってみやがれ!」

俺の言葉にエイヴィアはキレて、拳を振り上げる。セラフを抱えた俺は避けられないと思ったのだろう。俺はエイヴィアの頭を目掛け、足を垂直に振り下ろした。腕と足ではリーチの差は、歴然で俺の踵がエイヴィアの頭頂に突き刺さる。その一撃で、脳震盪を起こしたのか、エイヴィアは白目を剥いて口から泡を出して倒れた。

「お痛はよくないよー。ここは、みんなで楽しむ場所なんだから」

オメガのフェロモンに狂っていた他の奴らも、エイヴィアとのやりとりで、俺が異分子だということに気づいたようだ。輪姦まわしていた青年を床に打ち捨てると、俺を取り囲んだ。

セラフを抱えた状態で複数人を相手にするのは、さすがに厳しい。どうするかと思案している間に、男達が飛びかかってくる。お貴族様の拳なんて、すぐに避けられるくらいヘボかったが、ずっとこれを続けていたら、こっちの体力が限界を迎えてしまう。その前に何とかしないと、でもどうしたら?堂々巡りに陥ったとき、扉がまた大きな音をたて開かれた。

「全員手を挙げ、そのまま跪きなさい!」

凛とした声が響き、その声に続くように制服姿の男達が押し寄せてきた。

「何言っているんだ?憲兵隊ごときが、我々貴族を取り締まれるはずがないだろ?」

一人の男が口火を切ったアルヴィの胸ぐらを掴み、小馬鹿にしたように言う。
アルヴィはその男を鼻で笑うと

「本来ならそうですね。でも、今回はシャロル殿下から令状が出ています。この場で、憲兵隊の意向に逆らうというのは、シャロル殿下に反旗を翻すことになりますが、それでもよろしいですか?」

「なっ…嘘だろ…」

男はアルヴィから令状を奪い取って、そこに書いてある殿下の名前を確認すると、その場で脱力し項垂れた。

その様子を見た他の男達も観念したのか、次々に跪いていく。
憲兵隊が男達を縛り上げ、オメガの青年に上着をかけ抱き抱える。青年の目は赤く腫れ、体には、押さえつけられた時にできたアザや擦り傷ができていた。目を背けたくなるほど痛々しい姿だった。

「フェナーラさん、ここの始末は僕達に任せて、兄様を連れて行ってください。兄様はオメガのフェロモンに当てられるのは初めてのはずなので」

憲兵隊や俺やアルヴィはベータだから、アルファほどオメガのフェロモンは効かない。一方、セラフはアルファだからフェロモンの影響をもろに受けていて、浅い呼吸をし体は熱っていた。

「アルヴィ、すまなかった」

「何のことですか?無事に解決できたじゃないですか」

アルヴィを突き飛ばし、勝手な行動を取ったことを謝ると、アルヴィはとぼけた振りをする。今回の行動は大目に見てくれるようだ。

「ありがとな」

「兄様のことよろしくお願いします」

アルヴィは気遣わし気な視線をセラフに向ける。
セラフの体は俺の上着で隠されているが、露出している腕や脚には拘束の跡がついていた。

俺は静かに頷きセラフを抱えて、来た道を引き返した。


* * *
屋敷の用意された部屋に戻ってすぐ、シャワー室に直行し、浴室の床にセラフを座らせた。他に怪我してないか体の隅々まで確認しながら、ぬるま湯をかけ体の火照りを冷ましていく。

「いたっ」

足にぬるま湯をかけた時、セラフがビクリと体を揺らす。

「大丈夫か?あぁ、ここやっぱり切れてたな」

「いっ…んっ」

血が付着していた双丘の割れ目の奥を確かめるため撫でると、セラフは小さなうめきと一緒に甘い声を漏らす。血は止まっていたので、内臓は傷ついていないことがわかりホッとした。

「体、辛いな。楽にしてやるから、今だけは触るの許してくれな」

「んっあっ…いいっ…ああっ」

セラフのいきりたった中心を握り、上下にしごくとセラフが嬌声をあげ、すぐに達する。でも、中心は萎えることなくドクドクと脈打っていた。

「はぁ…な、なんで」

セラフは、達したのに熱が引かないことに困惑の声をあげる。

「フェロモンで強制的に発情させられてるんだ。数回イけば収まるはずだから、もう少しだけ頑張ってくれ」

「ふっ…ふぇ、フェナ…ギュッてして。ねぇ…お願い」

なだめるようにセラフの背中をなでている俺に腕を広げセラフが甘えた声を出す。
フェロモンのせいでこうなっていると分かっていても、セラフが俺を求めてくれることが嬉しくてたまらなかった。

「セラフ、愛してる。助けに行くのが遅くなってごめんな」

抱きしめると愛しさが胸に溢れ、想いが言葉となり口から飛び出していた。

「私も…あいしてる。…だからお願い。私を嫌いにならないで」

「え?」

セラフが愛してると言った気がして、思わずセラフの顔を覗き込んだ。
俺の膝の上に座るセラフの目線はちょうど俺と同じ高さになる。セラフの目は発情のためか泣いたせいか潤んでいた。その泣きぬれた目でじっと俺を見て

「フェナーラ…愛してる。…誰よりも…あなたを。だから、他の男に触られた私に失望しないで」

嫌いにならないで。と声音は甘いのに、その言い方は切実な色を含んでいた。

「……嫌いになんて、ならない。いや、なれない。俺はずっとセラフ好きで好きで仕方なかったんだ。セラフ以外を愛したことがないのに、そんなことで嫌いになって手放してやれるほど、俺の愛は優しいもんじゃないんだ。それを全部受け止めてくれるか?」

ずっと欲しくて欲しくて堪らなくて執着し続けていた。愛というには、あまりに身勝手な重くて歪な感情。受け止めてもらえることなどないと諦めていた感情を、余すことなくセラフに向けてもいいのだろうか?

「私を…私だけを愛して。…命が尽きるその日まで…愛し続けて。あなたが、私に愛をたむけてくれるなら…それがどんなものでも、喜んで受け取るから」

だって、私もあなたしか愛することができないんだから。とセラフに伝えられる。

俺はセラフの唇をついばみ、舌をいれ口内を撫でる。

「んっ…ふっあっ」

くぐもった声で喘ぐセラフに煽られ、俺の体も熱を帯び始める。

「セラフ…」

「抱いて…フェナーラ」

俺はセラフを抱き抱え、ベッドに連れて行った。










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