高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど

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番外編

しばしの間、バナトフェナーラの入城を禁ずる

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「殿下、これはどういう事ですか?」

呆れた表情のアーシュが一枚の紙を僕に差し出した。アーシュが敬語で話すのは、仕事が絡んでいる時だ。椅子に腰掛ける僕は執務机の前に立つアーシュを睨みつける。

アーシュの持つ紙には、先日僕が城内の使用人達に向け出した勅命が記されている。

"しばしの間バナトフェナーラの入城を禁止する"

「書いてあるとおりだが?」

「書いてある内容は理解しています。私が聞きたいのは、なぜバナト商会の入城を禁止されたかということです。日用品や城の備品を発注できないと使用人達が困惑しています」

「よく読め。バナト商会の入城は禁止していない。バナトフェナーラを入城できないようにしただけだ」

「バナト商会の関係者で入城を許可されているのは、そもそもフェナーラだけです。なので、この勅命をすぐにでも撤回してください」

まるで勅命は僕のワガママで、しかもそれに周りが振り回されていると言いたげなアーシュの口ぶりに腹が立つ。そもそも、この勅命を出す原因を作ったのはアーシュだと自覚すらしていないのか。

「撤回はしない。バナト商会の関係者に新たに入城許可を下ろす。そうすれば使用人達の業務に影響はでないだろ?」

「殿下、なぜそうも頑なにフェナーラの入城を拒否されるのです?」

僕が代替案を出したにも関わらず、それをアーシュはスルーしフェナーラの入城禁止の解除をせまる。
まぁ、フェナーラが入城できなくなったら、アーシュも困るからだろう。今回の勅命は、アーシュとフェナーラを接触させないようにするためのものだし。

「自覚がないってのは、一番タチが悪いな。なぜこうなったのか、自分の胸に問いかけてみるんだな」

僕はアーシュに言い捨て、これ以上話すことはないと手元の書類に目を落とす。

「ヴィル、もしかして一昨日の商談のこと、まだ怒ってるの?」

僕の眉間に力が入る。
怒ってるだと?
一昨日見た情景がフラッシュバックし、落ち着きかけていた感情が再び呼び起こされる。
僕は椅子から立ち上がり、アーシュの胸ぐらを掴んだ。

「当たり前だろ!どうせ僕は経験も少ない床下手だよ!」

あんな場面見たくなかった。
一昨日、城の客間で談笑する二人の間に並べられていたものを見た時、怒りよりもショックの方が大きかった。それが何かなんて僕にだって分かったんだ。それは夜の行為に使用する道具だって。

「僕じゃ満足できないからから、あんなものを買おうとしてたんだろ…っ!誰と使おうとしてたか知らないけどっ!」

感情が昂り、声は震え、涙で視界がぼやける。こんなことで泣くなんてみっともない。泣いた所で何も解決なんてしないと分かっている。分かっているけど、自分ではもう抑えられなかった。

「こんなに傷つけて、ごめん」

アーシュはこちら側まで回り込むと、僕を抱きしめる。僕の背中を撫でる手つきは優しくて、その仕草からアーシュの愛を感じる。
でも…

「謝るくらいなら…もっとバレないように…して欲しかった…」

僕にバレないように使ってくれていたら。他の相手の影なんて気づかずにいられたのに。でも、知ってしまったから、こんなにも動揺して、傷ついた。

「バレないように…は無理かな。だって、俺が営む相手はヴィルだけだから、使うのももちろんヴィルになるし」

「え?」

アーシュの言葉に驚いて見上げると、アーシュと目が合う。

「ああいう道具を買おうとしたことに怒ってるんだと思ってたけど、もしかして俺が浮気してるとでも思った?」

僕を抱きしめる腕の力を強めたアーシュの目は据わっていた。僕の背中には冷たい汗が流れ、やばい。と第六感が告げる。

「俺がどれだけヴィルを愛しているか教えてあげるね」

綺麗な笑顔を僕に向けると、アーシュは僕を肩に担ぎあげ早足でどこかへ向かう。

「ア、アーシュ待って!ちゃんと話そう。…まだ公務が残ってるし!」

「うん。ゆっくり話し合える場所に行くだけだから、安心して。それに公務も今は急ぎのものないでしょ?」

アーシュは僕の制止を次々とかわしていく。その間も歩を止めることなく進み、そしてとうとう目的地に到着する。そこは、予想通りの場所ー僕たちの寝室だった。

ーーー
「アーシュ、話し合いは?」

ベッドに組み敷かれ、この状況もといアーシュの機嫌を何とかしたくて、言い募ってみる。

「もちろんするよ。でも、先に俺がどれだけヴィルを愛してるか分かってもらわなきゃ」

「あれは僕の勘違いだった!アーシュが愛してるのは、僕だけ!分かってるから、大丈夫。これ以上はもう充分」

据わった目でじっと見つめられ怖いことを囁くアーシュ。愛は充分伝わっていることを訴えると、アーシュはなぜか眉間に皺を寄せ、さらに不機嫌になる。

「うん。全然、分かってないみたいだね。今夜は寝かせてやらないからヴィル覚悟してね」

「や、やだぁ!」

そう言って僕の両手をベッドに押さえつけると、アーシュは僕の首筋に噛みつく勢いでキツく吸い付いた。

ーーー

「んっ…ふっ…やっやぁっ」

服を全て剥ぎ取られ、うつ伏せの姿勢の上にのしかかられる。身動きが取れず、アーシュにされるがままになる。執拗に胸をいじられ、時折痛いくらい強くつままれ引っ張られる。そのせいでジンジンと熱を持ち敏感になった、そこは軽く撫でられただけでも快感が走る。

「気持ちいいね、ヴィル。俺が気持ちよくしてあげたい。抱きたいって思うのはヴィルだけなんだよ」

「うんっ…わかったぁっ…あっやぁっ…いやっ」

「本当にわかった?これから先も俺が抱くのはヴィルだけだから」

「うっうんっ…わ、わかったぁ…アーシュっ…顔みたいっ…やっ」

アーシュは僕の体を反転させるとキツく抱きしめる。

「ヴィル、俺のこと好き?愛してる?」

「好き…アーシュが一番好き」

アーシュは僕の言葉に満足したように微笑むと、優しいキスを僕の唇に落とす

「俺もヴィルを一番愛してる。これから先もヴィルだけを」

そう言うとアーシュは僕の後孔を一気に貫く。アーシュが奥に進むたびに圧迫感を感じるが、それ以上に甘い疼きぐ体の奥から湧き上がる。

「ふあっ…やっあっ…はげしっ…ま、まって…」

「ヴィルが可愛すぎるから、もう我慢できない」

アーシュはそのまま腰を動かして僕の奥を穿つ。僕はアーシュから与えられる甘やかな刺激に飲み込まれ、理性は形なく崩れ去っていった。


結局、アーシュの宣言通りに僕は抱き潰され、翌日はベッドで一日過ごすことになった。

アーシュを怒らせちゃダメ絶対。今回の出来事から、僕はそれを胸に刻み込んだ。
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