84 / 85
【ヤンデレβ×性悪α】 高慢αは手折られる
エピローグ(下)
しおりを挟む
廊下の方が騒がしくて、そちらに目を遣ると視察団が慌てふためいていた。只事ではない雰囲気は子供達にも伝わったようで、運んできた食材を手に持ったまま、動きを止め、不安そうに私を見つめる。
「セラフせんせぇ、外の人たち怒ってるの?」
「先生、俺達なにかした?」
「外の人達は、君達に怒って危害を加えることはないから安心して。何があったのかちょっと様子を見てくる」
貧困層出身の子供達は、理不尽な怒りや暴力に常時晒されている。だから、彼らは大人の顔色を必死で伺っている。機嫌が悪い大人には近寄らず、息を潜めるように生活しているのだ。だからこのピリついた雰囲気は、子供達に不安や恐怖を抱かせる。
子供達をなだめ廊下に出ると、視察団の視線が一気に私に向く。その面子は知らないものだった。
「ヴィルム殿下と、フィリアス卿閣下はお帰りになられたのですか?」
「…分かりません」
案内役のフェナーラとヴィルム殿下達が居ない理由を聞くと視察団は顔を見合わせ、少ししてから一人が口火を切った。
「すみません。状況が見えてこないのですが、皆さんは何故ここに残られてるのですか?」
「それは…ヴィルム殿下が何やら体調を崩され殿下達は中座したのですが、視察は続行するとフィリアス卿閣下から指示がありまして」
視察団の一人は困ったように頬をかきながら言う。その説明でやっと状況が理解できた。フェナーラもヴィルム殿下に付き添っているのだろう。私は視察団を見遣り、出来うる限り優しい声音と笑顔を作る。
「それは皆さん大変でしたね。どうぞごゆっくり視察していってください。ただ、皆さんの緊張が子供達にも伝わってしまいますので、どうか肩の力を抜いてリラックスしていただけたら」
「は、はいっ!」
視察団の面々は顔を赤らめ、おおきな声で返事をした。子供達のお手本になるような、とてもいい返事だった。
* * *
視察が無事終了し私塾から自宅に戻ってすぐ、私はフェナーラに捕まった。ソファに腰掛けるフェナーラの膝の上に抱き抱えられたのだ。
「なんで怒ってるの?」
向き合うように座る私の胸に顔を埋めるフェナーラの髪を漉きながら聞く。今日は、フェナーラの気に障ることは起きてないはずなのに。
視察スケジュールも終盤になった頃に戻ってきたフェナーラは、視察団と私を一瞥すると目に見えて機嫌が悪くなった。もちろん、私以外には分からないくらいの変化だったが。最近は視察に来た貴族が私にボディータッチをしたとか、しょうもない理由で機嫌を損ねるから若干のめんどくささを感じる。でも、愛されていると思うと、その面倒さも愛おしく感じるから私も大概だと思う。
「視察団の連中がセラフに惚れたみたいだったけど、何したんだ?」
「何もしてないよ。それより、殿下はお体大丈夫だったの?病気とかじゃないよね?」
フェナーラは拗ねた声で言うが、気になっていた殿下の体調に触れる
「病気じゃないけど、多分」
「多分?」
歯切れの悪いフェナーラの言葉を待つと、フェナーラが大きなお腹のジェスチャーをする。数秒の後、理解すると素っ頓狂な声が自分から出た
「え?そうなの⁈」
「直接聞いたわけじゃやいけど、多分な」
「フィリアス卿が父親になるんだ。フェナーラは子供を欲しくないの?」
「…セラフが産んでくれるのか?」
フェナーラは暗い目をして、私の問いに質問で返してくる。
「私は産めないでしょ。でもフェナーラが子供を欲しいなら」
「セラフ以外と子作りしてもいいって言いたいのか?セラフ以外を抱く気はないって俺言ったよな?」
フェナーラに言葉を遮られる。フェナーラはさらに苛立った様子で、私に聞く。
以前、私が嫉妬して他の人と婚約すればいいって言った時も怒っていた。また私はフェナーラの地雷を踏んでしまった。
「でも、バナト商会の跡継ぎは必要でしょ?」
「跡継ぎなんて、優秀な従業員を後釜にすることだってできるから、俺が作る必要はないな。それよりセラフは、俺が他の奴を抱いてもいいんだ?」
「それは、跡継ぎを考えて…」
「どんな理由でもセラフに他の奴を抱いていいって言われると腹がたつ。セラフにとって俺は他の奴を抱いても気にならない存在でしかないって言われている気分になる」
「それは違う!フェナーラが私以外の人に触れるなんて嫌だよ!嫌に決まってる。でも、子供を産めない私がそんなワガママ言えないよ」
「ワガママ言えよ。俺はセラフが居てくれればいいんだから。やっぱ、結婚式やろう!セラフにちょっかいかけてくる貴族連中に、セラフは俺のものって見せつけてやりたい」
フェナーラが私の頬を撫でながら、不穏なことを言う。
「もしかして、結婚式をやりたがったのって、それが理由?」
「ああ、そうだよ」
「そんなことしなくても、私はフェナーラしか見てないのは分かるでしょ?」
「それでもセラフに絡む連中が居るだろ?そいつらが気に食わないんだよ。本当はセラフを外に出さないで部屋に閉じ込めたい」
「それなら、私だって結婚式でフェナーラにご令嬢が群がるのは気に食わないけど?」
「え?セラフそれって」
「嫉妬だけど。何か?」
私が言い切るとフェナーラは嬉しそうに笑う。そして愛おしそうに私の頬を撫でる
「セラフが嫉妬。そうかぁ。俺のこと好き?」
「…好き。じゃなきゃ嫉妬なんてしないでしょ?フェナーラは、私のこと好き?」
「好きって言葉じゃ表現しきれないくらい愛してる。もう死ぬまでずっと一緒だから。手放してやらない。もちろん来世でもセラフを俺のものにするから」
「何それ。じゃあ、ずっと一緒だね。今もこれから先も」
「セラフ愛してる」
愛を囁いたフェナーラは私を喰らい尽くすような貪るキスをしたのだった。
「セラフせんせぇ、外の人たち怒ってるの?」
「先生、俺達なにかした?」
「外の人達は、君達に怒って危害を加えることはないから安心して。何があったのかちょっと様子を見てくる」
貧困層出身の子供達は、理不尽な怒りや暴力に常時晒されている。だから、彼らは大人の顔色を必死で伺っている。機嫌が悪い大人には近寄らず、息を潜めるように生活しているのだ。だからこのピリついた雰囲気は、子供達に不安や恐怖を抱かせる。
子供達をなだめ廊下に出ると、視察団の視線が一気に私に向く。その面子は知らないものだった。
「ヴィルム殿下と、フィリアス卿閣下はお帰りになられたのですか?」
「…分かりません」
案内役のフェナーラとヴィルム殿下達が居ない理由を聞くと視察団は顔を見合わせ、少ししてから一人が口火を切った。
「すみません。状況が見えてこないのですが、皆さんは何故ここに残られてるのですか?」
「それは…ヴィルム殿下が何やら体調を崩され殿下達は中座したのですが、視察は続行するとフィリアス卿閣下から指示がありまして」
視察団の一人は困ったように頬をかきながら言う。その説明でやっと状況が理解できた。フェナーラもヴィルム殿下に付き添っているのだろう。私は視察団を見遣り、出来うる限り優しい声音と笑顔を作る。
「それは皆さん大変でしたね。どうぞごゆっくり視察していってください。ただ、皆さんの緊張が子供達にも伝わってしまいますので、どうか肩の力を抜いてリラックスしていただけたら」
「は、はいっ!」
視察団の面々は顔を赤らめ、おおきな声で返事をした。子供達のお手本になるような、とてもいい返事だった。
* * *
視察が無事終了し私塾から自宅に戻ってすぐ、私はフェナーラに捕まった。ソファに腰掛けるフェナーラの膝の上に抱き抱えられたのだ。
「なんで怒ってるの?」
向き合うように座る私の胸に顔を埋めるフェナーラの髪を漉きながら聞く。今日は、フェナーラの気に障ることは起きてないはずなのに。
視察スケジュールも終盤になった頃に戻ってきたフェナーラは、視察団と私を一瞥すると目に見えて機嫌が悪くなった。もちろん、私以外には分からないくらいの変化だったが。最近は視察に来た貴族が私にボディータッチをしたとか、しょうもない理由で機嫌を損ねるから若干のめんどくささを感じる。でも、愛されていると思うと、その面倒さも愛おしく感じるから私も大概だと思う。
「視察団の連中がセラフに惚れたみたいだったけど、何したんだ?」
「何もしてないよ。それより、殿下はお体大丈夫だったの?病気とかじゃないよね?」
フェナーラは拗ねた声で言うが、気になっていた殿下の体調に触れる
「病気じゃないけど、多分」
「多分?」
歯切れの悪いフェナーラの言葉を待つと、フェナーラが大きなお腹のジェスチャーをする。数秒の後、理解すると素っ頓狂な声が自分から出た
「え?そうなの⁈」
「直接聞いたわけじゃやいけど、多分な」
「フィリアス卿が父親になるんだ。フェナーラは子供を欲しくないの?」
「…セラフが産んでくれるのか?」
フェナーラは暗い目をして、私の問いに質問で返してくる。
「私は産めないでしょ。でもフェナーラが子供を欲しいなら」
「セラフ以外と子作りしてもいいって言いたいのか?セラフ以外を抱く気はないって俺言ったよな?」
フェナーラに言葉を遮られる。フェナーラはさらに苛立った様子で、私に聞く。
以前、私が嫉妬して他の人と婚約すればいいって言った時も怒っていた。また私はフェナーラの地雷を踏んでしまった。
「でも、バナト商会の跡継ぎは必要でしょ?」
「跡継ぎなんて、優秀な従業員を後釜にすることだってできるから、俺が作る必要はないな。それよりセラフは、俺が他の奴を抱いてもいいんだ?」
「それは、跡継ぎを考えて…」
「どんな理由でもセラフに他の奴を抱いていいって言われると腹がたつ。セラフにとって俺は他の奴を抱いても気にならない存在でしかないって言われている気分になる」
「それは違う!フェナーラが私以外の人に触れるなんて嫌だよ!嫌に決まってる。でも、子供を産めない私がそんなワガママ言えないよ」
「ワガママ言えよ。俺はセラフが居てくれればいいんだから。やっぱ、結婚式やろう!セラフにちょっかいかけてくる貴族連中に、セラフは俺のものって見せつけてやりたい」
フェナーラが私の頬を撫でながら、不穏なことを言う。
「もしかして、結婚式をやりたがったのって、それが理由?」
「ああ、そうだよ」
「そんなことしなくても、私はフェナーラしか見てないのは分かるでしょ?」
「それでもセラフに絡む連中が居るだろ?そいつらが気に食わないんだよ。本当はセラフを外に出さないで部屋に閉じ込めたい」
「それなら、私だって結婚式でフェナーラにご令嬢が群がるのは気に食わないけど?」
「え?セラフそれって」
「嫉妬だけど。何か?」
私が言い切るとフェナーラは嬉しそうに笑う。そして愛おしそうに私の頬を撫でる
「セラフが嫉妬。そうかぁ。俺のこと好き?」
「…好き。じゃなきゃ嫉妬なんてしないでしょ?フェナーラは、私のこと好き?」
「好きって言葉じゃ表現しきれないくらい愛してる。もう死ぬまでずっと一緒だから。手放してやらない。もちろん来世でもセラフを俺のものにするから」
「何それ。じゃあ、ずっと一緒だね。今もこれから先も」
「セラフ愛してる」
愛を囁いたフェナーラは私を喰らい尽くすような貪るキスをしたのだった。
4
あなたにおすすめの小説
アルファだけど愛されたい
屑籠
BL
ベータの家系に生まれた突然変異のアルファ、天川 陸。
彼は、疲れていた。何もかもに。
そんな時、社の視察に来ていた上流階級のアルファに見つかったことで、彼の生活は一変する。
だが……。
*甘々とか溺愛とか、偏愛とか書いてみたいなぁと思って見切り発車で書いてます。
*不定期更新です。なるべく、12月までメインで更新していきたいなとは思っていますが、ムーンライトノベルさんにも書きかけを残していますし、イスティアもアドラギも在りますので、毎日は出来ません。
完結まで投稿できました。
婚約破棄?しませんよ、そんなもの
おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。
アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。
けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり……
「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」
それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。
<嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>
番を持ちたがらないはずのアルファは、何故かいつも距離が近い【オメガバース】
さか【傘路さか】
BL
全10話。距離感のおかしい貴族の次男アルファ×家族を支えるため屋敷で働く魔術師オメガ。
オメガであるロシュは、ジール家の屋敷で魔術師として働いている。母は病気のため入院中、自宅は貸しに出し、住み込みでの仕事である。
屋敷の次男でアルファでもあるリカルドは、普段から誰に対しても物怖じせず、人との距離の近い男だ。
リカルドは特殊な石や宝石の収集を仕事の一つとしており、ある日、そんな彼から仕事で収集した雷管石が魔力の干渉を受けない、と相談を受けた。
自国の神殿へ神が生み出した雷管石に魔力を込めて預ければ、神殿所属の鑑定士が魔力相性の良いアルファを探してくれる。
貴族達の間では大振りの雷管石は番との縁を繋ぐ品として高額で取引されており、折角の石も、魔力を込められないことにより、価値を著しく落としてしまっていた。
ロシュは調査の協力を承諾し、リカルドの私室に出入りするようになる。
※小説の文章をコピーして無断で使用したり、登場人物名を版権キャラクターに置き換えた二次創作小説への転用は一部分であってもお断りします。
無断使用を発見した場合には、警告をおこなった上で、悪質な場合は法的措置をとる場合があります。
自サイト:
https://sakkkkkkkkk.lsv.jp/
誤字脱字報告フォーム:
https://form1ssl.fc2.com/form/?id=fcdb8998a698847f
僕が死んだあと、あなたは悲しんでくれる?
いちみやりょう
BL
死神 × 不憫なオメガ
僕を大切にしてくれる青砥と、ずっと一緒に居られると思ってた。
誰も感じない僕のオメガのフェロモンを青砥だけはいい匂いと言ってくれた。
だけど。
「千景、ごめん。ごめんね」
「青砥……どうしたの?」
青砥は困った顔で笑って、もう一度僕に“ごめん”と謝った。
「俺、和樹と付き合うことにした。だから、ごめん」
「そんな……。もう僕のことは好きじゃないってこと?」
「……ごめん」
「……そっか。分かった。幸せにね」
「ありがとう、千景」
分かったと言うしか僕にはできなかった。
※主人公は辛い目に遭いますし、病気で死んでしまいますが、最終的に死神に愛されます。
無理です!僕は絶対にこんな屑駄目王子の嫁になりませんからね?
竜鳴躍
BL
見た目と才能を隠していた第二王子と第一王子の婚約者候補のラブコメ?王家ざまあ。番確定なのに未成熟で分かってない主人公(受)とすれ違いの攻。あげく第一王子は変装した弟に恋をするし、たいへんです。
※前半あらすじ?
「なんでウチは公爵なのぉ!?」ハイリ5歳は絶望した。ちょっと顔が綺麗なだけで傲慢な第一王子。外面が良いだけの悪魔の婚約者候補に選ばれてしまう。ハイリは男の子だけどΩでお嫁に行く。だから女の子に混じって、実家の爵位と年齢から選ばれてしまった。死にそうになったところを助けてしまったり、あまりのアホさにやらかす男を助けてしまい、なんとか自分だとバレないように裏工作するハイリ。見た目と才能をひた隠しにして、どうにかこうにか誰かに第一王子を押し付けようとするのだった。
☆短編になりました。
オメガなのにムキムキに成長したんだが?
未知 道
BL
オメガという存在は、庇護欲が湧く容姿に成長する。
なのに俺は背が高くてムキムキに育ってしまい、周囲のアルファから『間違っても手を出したくない』と言われたこともある。
お見合いパーティーにも行ったが、あまりに容姿重視なアルファ達に「ざっけんじゃねー!! ヤルことばかりのくそアルファ共がぁああーーー!!」とキレて帰り、幼なじみの和紗に愚痴を聞いてもらう始末。
発情期が近いからと、帰りに寄った病院で判明した事実に、衝撃と怒りが込み上げて――。
※攻めがけっこうなクズです。でも本人はそれに気が付いていないし、むしろ正当なことだと思っています。
同意なく薬を服用させる描写がありますので、不快になる方はブラウザバックをお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる