【完結】先に求めたのは、

たまこ

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「伯爵、とても素晴らしいディナーだったよ」

 公爵は嬉しそうに目を細めた。

 通常高位貴族のディナーであれば高級食材を使用するよう望まれる。だが今回伯爵が作ったのは、ミゲルのためのメニュー。ポタージュスープは玉ねぎやピーマン、じゃがいもなど複数の野菜を使用しているが食感が不快にならないよう丁寧に濾している。メインのミートローフにも同じように複数の野菜を使っているが、上に掛かっているデミグラスソースは子どもの口に合う甘めの味付けだ。

 ミゲルもそれぞれ半分程度は食べていた。これは彼にしてはかなり食べている方だという。公爵夫妻の笑顔を見て、レティは胸を撫で下ろした。

「デザートは娘が作ったものになります」

 伯爵がそう言うとメイドたちがテーブルに並べ始める。

「おお、これは」

「まぁ!可愛らしい」

 レティが作ったのは人参のスポンジケーキのトライフルだ。小さくカットしたスポンジケーキとクリームや果物を美しく器に盛りつけている。

「見た目だけでなく味も美味しいわ」

「ああ、流石レティ嬢だな」

 公爵夫妻から褒められ、レティは笑みを零した。そしてミゲルの器に目を向けると……。

「もう食べ終わったの?」

「……ああ」

 思わず尋ねたレティへ、ミゲルはむっつりとした表情のまま頷いた。

「レティ」

 食事中に声を掛けた娘へ伯爵は声を掛けた。だが、公爵がそれを制止した。ミゲルはその気難しさから子ども同士の交流は殆ど無い。折角だからレティとも交流して欲しいと考えたからだ。レティは伯爵の呼びかけは耳に入らないようで会話を続けた。

「あのね、これ人参のスポンジケーキだったのよ!」

「……それくらい分かる」

「分かっていて食べたの?すごいわ!」

 薄いオレンジ色のスポンジケーキだ。誰だって予想できるだろう。だが屈託のない笑顔を浮かべるレティへミゲルはたじろいだ。

「私も人参が食べられなかったの。だけどね、お父様がこれを作ってくれてから食べられるようになったの」

 興奮気味のレティにミゲルは困ったように頷いた。

「お父様のデザートはもっともっと美味しいのよ!だからね、お父様の料理を食べたら好きな食べ物がもっと増えるわ」

 娘の褒め言葉に伯爵は少々居心地悪そうに顔を顰めた。ミゲルは戸惑ったまま口を開いた。

「俺は……」

「うん」

「……これでいい」

 目の前の空になった器をちらりと見てミゲルがそう言うと、レティはぱぁっと綻ぶように笑った。


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