【完結】先に求めたのは、

たまこ

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 その夜、帰宅したばかりの両親に呼ばれたレティは少々戸惑った。応接室にわざわざ呼ばれることは初めてだったし、目の前に座る両親は外出着のままだ。それだけ急ぎの用ということだろう。


(もしかして、先日の私の態度が悪かったことでお叱りを受けたのかしら?)

 あの日、食事中のミゲルへ話しかけたことが良くなかったのはレティも自覚している。食事の後、レティは必死で謝ったがミゲルは気にもしていない様子……と言うより何に謝っているか理解していない様子だったし、公爵夫妻もミゲルと楽しく会話してくれて嬉しい限りだと言って御咎めは無かった。

 だからレティも終わった話だと思っていたのだが、両親の表情は少々暗い。

「……お父様、お母様、もしかして公爵様は怒ってらしたの?」

「え?……ああ、違うのよ、レティ。あなたが素晴らしい料理人だと公爵夫妻はとても褒めていたわ」

 母の言葉にレティは胸を撫で下ろした。しかし、それならば両親の暗い顔の理由はどこにあるのだろうか。

「……公爵は、レティに公爵家に来て欲しいと言っている」

 重い口を開いた父の言葉を聞き、レティはパッと目を輝かせた。

「勿論よ!あのね、お父様、私……」

「レティ」

 伯爵は娘の言葉を遮った。厳しくも愛情深い彼が娘の話を最後まで聞かないことはこれが初めてのことだった。

「公爵はレティを住み込みで雇いたいと言っている」

「へ……住み込み?」

 てっきり先日のように出向いて食事を作るだけだと考えていたレティは面食らった。

 この国では結婚前の令嬢が働くことは殆ど無い。通常、学園に通うか、もしくは家庭教師からの教育を受けると職には就かず結婚していく。王族や高位貴族に仕える侍女の職に就く令嬢が僅かばかりいるくらいだ。ましてや十歳の令嬢が働くなんて有り得ない話だ。

「公爵夫妻はお前を気に入ったようだ……お前の料理のことも。それで、公爵家に住み込んで料理をしてほしいと言っている」

 公爵夫妻としては、レティの料理ならミゲルも食べるのではないかと期待しているようだ。公爵家と伯爵家の領地は近隣ではあるが、馬車で数刻は掛かる。通うのは負担が大きいため、住み込みでの依頼だったようだ。レティがまだ十歳ということで、仕事量の調整をし絶対に無理はさせないと頭を下げられたそうだ。十歳の令嬢が働くというと周りから何を言われるか分からないため、名目上は『行儀見習い』ということで公爵家で生活していても問題ない理由まで用意されていた。



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