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しおりを挟むミゲルはちらりとレティを見た。冷たく見える眼差しからは何を考えているのか察することはできない。執事のトニーは「それでは後ほど」と去ってしまい、レティとミゲルは二人きりにされてしまった。
「ミゲル様、本日からよろしくお願いいたします」
「ん」
ミゲルが小さく頷くのが見え、レティは胸を撫で下ろした。歓迎されていない訳ではないらしい。
「あの……新しく厨房を準備していただいたようで、ありがとうございます」
「別に……気にしなくていい」
「こんなに立派な厨房、畏れ多いです」
「……気に入らなかったか?」
不機嫌そうにそう尋ねられ、レティは目を丸くした。
「まさか!このオーブンなんて最新型ですよ!他のどのお屋敷にもありませんでした。うちの厨房にも入れて欲しいって言ったのにお父様が聞いてくれなくって」
「……伯爵が?」
「はい。お父様はあまり新しい器具には興味が無いんです。あ、それにこのフライパン!最近売り出されたばかりで焦げ付きにくい加工がされているんですけど、高価で買えなくって、お小遣い貯めているところだったんですよ」
「……そうか」
目を輝かせて語り出したレティの勢いに少々たじろぎながらミゲルは頷いた。
「さぁ、今日のデザートを準備します。ミゲル様、何が食べたいですか?」
「……お前は今来たばかりだろう。明日からで……」
「そんな!この素敵なキッチンを使えないなんて!」
レティが絶望を滲ませ声を上げた。ミゲルは呆れた表情で息を吐く。
「……変な奴」
「よく言われます」
レティが照れ笑いを浮かべると「……勝手にしろ」とミゲルは小さく呟いた。「はい!」と大きく返事をしたレティは早速人参を取り出す。ミゲルはレティが手に取ったそれを苦い顔で見ながら、厨房の端に置かれた丸椅子に腰掛けた。
「ミゲル様?」
「ふん」
ただの暇つぶしだ、と口を尖らせたミゲルを見てレティは綻ぶように笑った。
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